ドリトル先生の林檎園
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第三幕その十一
「それでもかな」
「だからそこでそう言うのはね」
「先生の謙虚さや無欲さはいいことでも」
「それでもだよ」
「それで自分にはって思うと」
「かえってよくないよ」
「そういうものかな、分相応ってあるしね」
その人それぞれのです。
「僕なんかがって思うよ」
「いや、違うから」
「そこはね」
「その人の努力と徳次第で幸せは沢山貰えるよ」
「手に入れてもいいじゃない」
「誰だってそうだし」
「先生だってね」
「そうかな、僕は」
私大のお酒が回って本音が出ていますが本音も同じでした。
「どうしても自分はね」
「女の人にはもてなくて」
「結婚もしない」
「それも一生」
「そう思うのね」
「そうだよ、そしてそれでもね」
恋愛に縁がなくて結婚しなくてもというのです。
「僕は幸せだしね」
「僕達がいてトミーや王子がいて」
「そして学問も好きなだけ出来て」
「美味しいものを楽しめて健康でもある」
「だからだね」
「充分過ぎる程幸せで」
「それでいいっていうんだ」
「そうだよ、今は充分過ぎる位幸せだから」
これが先生の本音です。
「本当にいいよ」
「そうなんだ」
「やっぱりそう言うんだね」
「先生としては」
「今も」
「そうだけれどね、しかし」
それでもとです、先生は皆に言うのでした。
「皆は違う考えだね」
「ずっと言ってる通りね」
「先生はもっと幸せを求めていいし」
「恋愛とも無縁じゃないから」
「もっと幸せを求めていこう」
「恋愛のことも前向きになって」
「ちょっとだけ周りを見ようね」
これが皆のアドバイスでした。
「そうしたら気付くかもね」
「先生は確かにこうしたことは駄目でも」
「あの人も頑張ってるし」
「それならね」
「あの人とは誰なのか」
このこともわかっていない先生です。
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