願いを叶える者(旧リリカルなのは 願いを叶えし者)
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この世界に原作なんて無かったんだよ…
引き続いて公園。
女学生、水嶋奈央から話を聞く。
「実は…」
「なんだって!?」
「まだ喋ってねぇよ」
あ、言うのやめようかなって顔してる。ふざけるのやめとこ…。
「この世界…転生者に支配されてるんです」
は?転生者に支配?
あのふざけた青服共の事か?でも世界が違う…?
「そのせいなのか、原作とか無いんですよ…」
「原作って…リコの世界にあったみたいな?」
「そう。原作はどの世界にも存在する筈だけど…」
「いえ、確かに存在はするんです。つい最近まではあった筈なんです。
でも、工藤新一が江戸川コナンになってから、何も起きないんです」
「んなことないんじゃないか?昨日だってデパートで強盗あったし」
「そうじゃないんです。私が知る限りではデパートで事件なんて日常茶飯事です。
私が言いたいのは、コナンの世界で当たり前の事が起きてない…いえ、無くなってるんです」
話が見えん。当たり前が無くなる?
転生者が何かしたって事だろうが…。
「例えば何が無くなったの?」
「小さくなった工藤新一は、毛利探偵事務所に住むことになるじゃないですか」
「そうだね。そこから話が始まるといっても過言じゃない」
「でも、そもそも毛利探偵事務所はやってないんですよ」
は?なんで?
「そもそも、その話を持ち出す筈の毛利蘭が…暴行で転校してるんです…」
「うっそだろ」
「しかも怪盗キッドこと、黒羽快斗のいる高校にですよ」
「うっそだろ」
「工藤新一は小学校ぐらいから毛利蘭を怖がってたみたいで、でも親はそれを知らなくて。
聞いた話だと、幼稚園の交流会で中学生の彼らが備品を壊して、それを見た園児が一斉脱走。
そのことについて話し合った結果…」
「転校していった、と」
「いえ、謹慎です」
「へ?」
「その場には鈴木園子もいたみたいで、3人揃って停学だったそうです。
3人の親はそれぞれに話し合って、園児とその家族に謝罪を入れていくことを決めたらしいんですが、毛利蘭だけは自分は悪くないと、工藤新一やその母である工藤由紀子に当り散らした挙句、家庭的な問題が浮き彫りになって一番最初に泣き出した女児の家に武力凸かまして…警察沙汰に」
「はいストップ。
質問。破壊された備品て何ですか?」
「机です。この世界、前世の世界よりも学術備品はかなり頑丈に作られている筈なんですけど、手刀で叩き割ったそうです…」
この世界の基準は知らんが、中学生の、それも女が?
…転生者…憑依者か?
「凸られた親子は無事だったの?」
「追い詰められた親子は毛利蘭の攻撃を受ける筈でした。
でもそこへ工藤新一が割って入り、親子を庇ったんです」
「主人公カッケェ」
「それでそれで?」
君たち、楽しむんじゃない。真面目な話だぞ。←ブーメラン
「毛利蘭は放心、後に駆けつけた警察に逮捕され、三日間の拘留後、転校しました。
親子は心に深く傷を負い、引っ越していったそうです。
あ、でも工藤新一とは今でも交流があるらしいですよ?
そして、庇った工藤新一は…攻撃を受け止めた足に麻痺が発生し、歩くのも不自由なそこにあるだけの脚部を持った障害者になってしまいました。小さくなっても変わらず、たまに見かけるだけで悲痛なほどに、元気が無くて…」
人体に麻痺を起こすほどの攻撃…。
「なぁ、その毛利蘭ってやつ…」
「はい。間違いなく憑依者です。それも、転生の」
「転生者とは違うの?」
「転生者は特典を貰ってオリジナルな身体を持って世界に生まれ落ちる。
逆に憑依者は生まれ先が定められ、望んでいようがいまいが成り代わりの形で生まれ落ちる。
この憑依は憑依者に最も波長の合う人物に成り替わる事が多く、突発的な事が良く見られる。気がついたら、とかな」
「じゃあ…転生憑依って…」
「特典を貰いつつ、憑依先を自身で定め、転生を果たした者の事を言う。
憑依先の魂を自身の魂と融合させ、一つになった魂の奥底へと封じる…まぁ乗っ取りだよな」
「…まって!中学で毛利蘭が転校したのなら、工藤新一が小さくなる事件は発生しないんじゃ…!」
「はい。そして彼を幼児化させたのが、転生者なんです」
「原作厨ってやつか」
「…はい。ここで先ほどの、転生者の支配に繋がるんです。
彼らは徒党を組んで、一種の組織化を果たしてるんです。
彼らの言い分は、これまでのことを鑑みて、原作を壊すなと言うことなんでしょうけど…」
「初っ端から壊れてたら意味がない」
「そうです。そこで無理矢理原作を始めようとした彼等の内1人が、工藤新一を能力で幼児化させ、今に至るんです」
そこまでやるか普通…?
つーか徒党組むとか、それこそ面倒くさい案件じゃねぇか。
「…」
「どしたの?」
「私は、私も…原作を変えようとしたんです。
今から7年前の十一月七日…萩原研二って言う人が殉職する未来を変えようとしました。
でも、当日に助けようとして…」
「邪魔された、と」
「はい…。爆弾解体に、偶然鉢合わせたように見せかけて、完全解体を促して成功しました。
でも…見た限り魔法使い系統の転生者がフロア一帯を爆破したんです」
「マジかよ…」
「ありえない…」
「…」
「私は、終わったものと思ってその場から逃げていたので、爆発に巻き込まれることはありませんでした。
でも、萩原さんは…」
彼女は泣き出す。
他にも、松田純平、諸伏景光、伊達…ニキ?を救おうと奮闘したが、結果は同様、転生者が現れて原作に忠実な形で殺されたそうだ。
そもそもどう言うわけか、メイン的な敵役であった黒の組織は存在せず、寧ろそこいらで見かけるほどに善行振りまいているそうだ。
「うっそマジで!?どーなってんの!?」とは蒼也の言。
その度にドンパチやらかして、銃声やらが絶えない区画があるらしい。
彼女が貰った特典は未来予知と原作の大まかな知識。
寧ろそれで巻き込まれなかった事が幸いだ。
「もう、この先に救おうとする人も、きっと奴らに邪魔されて殺される…なら、私がこの世界に来た意味なんて…!」
救済を胸に転生した彼女。
その救済を阻止されれば、存在意義が消失するのは確実だ。
ならばもう、生きている意味はないと、先ほどの死にたいに帰結するのだろう。
「ユウジ…」
「わぁってるよ…。ただなぁ…」
「何かあるの?」
「転生者の面倒なところは何の力を貰ったのか、パッと見でわからないところだ。
周到な奴ほど隠そうとするし、その力が便利であればあるほど、対処が面倒になってくる。
世界観を無視した能力なんて、一般観衆の側でドンパチやらかすわけにも行かん」
「…いつかやったみたいに、能力を還元すれば良いんじゃないの?」
「それが一番手っ取り早い。が、あれは相手が慢心しまくってたからできた事だ。
先ほど徒党を組んでいると言った。ならばそれなりの頭脳者が居ると考えるべきだ」
世界の記憶にはそんな情報はない。
転生者に対してだけ、記憶に残す事が出来ないらしい。
記憶から乖離している時点で、世界が揺らぎ始めているのか。
「取り敢えず何人居るか、目的の正確な情報、能力の詳細、何でもいいから入手せにゃならんのは確かだ。
じゃないと、俺達はともかく理子が危険だ」
「…!私だって戦えるよ?」
「相手が世界的な標的ならば、こんなことは言わない。
だが今回の敵は転生者だ。
中には俺でさえ相手にしたくない輩も存在する。会ったこと無いけど。
そう言った輩の対処に乏しいお前が、今のところ一番危うい事を理解してくれ」
「…リコは、足手まといなんだ」
「アホ言え。お前は俺の属性騎士だぞ。戦いだけがやる事じゃ無いってだけだ」
「りおりおの護衛」
「大正解。話を聞く限りでは、今一番転生者に警戒されているのは彼女だ。
守護役がいる」
「え?あ、あの…」
「戸惑っているところ悪いが、もう決定事項だ。
世界的脅威だと判断した時点で、奴らの能力は没収後にそれぞれの神へ還元する。
まずはやる事とその順番を決める事からだ」
「了解」
「わ、わかりました…でも…」
「?」
「私の特典は役に立たないし…」
「あぁ、そう言えば聞いてなかったな」
「何を?」
「アンタの…水嶋莉央の願い事を」
「ね、願い…ですか?私は…」
「願いは至ってシンプル!」
「あぁ!一言言葉にするだけだぜ!」
「リコ達は、力になるよ!」
なんか、善意の押し付けしてるみたいな気分になってきた。
でもいい空気だし、何も言わないでおこう。
「…お願いします!助けてください!」
「承った」
「水嶋さん…?」
「あ、主人公」
「「「へ?」」」
公園の入り口に松葉杖の少年が立っていました。ちなみにメガネはかけてなかった。
後書き
と、言うわけで黒の組織は存在せず、別の組織を形成。
警察に帰属する、ホワイト組織として日夜奮闘遁走している酒メンバー。
次回更新は2日後。なるべくサクサク行きたいところではありますが、仕事やらゲームやらゲームやらゲームやらに忙しく、手がつけられないので日時的猶予を頂きたい。
お楽しみにお待ちくださるようお願いします。
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