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ある晴れた日に

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517部分:空に星は輝いているがその四


空に星は輝いているがその四

「杉浦忠様のユニフォームとかね」
「おおっ」
「そんなの持ってるの」
 皆これには思わず声をあげてしまった。慶彦もカウンターの中で驚いた顔になっている。しかし咲が出してきたものはそれだけではなかった。
「あと鶴岡親分の被っていた帽子とかもあるけれど」
「すげえ」
「完全に家宝じゃない、それ」
「他にはホークス関連じゃないけれど」
 まだあるのであった。驚くべきことに。
「阪急時代と近鉄時代、両方の西本監督の帽子もあるわよ。直筆のサインが入ったのね」
「っていうとあのエイチのマークのよ」
「伝説の三色帽の」
 どれも全て古の世界にあったものになってしまっている一品であった。咲はそうしたものまで持っているというのである。
「あるけれどね。ああ、稲尾さんのサインボールとかもあるわよ。大沢親分のスパイクとかレロン、レオン兄弟それぞれの使っていたバットとかも」
「何かパリーグばっかりだけれど」
「どれもこれも」
 皆を唖然とさせるのに充分であった。
「信じられないわよね」
「全くだよ」
「そういうの飾ろうかしら」
 咲は言うのだった。
「商売繁盛祈願にね」
「ああ、それ是非飾ってくれない?」 
 慶彦はカウンターから真顔で咲に言ってきたのだった。
「嫁入り前じゃなくて今からでも」
「今からでもなの」
「確かに商売繁盛の御守護も貰えること間違いないし」 
 この辺りは見事な商売人気質であった。ゲンを担ぐというのがである。
「それにお客さんも招き入れる看板になってくれるしね」
「そういえば確かに」
「他にはまだあるかな」
「あるのよ。パパがパリーグファンで」
 持っているのは咲の父親であるらしい。その八条百貨店の重役である。
「それで集めてるのよ。ネットオークションで最近も」
「ネットオークションでもそこまでのもの手に入らねえよ」
「鶴岡親分の帽子なんて」
 皆もかなり古い野球のことを知っているようである。
「どうやって手に入れたんだかな」
「それが気になるんだけれど」
「鈴木啓示投手のグローブとか福本豊選手のスパイクも」
「うわ・・・・・・」
「そんなのまで」
 皆あらためて唖然となってしまった。
「あるのかよ」
「どうやったらそんなのが手に入るのよ」
「そういうのがあるわね。それ全部お店に飾って?」
「飾る場所が大事だけれど是非ね」
 やはり真顔の慶彦であった。
「飾って。こっちもドラゴンズの掘り出し物もっと出すから」
「ってまだあるんだ」
「ドラゴンズのが」
「あるよ。高木守道選手のグローブもあれば宇野勝選手の帽子も」
 この店もこの店でかなりのものがあるようである。
「星野監督の現役時代のユニフォームもあるし」
「阪神時代のはないんだな」
「それがちょっとがっかりね」
 あの伝説的な弱さを誇った阪神を立て直しあまつさえ優勝までさせてしまった。それにより星野仙一は英雄になってしまったのである。
「というよりかは」
 話を聞いているうちに恵美が言ってきた。
「そこまで色々あるんだったら博物館でも開いてみたらどうかしら」
「博物館!?」
「っていうと!?」
 咲と慶彦が恵美の今の言葉を受けてその視線を彼女にやった。
「何の博物館なのよ」
「野球のかな、話の流れだと」
「そうよ。野球のね」
 慶彦のその言葉に応えて言う恵美だった。
「それだけあったら。どうかしら」
「そういうのは考えてないけれど」
「流石にそこまでは持ってないしね」
 二人はそう言ってそれには乗らなかった。
 
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