銀河転生伝説
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第12話 変わる運命
アスターテ星域での勝利により、帝国元帥となったラインハルトは新たに元帥府を開き、その陣営の強化に着手した。
先ず新たに、平民や下級貴族から艦隊司令官を登用した。
アウグスト・ザムエル・ワーレン中将
ウォルフガング・ミッターマイヤー中将
オスカー・フォン・ロイエンタール中将
カール・グスタフ・ケンプ中将
コルネリアス・ルッツ中将
フリッツ・ヨーゼフ・ビッテンフェルト中将
そして、ジークフリード・キルヒアイスを一挙に少将に昇進させ提督の列に加えた。
原作との大きな違いは、この中にエルネスト・メックリンガー中将が含まれていないことだろう。
彼はラインハルトとブラウンシュヴァイク公の屋敷で面識こそあるものの、それは顔見知り程度の関係であり、それ以上でもそれ以下でも無い。
むしろ、帝国の簒奪を企む男と危険視していた。
また、原作ではラインハルトはキルヒアイスの中将昇進後は宇宙艦隊の半分である9個艦隊を指揮下に入れているが、現時点では7個艦隊に留まっている。
これは、ハプスブルク公が手を回した結果である。
『宇宙艦隊の半分9個艦隊は多すぎる。7、8個艦隊で十分だ』……と。
ブラウンシュバイク公やリッテンハイム候ら有力貴族達もそれに同調した。
彼らにしても、ラインハルトはハプスブルク公以上に目障りな存在であったのである。
メックリンガーがラインハルト陣営にいないことや、キルヒアイスが少将であることも遠因だ。
如何にラインハルトの肝煎りがあっても、キルヒアイスはラインハルトの権限で少将に昇進したばかりであり、ここで何の手柄も立てずに中将に昇進させて1個艦隊を指揮させるというのは到底不可能なことであった。
手柄を立てる絶好の機会であるカストロプ動乱も既にハプスブルク大将によって鎮圧されている。
そのハプスブルク大将は、カストロプ動乱鎮圧の功績で上級大将へと昇進し、ミュッケンベルガー、ラインハルト両元帥に次ぐ宇宙艦隊のNo3としての地位を固めていた。
実戦司令官で大将以上の階級の者はメルカッツ大将やナトルプ大将など何名かいたが、左遷せれている者も多く、他の貴族に多少敬遠されているとはいえハプスブルク公爵家現当主、フリードリヒ4世の孫という他が追随できない血統による力は大きかった。
<ラインハルト>
帝国元帥、宇宙艦隊副司令長官……とうとうこの地位まで昇り詰めた。
だが、俺はこの程度では満足しない。
宇宙艦隊司令長官になって実戦部隊を掌握し、帝位を簒奪する。
そして、姉上を救い出す。
キルヒアイスを宇宙艦隊の司令官にしてやれないのは残念だが、いずれ機会は訪れるだろう。
これからが本番だ。
* * *
難攻不落のイゼルローン要塞。
それは、自由惑星同盟と銀河帝国を結ぶ唯一通行可能な航路であるイゼルローン回廊に帝国軍が築いた巨大な人工天体である。
このイゼルローン要塞がある限り同盟軍は帝国の領域に侵攻できず、帝国軍の一方的な侵攻を許すのみである。
そこで同盟軍は過去4半世紀の間に6度に渡って大規模な攻略作戦を展開したが、その悉くは撃退され、数知れない犠牲を出してイゼルローン回廊を血で塗装してきた。
このイゼルローン要塞の攻略――それが新たに結成される第十三艦隊の司令官としてヤン・ウェンリー少将に与えられた命令である。
――宇宙暦796年/帝国暦487年 4月27日――
自由惑星同盟第十三艦隊はヤン・ウェンリー少将指揮のもと帝国軍イゼルローン要塞の攻略に旅立ち、同年5月13日――イゼルローン回廊へ突入した。
一方、帝国軍も同盟軍の接近に気付いたが、位置が分からず手を打てないでいた。
そこへ、オーディンより派遣されたと言う巡航艦より救援要請が入り、要塞駐留艦隊司令官のハンス・ディートリッヒ・フォン・ゼークト大将は艦隊の出撃を命じた。
その数は、約15000隻と駐留艦隊のほぼ全艦にあたる。
「閣下、前方ティアマト星系第四惑星アンシャルの周回軌道上に敵艦隊らしき反応があります」
「いたか。よし、直ちに向かえ」
駐留艦隊は、反乱軍を殲滅すべくティアマトへと急行した。
それが単なる囮だとは気づかずに。
・・・・・
駐留艦隊が囮に引っ掛かっている頃、イゼルローン要塞のスクリーンに同盟軍に追われる帝国軍のブレーメン級巡航艦が確認された。
「砲撃だ。……待て、各砲塔に状況を徹底させろ。味方に当てるなよ」
「はっ」
イゼルローン要塞の各砲塔から砲撃が開始されると、同盟軍は退却していった。
そして、鹵獲した帝国軍のブレーメン級巡航艦に乗り込みイゼルローン要塞への侵入を果たしたローゼンリッターは帝国軍の士官に化け、要塞司令官のトーマ・フォン・シュトックハウゼン大将を捕虜にすることに成功したが、要塞の制圧はまだであった。
囮に気づいて急ぎ戻ってきたゼークト大将は、同盟軍より送られてきた『イゼルローン要塞は既に占拠した。大人しく降伏すれば良し、さもなくばトールハンマーの破壊力をその身を以って知るであろう』との通信に全艦停止を命じた。
ゼークト艦隊の参謀であるパウル・フォン・オーベルシュタイン大佐は同盟軍の不自然さから、これは虚報と判断し『このまま進むべき』と進言したが、ゼークトは同盟軍の数の少なさから要塞は陥落したのではと判断してこの進言を却下した。
その間に、ローゼンリッターは要塞の制圧を完了させ第十三艦隊はイゼルローン要塞へと入港を始める。
「やつら逃げ込むのか? よし、この気を逃すな。一気に突入して要塞の懐に飛び込め!」
「閣下」
「またか、今度は何だ?」
「これは罠です、突入してはいけません」
「貴様、さっきは突入しろと言ったではないか!」
「状況は刻一刻と変化するものです、それがお分かりになりませんか?」
「ええい貴様こそ分からんのか、要塞が敵の手に落ちたとなれば我らは生きて、おめおめ本国には帰れん。どうせならこの気に乱戦に持ち込み要塞に肉薄する可能性に賭けるのだ」
「しかしもはや……」
「ええい五月蠅い、下がれ!」
オーベルシュタインの進言をまたも却下したゼークトは要塞に入港する第十三艦隊に突入しようとしたが、トールハンマーによる一撃をくらい1000隻以上の艦艇が瞬時に消滅する。
直後、ヤンから『降伏するか逃げるか選べ、追撃はしない』と言われ頭に血が上り、再度突撃を命じようとしたゼークトであったが、ハプスブルク上級大将の『一時の憤りで兵を無為に失うのは愚将すること。帝国の貴重な兵を損ない、敵を利する最低の行為』という言葉が不意に頭に浮んだ為どうにか思い留まり、捲土重来を誓いながら撤退を命じた。
原作では戦死したはずのゼークトの運命が変わった瞬間であった。
宇宙暦796年/帝国暦487年 5月14日。
自由惑星同盟軍は難攻不落と言われたイゼルローン要塞の攻略を、7度目にして成功させた。
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