女神と星座の導きによりて
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星11 マニキュア
どもども、皆さんこんにちは。
今日も聖域幼稚園はっじまーるよー。
「真名真名、”ようちえん”ってなんだ?」
「おや、聞こえてましたか。んーとですね。君達位の年齢で勉強したり、遊んだり、お昼寝する施設みたいなモノですよ」
「「へー」」
幼稚園の説明をするとカミュが無言でビシッと片手を上げました。
「うむ、申してみなさい」
「その”ようちえん”とは、わたし達と一緒で小宇宙の訓練もするのですか?」
おおっと、そこ聞いちゃいますか。うーむ、とりあえず正直に言いますかね。
「いいえ、小宇宙訓練はしませんね。もっと詳しく説明しますと、私達が普通に出来る事をするんです。コミュニケーション能力や生活力、言葉使いや、簡単な書き取りに、足し引きとか。まぁ、戦士としての戦い方以外の事を学ぶ感じですね」
「「おおー」」
「もしかしたら、貴方達が成長して弟子を取る事になったら、教える様になるかもしれませんね」
特にカミュとか、カミュとか。後、アルデバランやデス君あたりとか。
「はい!」
今度はミロが片手を上げます。
「はい、申してみなさい」
「”ようちえん”って菓子は出るのか?」
おおう、それも聞くんですか。
「うーん、そうですねぇ。記憶違いでなければ、あまり出ませんね。数も少なかったと思います」
「「ええー!?」」
何やら不満な声が聞こえますが……。どうしたんでしょう?
「おれ、修行厳しいし、時々しかお菓子出ないけど、真名のお菓子が食べられないのは嫌だ!」
「おれだって真名の菓子、食えないのやだ!」
「お菓子目当てに修行してる訳ではないのですよ。二人共」
「「わかってる!!」」
「本当にわかっているのかね?」
「でも、菓子が出るとやる気も出て、修行のし甲斐があると思うぞ?」
「「アルデバランが毒されている……!」」
ショックを受けた様に身体が仰け反っているムウとシャカ。
……どういう意味ですか?お二人共?
ちょっと黒くなった私でしたが不意に訓練服の裾を引っ張られました。
「真名、良かったら時間が空いた時、作り方、教えてほしいです」
カミュが遠慮深そうな感じでそう言ってきます。
もしかして……将来の弟子の為に……!?
「ミロを黙らせる時、口に突っ込めば静かになりますから……」
ある意味、切実な動機でしたぁー!!
ミロー!貴方、本当に何してるんですかねー?将来はあんなにも情に篤く、実直な性格の為に曲がったことを嫌い、一度認めた相手に対しては強い信頼を寄せる……まさに番長?兄貴?そんなカッコイイ男になるのに、うーむ、どうしたらあんな感じになるんでしょう?謎です。
「おや、カミュ、貴方、その爪はどうしたんですか?」
私がそういうとサッと両手を背中に隠してしまいましたね。
さっき見た時、指先は赤くなり、爪が割れていました。
おお、そうです。
「カミュ、訓練が終わったら私の宮に来なさい」
「え……、はい」
そんな不安な顔しなくても、取って食べる訳ではないのに。
仕方ないですねぇ。
□■□■□■□■□■□■
夕方になり、皆、十二宮に戻るのですが、双魚宮にカミュとミロを一緒に連れてきました。(ミロはカミュが気になって一緒に来たみたいです)
あ、ちなみにディーテは少しコロシアムでデス君とシュラの三人で残るそうです。何か企んでないでしょうねぇ?っと聞いたら、
「へっ、お前じゃないんだから、そんな訳あるかよ」
と、カニさんが何か申していましたので、キャメルクラッチを食らわせても問題ないですよね☆
まぁ、そういう事で、二人を居住部屋に招き、椅子に座らせてお茶を出します。
本当はジュースを出してあげたいのですが、ないので出せません。
とにかく目的の物を取りに二人から離れます。
自分の私室に入り、机の引き出しからマニキュアを出します。
何故、そんな物を持っているのか。
本当はディーテの私物でした。なんでも、
「間違って買ってしまった。姉さん、使う?使わないなら捨ててもいいよ」
そう言って。
変な所で素直ではない弟弟子ですが、そんな優しい所があるのを見ると和んでしまいますね。
結局もらったはいいのですが、使わないで取っておくだけだったので、カミュにあげようかと思います。折角もらった物です。誰かが使った方がマニキュアも喜ぶ?でしょう。
何故マニキュアをあげるのか。それは爪の保護の為です。
本当はネイル美容液などを塗った方が良いのですが、無いよりマシでしょう。
カミュに桶に入れたぬるま湯で手を洗ってもらい、清潔にして、手を差し出してもらいます。
やっぱりというか、指先はひび割れが酷く、真っ赤になっていました。特に人差し指が酷いです。
「まずは、指先の治療ですね。ちょっと待っててください」
私はカミュにそう言うと、改めて離れ双魚宮の裏にある花園に行き、隅に鉢植えで植えてあるアロエを切り取り、居住部屋に戻ります。
そして改めてもう一回手を差し出してもらって、アロエの切り口を指先に擦り付けます。カミュは無表情ではありますが、痛いのか、手が震えています。
我慢しているのでしょう。偉いですよカミュ!
一通り塗り終わると、今度はヒーリングをかけます。
「なー、真名。葉っぱの汁付けるより、最初からヒーリングかけた方が早く済むんじゃないのか?」
なんでなんでと、ミロが聞きたがりだしました。
「それもそうなんですが、それだと自然治癒力が弱くなってしまいますからね」
「しぜんちゆりょく?」
「身体が持っている本来の防御、免疫、再生機構などによって病気が治る事ですよ。怪我をするとカサブタが出来るでしょう?あれも身体が自分の力だけで傷を癒そうとしているという事です」
「そうなのですか」「おー」
うむうむ、これでまた一つ賢くなりましたね、二人共。
「え、じゃぁ、その葉っぱなんだよ。なんか意味あるのか?」
「ちゃんとありますよ。これはアロエといって、”医者いらず”と言われるほど万能な植物でして、古くから色々な人達の生活に役立てられてきたんです。
そして、この切り口の液を使う事で自然治癒を促しているんです。ヒーリングの効き目も良くなりますので使ってるんですよ。まぁ、凍傷には軽い症状のモノしか効きませんが、無いよりはマシです」
「そうなんですね」「おー」
ふむふむと頷き、納得するカミュと感心しているミロ。
「ちなみに、食べる、飲む、塗るといった様々な方法で使われます。今度、アロエヨーグルト作りますね。美味しいですよ」
「楽しみにしています」「おー!」
ミロ、気のせいじゃなければ「おー」しか言ってませんよ……。
「でもカミュ、貴方、こんなになるまで訓練していたのですか?どんな技です?」
「……”カリツォー”という、相手の動きを封じる技です」
ああ!カリツォーですか!なるほど、確か人差し指に小宇宙を集中させて放つんでしたっけ?だから人差し指が一番酷いんですね。納得です。
……あれ?カミュってこの技使えるんでしたっけ?うーん、本当にうろ覚えなので確信はないのですが、使っている所無かったような気が。氷河だけですよね?あれ?
……まぁ、良いのです。多分使う所が無くても習得はしていたのでしょう。じゃなかったら、氷河が知ってるはずないです!流石に氷河オリジナルの技ーな訳ない……ですよね?
とりあえず、さっさと済ませてしまいましょう。塗るマニキュアの色は赤。カミュの髪も夕日の様な真っ赤な色なので似合っていると思うんですよね。
最初は恥ずかしがっていましたが、塗り終わってマジマジとマニキュアを塗った爪を見つめて
「ありがとうございます」
と、言ってくれて、「あげますよ」って言うと遠慮してましたが、私が強引に渡すと観念した様にもう一度お礼を言ってくれました。そして、カミュはミロと宝瓶宮に帰って行きました。
……後でディーテにマニキュアのお礼と、勝手にあげちゃった事の謝罪をしなければっと思いながら、双魚宮の居住部屋に戻るのでした。
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