ドリトル先生の林檎園
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第二幕その九
「実は家臣の人に連れられて落ち延びたとか岸和田の方の藩に匿われて」
「へえ、岸和田って大阪府の南にある」
「だんじり祭りで有名なところよね」
「あの物凄く豪快なお祭りの」
「あそこにあった藩でなんだ」
「それで分家されて大名になった人がいるけれど」
その岸和田の方にあった藩のです。
「この分家された人が実はね」
「秀頼さんの子供だった」
「そんなお話があったんだ」
「実はって」
「この藩にはずっと当主代々にだけ伝えられているお話があって」
さらにお話する先生でした。
「秀頼さんは実は落ち延びていたっていうんだ」
「じゃあ本当にかしら」
「秀頼さんは生きていたのかな」
「大坂の陣で死なないで」
「そうだったのかな」
「そうかもね、幸村さんも実はっていうし」
この人にしてもというのです。
「正史では死んだとなってるけれど」
「実はだね」
「幸村さんは生きていたし」
「秀頼さんもそうだった」
「そして秀頼さんの息子さんも」
「若し秀頼さんの子供が大名になっていたとしたら」
この仮定からお話する先生でした。
「幕府は実は知っていたかも知れないけれど」
「知らない振りをしていた」
「その分家の人は実は秀頼さんの息子だったけれど」
「そうだったんだ」
「その可能性もあるんだね」
「そうなんだ、まあ真実はわからないけれど」
それでもというのです。
「そんなお話もあるんだ」
「面白いお話だね」
「長野県っていうとやっぱり幸村さんだけれど」
「あの人が本当に生きていて」
「仕えていた秀頼さん達が生きていたら」
「報われるね、あの戦いが」
「そうだね、だから僕としてもね」
今の先生の目はとても温かいものでした、普段から先生の目はそうですが今は普段以上にそうなっています。
「是非と、ってね」
「思ってるんだね」
「幸村さんが実は生きていたなら嬉しい」
「秀頼さんも息子さんも」
「そうだっていうんだね」
「実際当時生きているのじゃないかってよく言われていたんだ」
大坂の陣が終わった直後はというのです。
「そうね」
「そうだったんだね」
「戦いが終わった直後は」
「そんなお話があったんだ」
「そうなんだ、何しろ落城したけれど」
大坂城、豊臣家のお城がでる。
「その時に亡骸は見付からなかったし」
「確かお城は燃えて爆発までして」
「切腹した後でそうなったから」
「もう亡骸もだね」
「見付からなかったんだ」
「そうだったから」
それでというのです。
「見付かっていないから」
「実はって言われているんだ」
「秀頼さんは生きていたんじゃないかって」
「その実は」
「さっき話した岸和田藩が助けたとも言われているよ」
こうしたお話もあるというのです。
「だから岸和田藩に伝わっているんだ」
「当主の人だけに代々だね」
「それって凄いお話だね」
「当主の人にだけ代々っていうと信憑性あるね」
「嘘なら伝えないだろうし」
「噂で済ませるわね」
「僕もそこが気になってるし」
その代々秘かにというところがというのです。
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