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女神と星座の導きによりて

作者:草ナギ
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星40 真名戦後編

 「さて、では行きますよ!”元”魚座の黄金聖闘士真名。行きます!」

 その言葉がきっかけになり、私は戦闘を開始しました。
 私はまずアイオリアに狙いを定め、ちょっと速さを上げて懐に入り込みます。
 膝を抱えるようにしながら回転し、大きな円を描くようにして足首を伸ばして、後ろ回し蹴りをお見舞いしました。

 「ぐっ!」

 それによりアイオリアの頭に衝撃が走った様で、意識が飛びかけたみたいですが、被っていた兜によって守られ直ぐに体勢を正し、こちらの間合いからバックステップで離れました。
 離れた時に膝をついてフラついていますが、気合いで乗り切っている様です。
 
 「次!」

 次に近くに居たカミュの正面からやや斜め横辺りの位置に移動。
 素早く構えた状態から、外側の足に体重を乗せて上半身をやや傾け、カミュの奥足が、私の股の正面に来るような位置取りをします。
 その位置から振りかぶって拳を思いっきり叩き込みました。
 
 「かはっ!?」

 「カミュ!」

 「よそ見をしている場合ではありませんよ?ミロ」

 吹っ飛ばされたカミュを見たミロに忠告して、一気に間合いに踏み込んで拳を放ちます。

 「くっ!」

 が、間一髪といった風にミロにかわされました。
 しかし、一瞬だけ動きが止まったのを見逃しません。
 すかさず奥足を前に出して身体を固定、ミロの前に出つつ腹部に連続攻撃を繰り出して、最後の一発は勢いをつけ両手を突き出し、小宇宙を爆発させて吹き飛ばしました。
 
 「うあああああああっ!」

 「くそっ、真名!止めろ!」

 吹き飛ばされたミロを背後にシュラが私に制止するように訴えかけてきます。

 「…たい………アロ…ズ…」

 「……真名?」

 じっとシュラを見つめながら呟きます。けれど、聞こえていなかったみたいですが、仕方ないです。
 一瞬ある解決策を思い出したのですが、直に霞みが掛かって消えてしまいました。
 とにかく認識できる、今一番伝えたい事を叫ぶ事にします。

 「私の意識が出ている今ならチャンスなんです!実際こうして傷つけている事が楽なんですよ!こんな事、したくもないのに!!」

 「真名……」

 「お願いします、シュラ。どうか」


 わたしをころ――――



 「それは断るよ。真名」



 「!!」

 それはもう聞く事はないと思っていた声でした。
 何故…彼が此処に……。

 「…………アイオロス」
 
 思わず、双魚宮の出入口を凝視してしまいました。
 そこには沙織の傍に居るハズのアイオロスが居て……。
 
 「なぜ……此処に?」

 驚きのあまり戦闘衝動も今は落ち着いています。
 
 「何。今、君の傍に行かなければ後悔してしまいそうだったんだ」

 笑顔でこちらを見つめてくるアイオロス。
 彼は車椅子での移動手段しかないと思っていました。
 恐らく六年は治療していなかったハズです。
 けれど、今の彼の両足はしっかりと地面の上にあって。
 
 「足は?」

 「まだ完治していないよ。小宇宙で一時的に歩いているに過ぎない」

 ああ、なるほど。流石としか言えないですね。
 しかもそれだけではなく。

 「その恰好は?」

 そう、今のアイオロスは射手座の黄金聖衣を纏っています。
 
 「君を止めに」

 「……止めてくれるんですか?」

 「ああ」

 そう言って、アイオロスは私から少し離れた場所まで来ました。

 「真名」

 「……はい」

 一体どうやって止めると言うのでしょう……。
 
 「何を使うかは秘密としよう。例えて言うなら……」

 「?」

 「君にもらった物を返そう。という事だ」

 「??」

 一体どういう事でしょう?もらった物を返す?
 何年もアイオロスにあげた物なんてありませんよ?

 「真名」

 「は、い」

 驚きで少し落ち着いていた反動でしょうか?少しづつ魔拳の力が強く……。
 
 「ア…イオ……ロス!止めるな…ら、一思いにで……すよ!」

 ではないと、止まれません……!すると、アイオロスが動きました。
 手に黄金の弓を持ち、矢を背から取り出しています。
 
 「兄さん!」

 「「アイオロス!!」」
 
 「よせ!アイオロス!」

 アイオリア、ミロにカミュ、シュラが叫んでます。
 これで、彼らを傷付ける事はありません。
 気張って動いてなるモノですか……!

 「いくぞ、真名」

 「はい」

 そして矢は放たれました。


 □■□■□■□■□■□■


 矢は放たれた。
 真名は目を閉じ、その瞬間を待った。魔拳の力は”避けろ”と叫んでいる。
 だが、真名は動けない。いや、”動かない”。
 アイオロスが来てくれて良かった。心の底からそう思う。
 そして、

 
 トスンッ


 っと小さく、そんな音が真名の額から聞こえた気がした。
 
 「……あ」

 身体に、心に全力で抗い、消し去る事が不可能と思っていた重圧が軽くなってくる。
 完全に消えた訳ではないがこれならばと小宇宙を高め、自身の精神を強く意識して魔拳の力を追い出す。
 どこか遠くの方で何かが破裂した音が聞こえた気がした。
 そして、その瞬間真名は気が抜けて倒れ込む所だったが、アイオロスがいつの間にか傍に居て抱き留めていた。
 目を閉じる瞬間、見えたのはアイオロスの腕と”青い花びら”だった。
 
 「……ああ……なるほど」

 真名は直に分かった。この花びらはキュアローズの花びらであると。
 しかも、ただのキュアローズではない。
 恐らく十三年前、沙織……アテナのおくるみに刺したキュアローズだ。
 それは正に特別も特別、沙織……アテナの為に作った物である。
 一応似た様な物が作れない訳ではないが時間が掛かる。
 数日(目安としては一週間程)ある一定の時間に小宇宙を注ぐ必要があった。
 しかも夜、月が出ている間のみで、運が良くなければ作れないのである。
 何故なら晴れていないといけないからだ。
 なので、その効果も絶大なのだ。
 ただし、それは真名以外の者に対してのみ。
 キュアローズは真名の”血”を吸い小宇宙を注がれて、初めて効果を発揮する。
 つまり、真名自身には効かない……訳ではないが、それは怪我した場所に直接茎で刺す等しないといけないけれど、効果はとても薄い。
 使わないよりマシだろうという感じだ。
 なので今回アイオロスが使ったのは特別なキュアローズだからこそ、洗脳しているであろう頭、脳に直接面している場所、額に小宇宙で黄金の矢に見せかけたキュアローズを刺し、少しでも魔拳の洗脳から精神を取り返す為に、こういった荒技を使ったのである。
 キュアローズを使う事を悟られない様に気を付けないと、魔拳の効果によって真名に握り潰されない為にあえて黄金の矢を利用した使い方をしたのだ。
 そうすれば、己は死ぬと思っている真名は、避けようとする魔拳の力に全力をもって抗うであろうと。
 だから秘密とさせてもらったのである。
 
 「少し眠れ。真名」

 そう言われ、少しづつ意識が遠くなる。
 しかし、眠る訳にはいかない。
 真名にとって、まだこの後、最後の試練が残っているのである。
 そう、”サガ”という最後の試練が……。 
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