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ある晴れた日に

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13部分:序曲その十三


序曲その十三

「お餅やお野菜やお肉」
「お豆腐もね」
「卵までありますし。凄いですよ」
「あれあったら他に何も頼まなくていい位」
「というかあれを食べるのに必死になりますよね」
 苦笑いで江夏先生に語る。
「あれを頼んだら」
「しかも物凄く辛いし」
「はい」
 キムチ鍋というだけはある話だった。
「あれを食べた時より暑かったのよ。本当に」
「大変だったんですね」
「しかもウェディングじゃなくて金襴緞子」
「沖縄でですか」
「主人がそれが好きだからって駄々こねて」
 今度は笑みが消えていた。
「ふざけるなって思ったけれどそれで着て」
「倒れませんでした?」
「気力で持たせたわ」
 やはり倒れそうになったのであった。
「何とかね。新婚旅行はそのまま沖縄、あと長崎」
「長崎ですか」
「夏のよ。やっぱり暑かったわ」
 暑い話が続けられる。
「けれどあれね。グラバー園とかあるじゃない」
「あそこから見る海が最高なんですよね」
「そうなのよ。だから許せるのよ」
 くすりとした笑みに戻って田淵先生に語る。
「あの時のことはね。何だかんだでいい思い出よ」
「そうですか」
「それじゃあ今日は大魔神ね」
 飲む場所についての打ち合わせに戻った。
「あそこにするのね」
「北乃さんはあそこにはいないんですね」
 田淵先生はそこを少し気にしているようだった。
「大魔神には」
「いつもスタープラチナらしいわ」
 江夏先生はこう田淵先生に言う。
「あそこの受付やってるらしいわ」
「流石に居酒屋ではいないんですね」
「それはやっぱりまずいでしょ」
 笑ってまた江夏先生に告げた。
「お酒がこれでもかってある場所だから」
「そうですよね。それはやっぱり」
「そういうことよ。目立ってはね」
 実際は皆飲んでいることは公然の秘密だ。この八条町では老いも若きも誰もが酒を浴びるように飲む。当然学生達も付き合いで飲んでいるのだ。
「まずいわよ」
「ですよね。だからカラオケですか」
「あそこもかなりまずいでしょうけれどね」
 これはもうわかっているのであった。
「実際のところは」
「ですね。けれどまあそれは」
「言っても仕方ないことだから。この町じゃね」
「煙草は駄目だけれどお酒はいいんですね」
「それって普通じゃないの?」
 見れば二人の机の上には煙草も灰皿もない。
「煙草は身体に悪いけれどお酒はね」
「心にいいですからね」
「そういうことよ。じゃあ今夜は」
「はい」 
 笑顔で頷き合う。二人は今は自分達のクラスがいいクラスだと思い安心していた。確かにクラス自体は非常にいいものだった。
 この日正道は自分の机に座り何かを書いていた。ギターを抱え時折それを弾いている。そうしながら書いて考える顔にもなっている。
「ここはこうだな。それで」
「ねえ」
 そこに西の女の子達がやって来た。咲が中心にいる。
「何書いてるのよ」
「何ってわかるだろ?」
 顔を見上げてその六人に応える。その間もギターを放しはしない。
「作曲してるんだよ」
「あんた作曲できるの」
「当たり前だろ。ロッカーだぜ」
 こう言いながらまた書く。書いているのは音符で楽譜に書き続けている。
「ロッカーは自分で作曲するんだよ。違うか?」
「っていうかあんたロックだったの」
「一応はな」
 また咲に答える。
「他にも色々と歌うけれどな」
「色々って?」
「バラードだって歌ったり作ったりするしよ」
 それもやるというのだ。
 
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