儚き運命の罪と罰
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第二章「クルセイド編」
第十四話「次元世界最高額の賞金首」
前書き
今回は短めです。二次創作をもう一つ始めまして…
題して「ソードアート・オンライン 八葉の煌き」
そちらもよろしくお願いします。
次元世界クルセイドの首都「オーレリア」の季節は冬。
ちなみに地球で言うクリスマスは他の次元世界にも文化としてはちゃんと存在する。…もっともエレギオ・ツァーライトにはキャッキャウフフやイチャイチャするような相手はいない。彼女いない暦=実年齢(19)である。
「よぉ、待った?」
むさい友情なら有り余るほど存在するが。他人から羨ましがられる位に。
だがエレギオとしてはいつもならこの友情は宝物だと言えるがやはりクリスマスの時くらいは女の子と遊びたいのも本音…と言うより男の性である。
(まあクルセイドのクリスマスは冬じゃなくて夏なんだけどな。)
本物はこの雪降る季節が一般的らしいと、雑誌で読んだところだった。
「おおー俺も今来たところだ!」
と恋人としたい会話を親友とする切ない思いを味わった。
親友ことジャックは雪の中でも目立つ黒いスーツを着ていた。
許し難いことにジャックはモテる。中身を知ったら絶対そうとは言えないが見た目だけなら確かに爽やか系のイケメンだしウェーブのかかった緑色の髪はどこか詩人を思わせる神秘的な雰囲気がある。本当に許せんことだ。
だがそれを口には出さない。なぜなら以前そのことで彼をからかって股間にメガトンパワーのキックを叩き込まれた事があるからだ。その時のた打ち回ったのはトラウマ物である。男ならわかるだろう、股間にキックされる痛みは。全次元世界共通の物だとエレギオは信じて疑わない。
「マークは?一緒って聞いたけど?」
「孤児院に届けてきた。」
「そうか。じゃ行くか。」
「おお。」
短いやり取りを交わした後俺は十歩ほどジャックから離れた。
腕輪を掲げ、エレギオは呼ぶ。
「竜魂覚醒...ドラゴンソウル!セットアップ!!」
辺りがグレー…魔道士としてのエレギオを象徴する色が覆いつくし、
光が収まると灰色のフードの付いたローブを身に纏っていた。それがエレギオのバリアジャケットだ。
右手には片手持ちの銃剣が握られていた。
「片手持ちにしては銃身が長いよな...それスナイパーライフルでも通用すると思うぞ?」
「うっせーよ。…早くしないと人も来る。お前もさっさと呼出しろ。」
「はいはい。…来い、ドラギオン!」
刹那、空気が震えた。
エレギオは首を上に向けた。なにやら人型で灰色の巨大なロボットが背中のブースターから凄まじい火力で魔力を噴出しながら降下してくるのが見えた。
その機械兵器の名を、ドラギオンと言う。管理局も恐れる決戦兵器の一つだ。彼ら...犯罪組織ツァーライト一味の最強の切り札でもある。その戦力はなんとSSランクの魔道士クラス。しなやかな竜の首を模した頭部と横にも広い最高4人乗りの人型戦艦とも言える。その姿は少年達が一度はあこがれる合体ロボをも思わせる。実際多数の重火器を装備したその姿には、熱心なマニアまでいるらしい。
だがもしエレギオとジャックが…いや、ツァーライト一味にドラギオンの特徴は?と聞いたら誰もその圧倒的火力や殲滅能力、さらにはその特徴的なフォルムの事すらあげないだろう。なぜなら……
「相変わらず人使いが荒いなぁお前らは、ううん?」
コイツが喋るからだ。
「ロボの分際で自分の事を『人』呼ばわりすんじゃねえ。」
ジャックが見上げて怒鳴った。
「てめぇなんざ物だ、物。」
「んだと糞餓鬼!?すりつぶして、海に捨ててやろうかぁ!?」
…おわかりだろうか、喋るだけならこの世に何千とは言わないまでも存在するインテリジェントデバイスと全く同じだ。そう驚く事はない。現にコイツもインテリジェントデバイスのAIを特殊な方法で改良したものを感情プログラムとして搭載されているのでざっくばらんに言えばインテリジェントデバイスが喋るのとなんら代わりは無いのだ。
だがそれでもこんな凶悪な性格をしたAIを古今東西誰がくみ上げると言うのだろう?
まともに相手ができるのはジャックだけ…いやむしろジャックで無ければ本当に言葉通り海に捨てるかも知れない。とりあえずエレギオはこの最終戦争に終止符を打つべく口を開いた。
「ああー二人とも。目的忘れてないか?」
「おっと。」
「そうだったぜぇ。」
なんとも乱暴な二人である。
もっともジャックはドラギオンの前でなければこんな風にはならない、股間を蹴り飛ばして全次元世界共通(男限定)の大ダメージを与えてくるのはエレギオが妙な事をしたらという前提があってのことだ。
(…おっと、もう一つ全次元世界共通の事があったな。)
エレギオ・ツァーライトが全次元世界最高額の賞金首と言う事だ。
「行くぞ、お前ら。強奪いに。」
「了解」
「りょーかいだよ、ご主人様。」
ちょうどその頃…エドワード治療院。
今リオン達が治療されているところでは、リオンにとってこの世界始めての平和な時間だった。
…もっとも車椅子だが。リオンが魔法について聞くと、あっさりと関係者である事をエドワードは暴露した。
「まあ俺にはリンカーコアは無いけどな。」
「知っている。」
「おっと、そりゃあわかるか。すまん、愚問だったな。まあこの世界クルセイド自体が魔法の聖地の一つだと言っても過言じゃあないからな。ミッドチルダについで魔道士が多いぜ。」
これは聞いた話だがこのクルセイドは二つの超巨大勢力…「時空管理局」と「反管理局連合」の緩衝地帯に当てはまるらしい。それを聞いたときリオンはふと疑問に思った事があった。
「管理局が人手が足りないのに政権を維持できているのは。」
「順序が逆、反管理局連合の対処に人数を裂きすぎてるからさ。普通なら充分過ぎる位なのにな。」
そう言う事らしい。無論これだけじゃないが大体そんな情勢なのだと言う。クルセイドは醜い汚職や政権と武力両方の抗争に塗れた、呪われた土地だと言う。
だがそれ故に、両方の法で縛られず無法地帯であるがために次元世界中でもっとも経済が活発な場所でもある。その説明をしたときエドワードは「クルセイドの光と闇」と表現した。リオンには分かりやすい例があったからこそ直ぐに飲み込んだがフェイトとアルフにはちょっと難しかったらしい。
「なんで無法地帯だと経済が発展するんですか?」
リオンからしたらこの年で経済と言う言葉の意味を質問しないだけ大した物だと思ったが。
「管理局が物資を取り締まれないからだ。例えばロストロギアも売る事ができる…そうだろ?」
「飲み込みが早いな。まあ流石にロストロギアの密売なんておっかねえ真似をする奴は殆どいないが…それでも危険って言われてる『ベルカ式カートリッジシステム』が普通のデバイスショップに置いてあったりするからな。」
「へぇ…」
「だからそう言うのが欲しい奴らは躍起になって集まる。商売も儲かるし金があるから施設も家も立つ。」
「でもそれじゃあ…」
「フェイトちゃんの思う通りさ。クルセイド次元世界有数のマフィアやならず者の溜り場だ。」
自身もならず者に見えるエドワードは顎鬚をこすった。これが癖らしい。
下半身の自由が利かないリオンは彼から聞く話だけが世界の手掛かりだった。故にそんなに突発した話があるものなのかと疑問に思うことも多々ある。
…今はリオンもこの野蛮に「見える」中身は正反対の紳士を7割は信用していた。それはリオンと言う人間にとって十割にも匹敵する数字なのだ。リオンがそうなのだからフェイトとアルフは尚の事。
これは世界を別々の形で敵に回す二人の少年が出会うその前日のことだった。
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