憑依者の英雄譚
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
5話
恩恵を刻んでもらった翌日。俺はギルドと呼ばれる場所
に冒険者の登録をするため向かっていた。
「ここがバベルか」
どこの神話だったかは覚えていないが神々の怒りをかって破壊された塔と言うのが俺の前世の知識だけど。
「まー、世界が違えばある程度の認識の違いとかってあるよな」
そのまま中に入ると受付みたいな場所があった。
「あの、すいません。冒険者登録したいんですけど」
「え?」
あ、なんか驚かれてる。
「いえ、あの冒険者登録をしたいのですが」
「あっ、はい。少々お待ちください」
エルフ?かな耳がとがってたし。でも、なんというか人間みたいな雰囲気もあったような。
「お待たせしました。こちらの書類に必要事項をお書きください」
「分かりました」
用紙を受け取り、必要事項を記入していく。
「書き終わりました!」
「確認の方よろしいですか?お名前はベル・クラネルさん。所属はヘスティア・ファミリアですね。はじめて聞くファミリアですが」
「えっと、昨日できたばかりのファミリアなので。団員も今は俺だけです」
「そ、そうですか。ご家族への仕送りなどはなしで」
それには頷いて答えた。流石に唯一の家族は死にましたなんて今日会ったばかりのヒトに言うのは気が引けるからな。
「確認の方は終わりました。それでは今日より私、エイナ・チュールが貴方の担当アドバイザーをさせていただきます」
「改めましてベル・クラネルです。よろしくお願いします」
「では、今からダンジョンに関しての講義を行いたいのですがよろしいですか?」
「はい!」
そのままエイナさんの案内のもとちょっと広い個室へと向かった。
「では、これより冒険者としての心得とダンジョンに現れるモンスターと言っても上層と少し中層のモンスターについてだけですが」
「あの、エイナさん。その片方の本にはモンスターの名前とか書いてあるんですか?」
「え?あ、うんそうだけど」
「見せてもらって大丈夫ですか?」
確認をとって本を見せてもらう。まあ、本当は魔法を使いたいだけなんだけどね。
「目に焼き付ける」
「!?」
何時も通り目が熱くなるのを感じ、頬になにかができるような感覚が伝わってきた。発動はしてるみたいだしそのまま一気に読み終わす。
「クラネル氏、それは」
「あ」
エイナさんの方をみる。
「…気味が悪かったですよね」
「あ、ううん。違うの!ただ、驚いただけだから!」
「良いんですよ。正直に言ってくれて。事実、この魔法をみたヒトは皆気味悪がりますから」
一度、ここに来る途中で目を使った。それを見たヒトは俺を化け物と呼んで石を投げてきたことがあった。
「クラネル、いいえベルくん」
エイナさんの手が俺の頬をさわる。
「大丈夫だよ。最初に言った通りちょっと驚いただけだから。その魔法がどういったものなのか良く分からないけど、私はカッコいいと思うよ」
「エイナさん。……ありがとうございます」
そのまま俺は頬に当たられている手をそっと掴んだ。
「あの、すいませんでした」
「え、なんで謝るの?」
「そのエイナさんってエルフですよね?エルフと言う種族は潔癖なまでも他人と触れあうことを嫌う種族と祖父から聞いていたので」
「ああ、それなら大丈夫だよ。私は半分はエルフだけど半分は人だから。それにベルくんなら平気だから」
平気って、あれそう言えば。
「エイナさん、いつの間に僕のことを名前で呼ぶようになったんですか?」
「え?えーとなんというか成り行きで」
「そうですか。まあ、名前で呼んではいけないなんてルールはないんですし、俺は気にしませんから」
そのまま気を取り直して講義を続けた。
「はい、ここまでです。最後に確認です。ベルくん、冒険者は?」
「冒険してはいけないですよね?理解はしてます」
「ならいいんだけど。嫌だからね、今日会ったばかりの君が明日死んでしまうなんてことがあったら」
「分かっています」
会ったばかりの俺にここまで親身になってくれるなんてとてもいい人だな。
ページ上へ戻る