子供の言うこと
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第五章
「身内とか親しい人ばかりだしな、ただな」
「ただ?」
「ただといいましと」
「二度と話すなよ」
岳は二人にこのことは忠告した。
「いいな」
「お話がお話ですし」
「だからですのね」
「ああ、そういうことでな」
こう言ってだ、この話は終わらせた。しかしみおはここでまた言い出した、その話はどういったものかというと。
「それでお兄様柔道の方は」
「そっちか」
「今もされてますわね」
「ああ、四段になった」
中学から高校、大学までずっとしていて就職してからもしているのだ。
「この前な」
「それは何よりですわね」
「これからもしていく」
「そうですのね」
「柔道は好きだからな」
実際に趣味の一つになっている。
「だからな」
「されますのね」
「ああ、ずっとな」
「ではここでみおは笑って話した。
「新しい柔道着も必要ですわね」
「いや、今持っているけれどな」
「ですが必要になりますわね」
みおは結構強引に言ってきた。
「そうですわね」
「それでか」
「はい、ですから」
「実はですの」
あやも言ってきた。
「わたくし達結婚のお祝いに」
「奥様にはカップを用意しましたし」
新妻にはそちらだというのだ。
「そして、ですの」
「お兄様にも用意しましたの」
「こちらを」
「どうかお受け取り下さい」
こう言ってだった、二人は。
岳に柔道着を出した、そのうえで話した。
「どうかお受け取りを」
「お兄様へのプレゼントですわ」
結婚祝いのそれだというのだ。
「実は二人でアルバイトをしていまして」
「ケーキ屋さんで働いていますの」
「それで買いました」
「どうかお受け取り下さい」
「おい、いいのか」
二人に差し出された柔道着を見てだ、岳は二人にどうかという顔になって言った。
「こんなものを」
「いえ、どうかです」
「お受け取り下さい」
「折角ですし」
「これからも柔道を続けて下さい」
「いいのか、しかしな」
岳はここで実感して言った。
「お前等変わったな」
「そうですの」
「変わったと」
「ああ、十年前とはな」
つまり子供だった時と、というのだ。
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