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負けたとしても

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第五章

「けれどそれがな」
「三連覇したからな」
「日本一にはなれなくても」
「それでもな」
「やってくれたよな」
「そうだよな」
「そうしたことを思いますと」
 すみれは微笑んで話した。
「多少何があっても」
「ああ、それこそ天変地異が起こってもな」
「空が割れて怪獣が出て来てもな」
「悪の帝国が日本に宣戦布告してきてもな」
 応援団の人達が言うことはどれも多少ではなかった。
「それでもだよ」
「俺達はカープを応援していくからな」
「初優勝までずっと弱かったんぞ」
「金なくて募金でやっていったんだ」
「市民球場でずっと頑張ってきたんだ」
「そうやってやってきたんだ」
「何があっても応援していくぜ」
 今度は多少とは言わなかった。
「カープ一筋だ」
「また日本一になってもそれからもだよ」
「ずっと応援していくからな」
「赤ヘル軍団をな」
「私もそのつもりです、カープ命です」
 すみれはここでこうも言った。
「身体切ったら赤いカープ液が出ますから」
「血と一緒にな」
「俺達もだよ」
「血と一緒にカープ液が出るぜ」
「若しくは血の色がカープの色だよ」
「そうなんだよ」
「そうですよね、例え何があっても」
 まさに一勝、一敗、目の前のそれは大事だがそれよりも遥かに大事なものを見ている。今のすみれの言葉はそうしたものだった。
「カープを応援していきましょう」
「そうしような」
「このチーム好きだからな」
「そうだからな」
 応援団の人達も応える、そしてだった。
 すみれは三塁側でそこにいる人達と一緒にカープを応援した、だが不幸にもこの日の試合カープは負けた。
 だがそれでもだ、すみれは笑顔で言った。
「また明日ですね」
「ああ、またな」
「また明日だよ」
「残念だったがこれで終わりじゃない」
「また明日があるんだ」
「明日勝ってくれればいいさ」
「そうです、カープがある限り」
 まさにというのだ。
「応援していくだけです」
「チームがあるだけ幸せってな」
「応援するチームがあればな」
「カープ昔本当にやばかったからな」
「存続出来るかどうかって話もあった」
「そのことを思えば」
「一勝や一敗で怒るものか」
「本当のファンはそうじゃないんだ」
 ではそれは何かというと。
「それは大事でも」
「応援を続けることだ」
「何があっても」
「そのこと自体が一番大事なことなんだよ」
「そうですよね、まず愛するチームがあること」
 すみれもその通りだと応えた。 
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