ある晴れた日に
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518部分:空に星は輝いているがその五
空に星は輝いているがその五
「やっぱりね。お店に飾りたいのよ」
「繁盛祈願と看板にね」
慶彦はそれぞれが重なるものとして話していた。
「そういうのをね」
「外観に気をつけながらだけれどね」
「そうなの。まあうちは」
ここで少し寂しい顔になって言う恵美だった。
「最近ライオンズのブルーがライトブルーじゃなくなったからね」
「恵美のお家のお店ってライトブルーだからね」
「お店の名前自体がライオンズブルーだったし」
ここで明日夢と茜が彼女の左右からそれぞれ述べた。
「それ考えたら今のライオンズのブルーはね」
「困ったことよね」
「お爺ちゃんは西鉄のユニフォームの感覚思い出していいっていうけれど」
そうは言っても本人は乗り気ではないのが明らかな恵美だった。
「やっぱり。元のライトブルーがいいわね」
「まあうちのお店はカラー自体は白にしてるけれどね」
慶彦はここではこう言うのであった。
「ちょっと。他の色はね」
「しない方がいいわよね」
将来のおかみさんもそれでいいと応える。
「やっぱり。お店は静かでね」
「そうだね。それがやっぱりね」
二人でそうすることにするのだった。今から。
「清潔に白でね」
「お客さんが安定して」
「それでいいんじゃないか?」
佐々もそれでいいというのだった。
「やっぱり白を見てると安心するからな、人間ってな」
「そうなんだよね。白が一番いいんだよね」
見れば慶彦の着ている和菓子用の作業服も白で統一されている。白い帽子が実によく似合っている。ただし襟から見えるシャツは黒である。
「一番安定感があるんだよね。お菓子も映えるしね」
「それじゃあそのお菓子は」
「水羊羹で」
「うん、また来てね」
もう支払いは終えているからこの辺りはすんなりと終わってしまった。
「今度はお見舞いの人の退院祝いでね」
「はい、それじゃあその時に」
「また来ます」
皆義彦のその笑顔を受けてそのうえで八条病院に向かう。病院までは簡単に辿り着けたが問題は中に入ってからであった。
病院の中は何階もありしかも何棟にも分かれていた。一応案内場所の壁のところに地図があるがそれでもかなりわかりにくかった。
「ええと?」
「先生のいる部屋って何処なのよ」
「B棟の601号室!?」
「そこって」
「何処なのよ」
それを言われてもだった。彼等はどの部屋なのかわからなかった。
「一体何処なのよ」
「わかるか?」
「いいや、全然」
「俺もだ」
誰もわかりかねた。しかしここで彼が言ったのだった。
「B棟の601号室だったらだ」
「えっ、音橋」
「わかるのかよ」
「案内する」
驚く皆に対してさらに言うのだった。
「こっちだ。ついて来い」
「あっ、ああ」
「それじゃあ」
驚きをそのままに皆彼について行く。そうしてだった。
気付けばその部屋の前にいた。彼等は自分達でも驚く程度早くその部屋に着いた。全て正道が案内したその結果であった。
「ここなの」
「っていうかよ」
ここで皆怪訝な顔になってその案内をした正道に顔を向けて言うのだった。
「あんた何でわかったのよ」
「そうだよ」
それが不思議で仕方なかったのであった。
「それもあっさりって」
「病院の中知ってるのか?」
「おおよそわかった」
ぶしつけな言葉で述べた彼だった。
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