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英雄伝説~灰の軌跡~ 閃Ⅲ篇

作者:sorano
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外伝~ミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエン~後篇

~クロスベル帝国領・オルディス・カイエン公爵城館~

「え…………」

「!?まさか…………そんな幼い頃から2年前の内戦を読んでいたというの!?」
ミルディーヌ公女の話にその場にいる多くの者達が血相を変えて驚いている中キュアは思わず呆けた声を出し、ユーディットは信じられない表情でミルディーヌ公女に訊ねた。
「はい、叔父の本質にカイエンの財力。他の四大名門やRFグループの状況…………クロスベルや共和国、メンフィル帝国との関係、そして鉄血宰相ギリアス・オズボーン。ふふ、”結社”や騎神”、”六銃士”なんていう不可思議や想定外の要素もありましたが…………革新派の台頭を抑えきれない貴族派が力ずくで押さえ込む局面は見えました。そしてそれがメンフィル帝国との戦争へとまで誘発し、その結果カイエン公―――叔父クロワールの破滅とメンフィル帝国に敗戦したエレボニア帝国の衰退で終わる事も。」

「……………………2年前の内戦や”七日戦役”の件まで読んでいたと言っていたが…………―――その口ぶりからして”北方戦役”や鉄血宰相達の野望すらも読んでいたのか?」
ミルディーヌ公女の話にその場にいる全員が驚きのあまり絶句している中リウイは真剣な表情で訊ねた。
「はい。国家総動員法に、メンフィル・クロスベル連合との戦争、帝国で何かの”呪い”が発動する可能性、そして戦争の結果”オズボーン宰相達がリィン教官達やリウイ陛下達に討伐され、彼らの計画は必ず途中半ばで失敗に終わり、その後オズボーン宰相達を失い敗戦した事で絶望に包まれたエレボニア帝国は軍人だけでなく、民間人も含めて数十万規模という夥しい犠牲者を出し、戦争を勃発させ、挙句の果てには敗戦の責任を取る必要があるアルノール皇家はエレボニア帝国の皇家として断絶すると共にユーゲント皇帝陛下とセドリック皇太子殿下を生贄―――つまり、処刑せざるを得ない状況に陥り、新姫様を含めた残りのアルノール皇家の方々は姫様の件で縁戚関係となったシュバルツァー家の慈悲によってシュバルツァー家の故郷であるユミルの下で隠遁生活を送る事になり、皇家を失い、多くの軍人や貴族、民間人を失ったエレボニア帝国はエレボニアの新たな皇への野心、貴族、皇族といった上流階級への恨み、オズボーン宰相の併合政策によって生まれたエレボニアへの憎悪等と言った様々な要素によって2年前の内戦とは比較にならない泥沼の内戦へと発展し、その果ては西ゼムリアの地を平和に導くという名目で西ゼムリア同盟を結んだ国家であるリベール、メンフィル、クロスベル、レミフェリアの連合軍と連合軍に協力する七耀教会と遊撃士協会によって鎮圧され、鎮圧後のエレボニアの地は各国に分配され、それらの出来事によってエレボニア帝国は滅亡する”可能性まで”昨年末の時点で全て見えていますわ。”」

「そ、れは……………………」

「ゲルドさんと同じ未来予知…………いえ、違うわね。」

「そうね、多分ミュゼは因果―――いえ、”盤面”が見えるのでしょう?」
説得力のある今後起こりうるであろう未来を想定したミルディーヌ公女の能力にイリーナは信じられない表情をし、エクリアと共に落ち着いた様子で推測したレンはミルディーヌ公女に確認した。
「ええ、ただわたくしには”盤面”が見えるだけです。現在の局面、そこに至る過去と無数に展開し、うつ未来の局面が。―――何よりも、それを現在、動かしている”何者か”の狙いが。”盤面”を動かしているのは間違いなくオズボーン宰相。オリヴァルト殿下もそれに気づき、色々な手を打たれていますが………あと一歩、宰相の深い所までは見通せていないように思っています。―――その証拠に並行世界の未来では”黄昏”は起きてしまい…………オリヴァルト殿下達は爆殺されてしまったとの事ですから。」

「ミ、ミルディーヌ………………」

「……………………まさか貴女にそのような”異能”が備わっているなんてね………………」
意味ありげな笑みを浮かべて説明をしたミルディーヌ公女をキュアは”化物”を見るかのように恐怖も混じった表情でミルディーヌ公女を見つめ、ユーディットは重々しい様子を纏って呟いて静かな表情でミルディーヌ公女を見つめた。
「―――なるほど。本来ならば他国の皇族である俺達には決して明かすべきではない自身の能力―――つまり、”切り札”をあえてこの場で判明させた理由は自身がリィンと縁戚関係になる事でリィン―――シュバルツァー家を通してメンフィルと盟を結ぶことで我らメンフィルにミルディーヌ公女自身の能力の有用さを売り込み、自身の能力の活用と引き換えに今後メンフィルに求めたい要望を通す為と言った所か?」

「あ……………………」

「フム…………確かに今聞いたミルディーヌ公女の”異能”の有用さを考えると、どんな要望を今後余達メンフィルに出すかわからんが、余達メンフィルがその要望に応じる十分過ぎる”対価”となるじゃろうな。」

「そうね。内政や外交関係もそうだけど、戦争でも大いに役立つでしょうね、ミルディーヌ公女の”盤面”を見通す”指し手”たる”異能”は。正直言って、現時点でもレンの異能も遥かに上回っているわ。―――そしてそれは”姫将軍”であるエクリアお姉さんが持つ知識でも敵わないでしょう?」

「何度も言っているようにその呼び方は止めて頂きたいのですが…………それはともかく、”知”の能力で言えばミルディーヌ公女は最高峰クラスで私どころか、メンフィルに所属している優秀な参謀達、謀略や策略に長けているルイーネ皇妃陛下やルファディエル警視すらもミルディーヌ公女が持つ能力に対抗するには厳しいかと。」
リウイの推測を聞いたイリーナは呆けた声を出し、リフィアと共にミルディーヌ公女を静かな表情で見つめたレンに話を振られたエクリアは疲れた表情で溜息を吐いた後表情を引き締めてミルディーヌ公女を見つめた。
「フフッ、今の私の話を聞いてすぐにそこに気づくとはさすがは異世界の”英雄王”たるリウイ陛下ですわ♪」

「世辞はいい。それよりもミルディーヌ公女、確かに公女の能力はメンフィルにとっても有用であることは認めるが…………公女とて人間だ。その事実が公女の能力にとっての唯一の”欠点”であることには気づいているのか?」

「ええ、恐らくリウイ陛下は欠点―――”寿命”の事を仰っているのですわよね?確かに陛下の仰る通り私は寿命が存在せず、悠久の時を生き続けるアイドス様のような神々やベルフェゴールさんのような”魔神”でもなければ、陛下達のような長寿の種族と違い、病気や事故等なくても後せいぜい7,80年くらいしか生きられないただの”人間”ですわ。ですが、異世界の女神であるアイドス様に見初められたリィン教官と私が結ばれる事で、私の能力を今後永遠に活用できると思われますが?」

「え…………それって一体どういう…………」

「!!ミルディーヌ公女殿下―――いえ、ミュゼさん。その口ぶりからするとアルフィンから兄様は将来アイドス様―――”慈悲の大女神”の”神格者”になる事も聞いているのね?」
リウイの指摘に静かな笑みを浮かべて答えたミルディーヌ公女の答えの意味がわからないキュアが呆けている中、既に察しがついたエリゼは真剣な表情でミルディーヌ公女に訊ねた。


「し、”神格者”って神々から”神核”を承る事で不老の存在となるあの…………!?た、確かにリィン様の婚約者の一人であるアイドス様は”古神”だから当然、リィン様を”神格者”や”使徒”にできるだろうけど…………それがどうしてミルディーヌの寿命の件まで関係する事に…………―――あ。」

「なるほど…………貴女が”神格者”となったリィンさんの”使徒”となる事で、”寿命”という貴女の能力にとっての唯一の”欠点”を補うという事ね?」

「はい♪姫様の話ですと”神格者”という存在も”使徒”が作れる為、リィン教官の伴侶であるエリゼさんや姫様達も将来は愛するリィン教官を永遠に支え続ける為にリィン教官の”使徒”になるとの事ですから、当然私もリィン教官の伴侶にして使徒の一人として、リィン教官を永遠に支え続けますわ♪」
エリゼの話を聞いて驚いたキュアは戸惑っていたがすぐにある事に気づき、ユーディットに指摘されたミュゼは微笑みながら答えた。
「クスクス、なるほどね。リィンお兄さんと結ばれるからこそできる”反則技”だものね♪」

「そもそも、”神格者”もそうですが”使徒”をそんな手軽な感覚で増やすのは色々な意味でおかしいのですがね…………」

「それに関しては本人達が納得していたら、別にいいじゃろ。現にプリネやレンも将来はいつか”神格者”に至る事を目指すレーヴェや”魔神”のエヴリーヌの”使徒”になるつもりだと事だしな。第一それを言ったら、エクリアよ、お主の”主”であるセリカがその手軽感覚で”使徒”を増やしている筆頭じゃろうが?」

「実際にセリカ様はゼムリア大陸に来て1年も経たずに”使徒”を増やした事もそうですが将来エステルさんの娘として生まれるサティア様も”使徒”にしたとの事ですし、更にセリカ様の新たな”使徒”になる事を希望する方も現れたとの事ですものね…………」

「フフッ、”星見の塔”でセリカ様の圧倒的な強さや存在に惹かれたヴィータお姉様ですわね♪」
小悪魔な笑みを浮かべるレンに疲れた表情で指摘するエクリアの言葉を聞いたリフィアは苦笑しながら答えた後エクリアに指摘し、リフィアの指摘を聞いたイリーナは苦笑しながらエクリアを見つめ、ミルディーヌ公女は小悪魔な笑みを浮かべて指摘し、その様子を見守っていたリウイ達は冷や汗をかいた。
「ううっ、返す言葉もないわ…………」

「エ、エクリア様…………―――コホン。貴女と兄様が結ばれればカイエン公爵家関連以外でも様々な”利”がある事は理解しました。最後に一つ―――いえ、二つ聞かせて下さい。」
疲れた表情で片手で頭を抱えているエクリアを表情を引き攣らせて見つめていたエリゼだったが気を取り直してミルディーヌ公女を見つめて問いかけた。


「なんなりと。」

「先程貴女は自身の切り札である”能力”を私達に披露しましたが…………それは陛下達も仰ったように、リウイ陛下達メンフィル帝国に対する売り込みですか?それとも私―――いえ、シュバルツァー家に対する売り込みですか?」

「フフッ、正確に言えば私の事をお疑いになっているエリゼさんに対する”誠意”を示す為ですわ。」

「エリゼに対する”誠意”じゃと?一体どういう意味じゃ?」
エリゼの問いかけに答えたミルディーヌ公女の答えの意味がわからないリフィアは眉を顰めて訊ねた。
「それに関しては恐らくミルディーヌ自身が説明したように、ミルディーヌは”盤面”を見て自分がどう”打つ”事で自分にとってベストな未来へと導く事ができるのですから、当然それはリィンさんとの結婚の件にも適用できますから、自身の能力をエリゼさんにもこの場で披露する事でリィンさんを含めたシュバルツァー家に対する二心はない事を示す為かと思われますわ。」

「さすがはユーディお姉様ですわ♪―――折角の機会ですし、エリゼさん―――いえ、シュバルツァー家に対する更なる”誠意”として、私が現時点で見えるオズボーン宰相達を廃した後に起こりうる可能性が浮上するリィン教官に迫る危機をお伝えしますわ。」

「オズボーン宰相達を廃した後に起こるかもしれない兄様に迫る危機の可能性…………?―――ミュゼさんは兄様に関して一体どのような”盤面”が見えたのですか?」
ユーディットの説明に微笑んだミルディーヌ公女は意味ありげな笑みを浮かべてエリゼを見つめ、ミルディーヌ公女の答えにその場にいる全員がそれぞれ血相を変えている中エリゼは真剣な表情でミルディーヌ公女に訊ねた。
「―――七大罪の魔神の一柱、精霊王、竜の姫君、異世界の女神を伴侶にし、他にはエレボニア皇家、クロスベル皇家、RF(ラインフォルトグループ)、ディアメル子爵家、カイエン公爵家からもそれぞれ伴侶を迎える事で縁戚関係となり、更には”騎神”という古代遺物(アーティファクト)同然の存在を自身の”信念”の為に使用し続け、将来は広大なクロイツェン統括領主になる事が内定しているリィン教官の存在を危険視した方々が、リィン教官の暗殺を図る事ですわ。首謀者は…………古代遺物(アーティファクト)の管理は教会であることを絶対とする考えを持つ七耀教会の封聖省や僧兵丁の一部の過激派といった所でしょうか。」

「!!」

「そ、それは…………」

「…………確かにリィンさん自身は意識していないとはいえ、彼は魔神や女神と言った”超越した存在”と”結婚”という形で盟を結び、更にはエレボニア、クロスベル皇家、ゼムリア大陸でも最大規模の導力器メーカーやエレボニアのトップクラスの四大名門の一角とそれに次ぐ貴族の家とも縁戚関係を結ぶことになっている上”騎神”の乗り手とリィンさん自身も”公爵”に内定しているという事実―――個人でありながら権力、戦力共に”国家クラス”を保有するリィンさんを危険視する人物が現れてもおかしくないわね…………」
意味ありげな笑みを浮かべたミルディーヌ公女の予測にエリゼは目を見開き、キュアは不安そうな表情になり、ユーディットは複雑そうな表情で呟いた。
「ふふっ、ちなみに暗殺の結果は勿論リィン教官達に”返り討ち”にあって”失敗”という形で終わって首謀者は後にメンフィル帝国からの”報復”によって2度と逆らえないような反撃を受ける”盤面”まで見えていますからご安心ください♪―――それよりも、陛下達はあまり驚かれていない様子からして、先程私が口にした”盤面”もやはり想定はされていたようですわね?」

「…………―――ああ。光と闇―――”全ての種族との共存”を目指す我らメンフィルは今までも教会関連で、様々な争いや問題を経験している為、ゼムリア大陸の権力者達もそうだがゼムリア大陸唯一の宗教であった七耀教会がリィンの存在を危険視する事は既に想定済みだ。」

「教会の関係者―――特に信仰する神々や教会の教えに盲目的な者達程、性質が悪く、危険な存在であることは今までの経験でわかりきっておるからの。当然、七耀教会にも常に目を光らせておる。」

「実際、4年前の”異変”で”輝く(オーリオール)”をリウイと共に破壊したエステルさんも七耀教会で問題視されて、”外法認定”にされかけた事もありましたものね…………」

「……………………」

「うふふ、レンとしてはミュゼが見えたレン達メンフィルにリィンお兄さんの件で”報復”を受けた七耀教会がどんな事になるのか、個人的には気になるわね♪」
ミルディーヌ公女の指摘に対してリウイとリフィアは重々しい口調で答え、イリーナは複雑そうな表情で呟き、リウイ達同様”教会”の”闇”をよく理解していたエクリアは目を伏せて黙り込み、レンは意味ありげな笑みを浮かべていた。
「―――以上のように、私がいればリィン教官―――シュバルツァー家に牙を向けたり、陥れようとする者達への”対策”になりますわ。それと同時に、私はリィン教官―――シュバルツァー家に足りない存在を補えることができる存在でもありますから、きっと教官やエリゼさんのお役に立つかと。」

「私達―――シュバルツァー家に足りない存在…………?それは一体どういった存在ですか。」

「それは策略、政略といった上流階級ならば決して避ける事ができない政治上の”駆け引き”に強い存在―――”参謀”ですわ。―――失礼を承知で申し上げますが、そういった存在に適している人物は今のシュバルツァー家に存在していないかと。」

「それは…………」

「フム…………確かに領主として勉強中のリィンは当然として、幾ら余の秘書も兼ねているとはいえエリゼではそういった”駆け引き”をする事はまだ厳しいじゃろうし、かといって他の上流階級出身の者達―――セレーネ、ステラ、メサイアもそういった方面の能力に秀でている訳でもないしの。」

「まあ、メルキア皇女として数十年生きてきたメサイアお姉さんやRF(ラインフォルトグループ)の室長の一人として様々な交渉も経験し続けているアリサお姉さんならある程度の駆け引きはできるかもしれないけど、ルイーネお姉さんやルファディエルお姉さんみたいな事はできないでしょうね。」
ミルディーヌ公女の指摘に反論できないエリゼは複雑そうな表情で答えを濁し、リフィアとレンは納得した様子で呟いた。


「というかその口ぶりだと、自分は腹黒い事を公言しているようなものだとわかっていて言っているの、ミルディーヌは。」

「クスクス、ご想像にお任せしますわ♪―――これで私が今この場で私の能力を明かした理由はエリゼさんに対する”誠意”であることをご理解して頂けたでしょうか?」
ジト目のキュアの言葉に対してミルディーヌ公女は笑顔を浮かべて流した後エリゼに問いかけた。
「………………ええ。それで最後の質問ですが…………―――ミュゼさんは例え政略結婚であろうと、兄様や私達と悠久の時を生き続けてでも兄様を愛し、支える覚悟はあるのですか?」

「勿論その覚悟もできておりますわ。―――私が跡継ぎにカイエン公爵家の全てを引き継がせた後は、爵位も返上し、ただの愛する殿方を支える女性の一人としてリィン教官の御傍でリィン教官を未来永劫支え続けるつもりですわ。あ、勿論リィン教官が望むのでしたら”神格者”となったリィン教官の”使徒”になったお陰で永遠に若々しい肉体となった私の身体をリィン教官に犯してもらって、その結果できるリィン教官と私の子供を何度でも産みますわ♪」
真剣な表情を浮かべたエリゼに見つめられたミルディーヌ公女は静かな表情で答えた後妖艶な笑みを浮かべて答え、ミルディーヌ公女の最後の答えにその場にいる全員は冷や汗をかいて脱力した。
「最後の最後でそんなとんでもない事を平気で口にするなんて、本当にこの娘はもう…………」

「こんな大事な場面でそういった事を言うから、中々人に信用されないんだと思うよ…………?」
我に返ったユーディットとキュアはそれぞれ呆れた表情で溜息を吐き
「………………………………――――――いいでしょう。ミュゼさん―――いえ、ミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエン殿をリィン・シュバルツァーの10番目の伴侶として加える事を現時点をもってリィン・シュバルツァーの正妻予定である私―――エリゼ・シュバルツァーが認めます。貴女の件に関してはアルフィンや兄様の他の婚約者の方々―――セレーネ達は私が説得しておきます。」

「ふふっ、公式の場以外では”ミュゼ”で構いませんわ♪エリゼさんの寛大な御心とご英断、このミルディーヌ、心より感謝致しますわ♪」
エリゼの宣言にリウイ達がそれぞれ驚きの表情を浮かべている中ミルディーヌ公女は微笑みながら答え
「―――ただし、兄様への説得は貴女自身が行ってください。兄様が承諾しなければ、本末転倒ですので。」

「かしこまりましたわ。―――ちなみに”説得の方法”に”制限”はありますか?」

「…………常識の範囲内でしたら構いません。勿論脅迫等と言った犯罪行為は禁じます。」

「ふふっ、愛するリィン教官にそのような事をする疑いを持たれるなんて心外ですわ♪私はただ、姫様やアリサさんのように私の気持ちをリィン教官に知ってもらう為にリィン教官に私の”全て”を捧げるだけですし♪」

「え”。ア、アルフィン殿下とアリサさん、リィン様に自分の想いを知ってもらう為に本当にそんなことをしたの…………!?」

「気にする所が間違っているわよ、キュア…………ハア…………伯爵閣下達に育ててもらっていながら、どうしてこんな女性になったのかしら、この娘は…………」

「クスクス、きっとゲルドが見たリィンお兄さん達の結婚式の未来でリィンお兄さんの結婚相手の一人にミュゼも含まれているのでしょうね♪」

「洒落になっていないぞ…………ハア…………」
ミルディーヌ公女の口から出たとんでもない事実にリウイ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中思わず声を出して信じられない表情で呟いたキュアに疲れた表情で指摘したユーディットは溜息を吐き、小悪魔な笑みを浮かべたレンの言葉を聞いたリウイは疲れた表情で溜息を吐いた。

その後、打ち合わせが終わるとレンは”ミュゼ”に戻ったミルディーヌ公女とエリゼと共に転移魔術でオルディスから去り、リウイ達もペテレーネとエクリアの転移魔術でオルディスから去った―――
 
 

 
後書き
ミュゼの想定にあったリィン達VS七耀教会…………Ⅳ篇も書き切って、暇ができれば番外編という形で書くかもしれません。その場合閃のとある人物にリィンのハーレムフラグが…………(ぇ)
 
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