ある晴れた日に
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12部分:序曲その十二
序曲その十二
「それでね。頼むわ」
「わかったわ。それじゃあ」
「今から用意するから」
早速カウンターの奥に消える明日夢であった。クラスの女組はまずは仲良くその付き合いをはじめた。これは男達も同じですぐに和気藹々としたクラスになった。
「最初はどうなるかって思ったけれどねえ」
「そうですよね」
職員室はどの学校でもおおよそ同じであった。教師用の机が並べられその上には常に多くの本と書類がある。データに関するものが目立つ。そのうちの二つ、横に並んで並べられたその席にそれぞれ座っている黒い服の女と白い服の女が話をしていた。
「意外と上手くいきそうね」
「そうですね。特に女の子」
白い服の教師は上がブラウスとカーディガンで下は同じく白い色のロングスカートである。全体的に清楚な教師らしい格好であり顔立ちも穏やかで気品のあるといった感じの美人だ。黒い髪を後ろでお団子に纏めているのもまた実によく似合っていた。
「八条東の娘と八条西の娘がそれぞれいましたから」
「そうそう」
彼女に応えている黒い服の教師は黒いズボンとスーツだ。ネクタイも黒で何処か男装めいた格好だ。痩せた大人の顔をしており髪は首の付け根のところで切り揃えている。アイシャドーは青である。
「あの二校いつも仲が悪いから。それが気掛かりだったのよ」
「けれどあの娘達がまず仲がいいから」
「あれらしいわ。ほら、北乃さん」
明日夢の名前が出て来た。
「皆で彼女の家に入り浸っているそうよ」
「北乃さんのお家っていいますよ」
「言ったことあるわよね、スタープラチナ」
店の名前も出て来た。
「あそこよ」
「ああ、あのカラオケですか」
「他にも居酒屋大魔神」
こちらも出て来た。
「あそこも北乃さんのお家のお店なのよ」
「あそこもだったんですか」
「確か田淵先生はお酒は日本酒だったわよね」
「はい」
その白い服の教師田淵美紀はその言葉にすぐに答えた。
「確かに好きですけれど」
「私はサワーだけれど」
黒い服の教師はこう答えた。
「どちらにしろいけるわね」
「じゃあ江夏先生」
田淵先生は黒服の教師をこう呼んだ。
「今日は仕事が終わったら」
「そうね。入学式とかも一段落ついたし」
教師にとっては一年の最初の山場が終わった時であった。やはり一息つくことができるかなり貴重な時間であることは間違いない、
「じゃあ。ここはね」
「飲みに行きますか」
「家じゃいつも飲んでるけれど」
黒服の教師江夏浅香はくすりと笑って田淵先生に述べた。
「主人とね」
「御主人とですか」
「主人もよく飲むのよ」
その笑みでまた述べる。
「私が止める位にね」
「そんなにですか」
「田淵先生は確か」
「はい。二ヶ月です」
微笑んで江夏先生に答える。
「結婚してから」
「冬の花嫁だったのね」
「おかしいですか?」
「別にそうは思わないわ。むしろ」
「むしろ?」
「何か幻想的でよさそうな感じね」
こう田淵先生に述べるのだった。
「冬の花嫁って」
「そうですか」
「私なんてあれよ。結婚したのが真夏」
その黒服には夏のイメージはあまりないがどうやらそうらしい。
「色々あって夏の沖縄で結婚式だったけれど」
「どうでした?」
「暑かったわ」
うんざりとした苦笑いと一緒に述べるのであった。
「今まで生きた中で一番ね。暑かったわ」
「そうだったんですか」
「大魔神のあの」
ここで明日夢の家の店のことがまた話に出て来た。
「キムチ鍋よりまだ暑かったわね」
「ああ、あそこのキムチ鍋ですか」
「知ってるのね」
「知ってますよ。量がとにかく凄いですし」
「そうそう。最初三人前かと思ったわよね」
「そうですよね。入っている具だって」
二人共職員室ではどうかという話をそれでも楽しく続けていく。
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