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蒼と紅の雷霆

作者:setuna
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爪編:トークルームⅡ

 
前書き
最初のボスを倒した後でのイベント会話も含めます。 

 
ジブリール、ニケーが所持していたミラーピースを回収し、モルフォに差し出すとミラーピースはモルフォに吸い込まれていく。

「どうだ?少しは力が戻ったか?」

『ええ、少しだけど力が戻ったわ』

ソウの問いにモルフォは笑みを浮かべながら答える。

「そう、良かった…」

「やはり、このミラーピース…でしたっけ?モルフォさんの分かれた力を戻すことで元の状態に近付いているようですね」

「…オウカさん、分かるの?」

シアンはモルフォの状態を理解しているような口振りに目を見開く。

「ええ、何となくですけど、モルフォさんの雰囲気みたいなもので…」

「そう…なんだ…」

完全にコントロール出来ていないとは言え、シアンですら良く観察しないとモルフォの回復が分からないと言うのにオウカは簡単にモルフォの状態を理解してみせた。

それに対して表情を曇らせるシアンだが、モルフォがそれを戒める。

『シアン、オウカに嫉妬する暇があるのなら、第七波動のコントロールを練習して、女を磨きなさい。ごめんなさいねオウカ。この娘、あなたにGV関連のことで色々と…』

「ちょっ!?モルフォ、余計なことを言わないでよ…!」

『アタシはあなたの本心よ。あなたのことは手に取るように分かるわ。シアンはオウカのこと、本当は好きなの。だからオウカ、シアンの態度は気にしなくていいわよ』

「はい、私もシアンさんのこと好きですから。心配しなくても大丈夫ですよモルフォさん。」

『そう、ありがとう』

「それに私はシアンさんのことが羨ましいです…シアンさんは歌うことでGV達の支えになるのに、私は帰りをただ待つことしか出来ません…だからシアンさんのことを羨ましいと思っていたのですが…でも、そんな風に思うことすらおこがましいですよね…」

「オウカさん…(違う…違うよオウカさん…今、GVの大きな心の支えはオウカさんなの…私はオウカさんみたいにGVの心の傷を癒してあげられない…お料理だってオウカさんみたいに作れない…私はただ、歌うことしか…)」

表情が曇り、知識も技術も何もかも足りない非力な自分に自己嫌悪するシアン。


《ソウのいいところ》


「さて、洗い物を…あら?」

「洗い物なら、さっき俺がやっておいた。掃除はGVがしているからお前は休むといい」

洗い物をしようと流しの前に立ったのですが、既に片付けられていて私は不思議に思いましたが、どうやらソウさんがやってくれたようです。

「ありがとうございます。ソウさんはGVと同じで本当に優しいんですね」

「…当然のことをしているだけだ。寝食出来る場所を提供してもらって何もしないわけにはいかんだろう…別に俺は優しくは…」

「そんなことありませんよ?買い物の時はソウさんは私とシアンさんが重たい荷物を持たなくていいように配慮してくれたり、新作のお料理を出したら気付いてくれますし、他にも…」

「………ええい、止めろ…とにかく勘違いするな。俺はただ当然のことをしているだけだ」

困ったように言うソウさん。

一見、冷たい人に見えてもちゃんと見ていればGVと同じくらい優しい人なんだと分かります。

「……とにかくGVのことは頼む。あいつはお前のおかげで立ち直ることが出来た。これからもあいつの傍にいてやってくれ」

「…はい」

「うう…お兄さん公認なんて強すぎるよオウカさん…」

『頑張りなさいシアン。付き合いの長さでカバーするしかないわ』

何故か物陰でシアンさんが涙目で私達を見つめていて、モルフォさんがシアンさんの頭を撫でているのが見えました。

(シアンは焦りを感じた)


《停電》


突然、部屋の中が真っ暗になった。

「きゃっ!?」

「停電?シアン、大丈夫だから落ち着いて」

「確か蝋燭があったはず…取ってきます…きゃっ!」

「オウカっ」

転びかけたオウカの体を僕は抱き止めた。

「ありがとうございます、GV…」

「蝋燭は俺が取りに行こう。無能力者よりは夜目が利くからな…GVはオウカを頼むぞ。シアンはここを動くな」

「うん」

兄さんは蝋燭を取りに向かった。

「うう…」

「どうかした?」

「い、いえ…少し、ドキッとしてしまいました」

オウカ…そんなに怖かったのか…。

「2人共、何時までくっついてるの…?」

『シアンも停電になった時にGVにしがみつけば良いのに…』

シアンが膨れっ面になりながら僕とオウカを見つめていた。

「持ってきたぞ……おい、シアン。何を膨れている?」

帰ってきた兄さんがシアンの様子を困惑したように見ていた。

(シアンは焦りを感じた)


《孤独》


生憎の天気…窓の外で雷が落ちるのを、オウカがぼーっと見ていた

「オウカは、物怖じしないね。怖い物ってないの?」

「怖い物…GVは…私達が始めて会った日のことを覚えていますか?」

「覚えているよ。オウカが、不良能力者達に絡まれていて…」

「はい…あなた達が助けてくれるまで、私、とても怖かったんです」

やっぱり能力者は怖い、か…それは、仕方がないことだ。

第七波動能力者の危険性は、僕も身に沁みて分かっている。

「ああ!いえ、能力者が怖かったというわけではないんです。もし私が襲われても困る人も悲しむ人もいない…そんな独りぼっちの自分を考えて、どうしても怖くなりました…でも、今はGVやソウさん、シアンさんとモルフォさんがいますから」

そう言いながら、屈託のない笑顔を見せるオウカ。

…彼女は孤独の意味を知っている…だからこそ僕達を迎え入れてくれたのかもしれない。

(シアンは焦りを感じた)


《ソウの気持ち》


「GV、その包みはどうした?」

「ああ、兄さん。オウカからのクッキーだよ。これは兄さんの分」

「…ああ、すまないな」

兄さんは包みを開けると早速中身のクッキーを食べ始めた。

こう言うのもあれかもしれないけど、無能力者の人が作ったお菓子を食べる兄さんは、昔からは想像出来なかったな。

シアンとテーラと暮らし始めてからかもしれない。

兄さんが少しずつ穏やかになっていったのは。

「…作り方が似ているのか、テーラの作った味に似ているな…」

「兄さん……兄さんは本当は…」

あの時のテーラの手を取りたかったんじゃ…そう聞こうとして…出来なかった。

「……お前が気にすることじゃないだろう。お前の傍にいるのは俺が望んでしていることだ。あいつもそれを理解している」

「……兄さん…」

「お前もさっさと食べてしまえ。オウカの好意を無駄にするな」

「うん…美味しい…」

(シアンは焦りを感じた)

(パンテーラとの心の繋がりを感じた)


《紅いレプリロイドと少女レプリロイドの話》


「…っ」

オウカさんは自分で購入した小説を読んで目に涙を滲ませていた。

「それ、悲しい話なの?」

「はい、紅いロボットの男性とロボットの女性のお話なんです。」

GVがハンカチを渡すとオウカさんはそれで涙を拭いた。

「どういうお話なの?オウカさん?」

「はい…」

オウカさんは小説の内容を話してくれた。

この話は2人がそれぞれ所属する組織が陰謀によって敵対することになり、ロボット同士での平和を願う女性は想いを寄せる男性のいる組織の元に向かった。

しかし、敵対組織には女性の兄もおり、戦いが進むに連れてその兄とも戦うことになり、男性は女性の兄を倒してしまう。

それが原因で女性は男性のいる組織から離れ、兄の復讐のために男性と戦い…命を落とすことになる。

命を落とす直前にロボットだけの世界で一緒に暮らすことを望んだが、男性はそれを幻と断じた。

女性はロボットだけの世界で男性と一緒に暮らしたかったと儚い笑みを浮かべて落命したらしい。

「っ…悲しい…お話だね…」

私も互いを想っていたはずなのに互いの気持ちが完全に通じ合わないまま、終わってしまった2人の関係に涙を流す。

「はい、ですが…この2人の関係が…ソウさんとテーラさんに似ていると思ったんです」

「兄さんとテーラに?」

「はい、互いを大事に想っているはずなのに、立場や考え方の違いで敵対している…まるでソウさん達のようだと…」

「………」

確かに似ていると思う。

互いに想っている2人が立場とかの違いで…。

もしかしたら2人もこの小説の2人のようにそうなるんじゃないかと思うと…怖い。

お兄さんとテーラちゃんが戦うなんて…耐えられない…。

「死なせないよ…兄さんも、テーラも…絶対…」

「「GV…」」

(シアンとの心の繋がりを感じた)

(パンテーラは不思議な感覚を感じた)


《シャンプー》


「あら、GV。いい匂いですね」

そう言って、オウカが顔を近づけてくる。

そういえば、シャンプーを買い換えたばっかりだっけ、お風呂上がりだから、シャンプーの匂いが残っているのだろう。

「同じシャンプーなんだからオウカも同じ匂いがするんじゃない?それに兄さんも同じシャンプー使っているし」

「自分の匂いは分からなくて…同じですか?」

オウカが髪を掻き上げて、更に顔を近づけてきた。

「近ーい!2人共近ーい!離れて!」

「シ、シアン…」

「後、GVはオウカさんと同じシャンプー使うの禁止ー!」

「どうして…」

「どうしてもなの!もう…」

「騒がしい奴だ。シャンプーくらいで何を騒いでいるんだ。別々に使うより一緒に使った方がいいだろう?」

『女の子は複雑なのよ。それはテーラも同じ…じゃないにしても近いリアクションはすると思うわよ。ソウと他の女の子がそういうことになったら』

「………理解出来ん。以前の生活では全員同じシャンプーを使っても問題なかったろう?」

『あの時とは状況が違うわよ。もう少し乙女心を学習したら?』

(シアンは焦りを感じた)

(パンテーラは不思議な感覚を覚えた)


《ストレッチ》


風呂上がりのオウカが、マットの上に座っている…ストレッチだろうか?

「良ければ手伝おうか?」

「GV、それってちょっとセクハラじゃ…」

「ありがとうございます。ではお願いします」

「ええっ!?」

「後ろから背中を押してもらえますか?」

「了解。痛かったら言って」

背中を押すと、彼女の上半身は抵抗なく、床にぴったりとつくように倒れた。

「ほう?」

意外だったのか、兄さんもどこか感心したような表情だった。

「凄い。柔らかいんだね」

「子供の頃、バレエを習っていたんです」

「バレエとは何だ?」

『ダンスの一種よソウ。アタシも詳しくは知らないけど』

(シアンは焦りを感じた)


《雷霆兄弟の髪》


髪の手入れをしているとオウカが話し掛けてきた。

「GV、あなたとソウさんの髪ってとても綺麗なんですが、何時もそうやってお手入れをしているのでしょうか?」

「え?うん、僕と兄さんが使う避雷針の弾芯には僕達の髪の毛が使われているんだ。だから確実に雷撃を流し込むために手入れは欠かせないんだ。」

僕と兄さんでは避雷針の運用方法に違いはあるけれど、雷撃を避雷針によって利用することは共通している。

「GVの髪もとてもサラサラしていますが、ソウさんの髪もサラサラですね…少し羨ましいです」

「なら、僕達と同じくらいにオウカも伸ばしてみたら?長い髪もオウカに似合うと思うよ?」

「そうでしょうか…」

「わ、私も髪伸ばしてみようかな…?」

「チビの色違いモルフォが出来上がるだけだろう。もう今のチビのモルフォで見飽きたぞ」

『ソウ、それはアタシに対する挑発と受け取って良いのかしら?』

「勝手にそう思えばいい。触れることも出来ない相手など脅威にならないからな…お前が俺を能力で洗脳出来るなら話は別だが、皇神の技術がないなら無理だろう」

『うっ…』

(シアンとモルフォは焦りを感じた)


《血塗られた手》


「GV、ちょっとお手を拝借してもよろしいですか?」

「手?構わないけど…」

オウカは僕の手を掴むとまじまじと手のひらを見つめた。

「実は、手相を少し勉強してみたんです」

手相…確か古くから伝わる占いの一種で、手のひらの皺を見て、その人の健康状態や今後の運勢を占うものだったか。

「GVの手は、綺麗ですね」

「…そんなことないよ…」

僕の手は、血塗られた手だ…綺麗だなんて言ってもらう資格はない…。

「いいえ…人を守るあなたの手はとても尊いものです。GVがこの手で守ってくれたから、今の私があるんです」

「オウカ…」

「前にソウさんのお手も見させてもらったんです。ソウさんもあの手で、GV達を守ってくれたんですよね…」

「うん…」

「手相を見るなら見つめ合ってないで手を見たら?オウカさん…」

何故か僕とオウカの間で膨れているシアン。

(シアンは焦りを感じた)


《チャタンヤラクーシャンク Take.2》


「前から思っていたんですが、GV達の使う武術はもしかして…チャタンヤラクーシャンクを取り入れた物ではありませんか?」

「凄いな。良く分かったね」

チャタンヤラクーシャンク…ざっくりいうと、空手の型の一種だ。

前に気付いたテーラは理解出来るけど、オウカは何故気付いたんだろう?

「子供の頃、護身術として空手を習っていたことがあったので…」

「じゃあ、オウカもチャタンヤラクーシャンクを?」

「いえ、私は映像でしか見たことはないんです。チャタンヤラクーシャンク」

「む…私だって、ちゃらんやた…ちゃたんら…ちゃら…うう…」

「シアン?」

(シアンは焦りを感じた)

(パンテーラは不思議な感覚を感じた) 
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