女神と星座の導きによりて
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星20 城戸邸の日常2
昔々、ある所にお爺さんと、お婆さんが住んでいました……。
おしまい!
「はぁ?なんだその昔話。短っ!おれの知ってる昔話じゃないぞ。山で竹切ったり、川から桃が流れてくるんじゃねーの?」
少年三人とまさかの沙織までうんうんと頷いています。
実際に今も昔もお爺さんお婆さんだけで暮らしてるご家庭はあるんですよ!
「君達が暇だっていうから私が昔考えたお話してるのに、なんという言い草」
そう、ある日の昼下がり、花園でお世話していたら沙織と少年達四人が来て、いきなり、
「おかあさま、何かお話を聞かせてください」
「おれ達が知らないような話だったら尚良し!」
突然の無茶ぶりである。
仕方ないので昔、聖域に居た頃にぼーっとして口に出していた昔話(自作)を語って聞かせてみる事にしました。
いやー、意識しないで語っていたものだからデス君に
「桃食うのは分かるが、中身の赤ん坊見て”あら、美味しそう”とかなんで、そんな展開になるんだよ!?おかしいだろ!何より最初の所でだ……言わせてもらうがな!爺さんと爺さんって、婆さんは何処に行った!?言葉使いも変だぞ!オカマか!!」
という総ツッコミにより中断した昔話がありまして……。デス君、君は日本の昔話知ってるんですか?すごいですね。
ふむ、今度はその話をしてみましょうか……。
「今度はまた違った昔話しますけど、聞きます?」
「あ、いや、いい。大人しく鬼ごっことかしてるよ」
ふむ、不評でしたか。ならば仕方ないですねぇ。
ふとスカートの裾を引っ張られてその先に居る子に目を向けました。
「おかあさま、おかあさまが良ければ、瞬や皆にあの青いお花を見せてあげたらどうかしら?」
「「「青いお花?」」」
瞬と紫龍、氷河は少し興味を惹かれたのかユニゾンして聞いてきました。青いお花……恐らくキュアローズの事でしょう。実際青い花なんて珍しいですからねぇ。
「お嬢さん、悪いけどおれ、パス。花とか、興味ねーもん」
後頭部に手を回して組んだ格好になった星矢がそう言ってきました。
沙織が悲しんでいたら何かを持って(主に私の花園の花)行って慰めている君に興味がないだとぅ?
「あ……そうなの?ごめんなさい、星矢。よくお花を持ってきてくれるから、興味があるのかなって思って……」
しゅんっと少し顔を伏せてしまう沙織。
この反応は喜んでくれると思って言ったみたいですね。しかも本命の男の子は興味がないという。す、すれ違いですかー!?
星矢の方をチラ見すると、氷河と瞬に肘で小突かれてますね。
それで、つまんねーって顔から、あ、ヤバいって顔に変わります。うん、うちの大事な女神(娘)を悲しませてんじゃねーですよ?
━━━━━真名。
おや?
━━━━━アイオロス、どうかしましたか?
━━━━━今、沙織お嬢様の悲しみに満ちた小宇宙を感じたのだが……。
…………。
━━━━━アイオロス、今からでも遅くないです。沙織に”おとうさま”呼びを復活してもらってはいかがでしょう?
━━━━━……何故だ!?
いや、多分純粋に心配して聞いてきたのでしょうけど、タイミングが……。
━━━━━まるで親ばかみたいな感じでしたので……つい。
━━━━━お、親ばか!?
「うっ。あ、あー、興味はないけど見た事ない花ならすこーし。うん、少しだけ気になるかなー?な、なんて……」
今更ながらマズイと思ったらしい星矢。
でも、そのさっきの言葉の撤回を聞いた沙織は
「本当?嫌じゃない……?」
伏せていた顔を上げて星矢を見つめてます。少し目が潤んでますね。
「え、えっとだな。う、うん……いや、じゃない」
そう星矢の”いやじゃない”を聞いて花の蕾が大輪で咲いたの如く輝かしい笑顔を、星矢に向けた沙織は心底安心したという感じです。
しかし、沙織よ。お主、天使から小悪魔にジョブチェンジしてませんかね?
ほら、星矢ったら美幼女である沙織の輝かしい笑顔を見て赤面して固まってますよ。
━━━━━今度はどうした!喜んでいるようだから心配はしていないが……。
いえ、貴方がどうしたですよ。
━━━━━ただ単に、お友達の言葉に一喜一憂してるだけですから。大丈夫ですから。
━━━━━そ、そうか。
アイオリアを育ててましたから、私より子育てとか先輩なのに、沙織に関しては過保護というか……まぁ、沙織はアテナなのだから仕方ないですけどね。
過保護なんて通り越して元々信仰対象ですから、当たり前なんですが……。
何故かアイオロスって沙織に対しての態度が親目線なんですよ。
まぁ、アテナとしてなら改めて敬うでしょうけど。
アイオロスもちゃんと人間の沙織として接してくれているという事ですね。
今は良い事なんですが、アテナとして覚醒したらどうなるのか気になります。多分ですけど、意識を変えて”アテナ”として接するんでしょう。
え?私はどうなのかって?私はボケもツッコミも出来る助言者を目指してますので、アテナの相談役あたりでも務めたいなー……なんて、思ってみたり。
とりあえず、今、それは良いのです。
今、目の前で起こっているおいしい展開を見逃す事はできないのです。はい。
「カメラは……カメラはないのですかー!?ああ、無いのでした。仕方ない、心のカメラで撮るしか!」
「何を撮る気ですか?何を。しかも心のカメラって……」
紫龍の鋭い?ツッコミにハッと正気に戻ります。
せんきゅー紫龍。私は正気に戻った!
「まぁ、とりあえずビニールハウスまで来ますか?その青い花もありますし」
実はこの花園、小さなビニールハウスがあるんです。
そう、まさにキュアローズを作る為の物。だって、誰だって如雨露に血を垂らした水を薔薇にあげてるだなんて気持ちが悪いでしょう?
なので死角になっている目立たない場所にビニールハウスを建ててもらったんですよー。
私の血のせいかは分かりませんが、枯れにくいですけど用心に越した事はないですからね。
「沙織、前にあげた花はまだ大丈夫ですか?」
「はい、綺麗で元気に咲いてますよ!」
沙織にあげているのも実はパラライズローズ。
屋敷内で何かが起こる訳ではないのですが、沙織の室内の警護は私がやっています。でも、私も万能ではありませんので、基本、警備員さんに扉の前で警護してもらっています。
私があの黄色い薔薇に小宇宙を注がない限り麻痺の効果はありません。
何に使うのかって?勿論殺さず捕まえる為ですよ。
普通の強盗や泥棒では入って来れませんが、聖闘士であれば……?
うむ、つまりはそういう事です。
「では、ご開帳~」
ビニールハウスの扉を開けて端に寄り、沙織達を入りやすくさせます。
「わぁ」「おー」「これは……」「すごい」
ビニールハウス内は半分以上がキュアローズです。なるべく品質が良い物をアイオロスに与えたいので改良したりして育ててます。それでもやはりというか聖域育ちには敵わないのですが……。
「これは、バラですか……?」
瞬が私を見上げて質問してきます。
「はい、当たりです」
するとぽつりと呟く声が聞こえました。
「……噂は本当だったのか」
氷河が私をちょっとビックリした感じに目を見開いて見つめてきました。なんぞ……?
「なんだよ。噂って」
「……良い噂ではないぞ」
ため息をつき真っ直ぐに私を見つめて語りだしました。
「”この屋敷には魔女が居る。自分自身の青い血で育てた青い薔薇を使った魔法で、死者を蘇らせようとしている”と……」
ああー、その噂ですかー。
「氷河!おかあさまは魔女ではないわ!噂だってデタラメよ!」
いやー、ほぼ間違いないですし……。
だって、こうですよ?
魔女と言われる力を持っている→黄金聖闘士としての小宇宙の力。
自分自身の青い血で薔薇を育てた→元は赤い血だが、育つ薔薇は青いので勘違いされやすい。
薔薇を使った魔法→必殺技。
死者を蘇らせようとしている→アイオロスの事。本来は死んでいた。
という訳で、何処かで気でも抜けていたのか見られていたみたいで。
実はこの噂って結構前からあったモノでして……。
恐らく一部の私に悪い印象を持ってる使用人さんの人が広めているんだろうと思います。
陰でこそこそされるより面と向かって言いなさい。と言いたいですね。
「沙織、私は気にしていませんから」
「けど、おかあさま」
心配そうにこちらを見つめてくる沙織。うう、優しい子です。
「魔女は魔女でも、私は沙織にとっての魔法使いでいるつもりです」
シンデレラの魔法使いみたいな……ですよ?
「 ! おかあさま……」
なんだか感動した!って顔に書いてありますね。
でも、実は沙織の近くには笑顔にしてくれる男の子が、魔法使い……いえ、今はまだ聖闘士候補が居ますから。
おや、今度は氷河が星矢に肘で小突かれています。
そして、申し訳なさそうに謝ってきました。
「真名さん、ごめんなさい。お嬢さんも、不快にさせてごめん」
「いいえー、気にしてませんので、大丈夫ですよー」
「氷河……ううん、私も言葉がキツかったわ」
三人で謝って解決しました。こういう事は早めに終わった方がいいですからね。
「ほら、二人共。一応私の自慢の一つ。青薔薇を見て行ってくださいな」
「「はい!」」
うむうむ、子供は笑顔が一番ですよ。
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