ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第52話:Longing
ゼロはある兵器工場に来ていた。
ドップラーの軍団がハンターベースに襲撃をかけたあの日から行方不明だったホーネックからゼロの個人端末にメッセージが送られたからだ。
『隊長…いや、ゼロっ!!俺はずっとあんたを追っ掛けてた…あの日あんたと出会ってからな。だが、それも今日で終わりだよ。俺はあんた以上の“強さ”を手に入れた…あんたを倒して俺はあんたを超える!!ミートン兵器工場で待っ…』
ホーネックの言葉が終わる前にゼロは端末を握り潰してそれを放り投げた。
あれはシグマの最初の反乱が始まる前のことでゼロがハンターとして配属される前のことだ。
ハンターベースに向かう途中でレプリロイド暴走族の喧嘩に出会した。
その時に会ったのが当時レプリロイド暴走族の片側のリーダーであったホーネック。
そのホーネックから攻撃を仕掛けられて一撃で返り討ちにして壊れたチェバルを置いてハンターベースに向かうことになったのは良く覚えている。
そしてそれからしばらくして暴走族から足を洗ってイレギュラーハンターにホーネックが入隊した。
本人はゼロが所属する第17精鋭部隊に入りたいようだったが、高い隠密能力を買われたホーネックは第0特殊部隊に配属されたので、ゼロとホーネックが本格的に交流するようになったのはゼロが第0特殊部隊の隊長となってからである。
ゼロはZセイバーでかつてエックスが戦ったチョップレジスターと同系統の敵であるシュリケインを一撃で撃破する。
直後に工場内にホーネックの声が放送される。
『あのシュリケインを一撃とはなぁ~。やっぱ強えや。やっぱ強え武器を持ってると違うよな。実は俺も同じくらい強え武器を持ってるぜぇ』
「(ホーネック…)」
イレギュラー化した部下に思うことがあるのか、ゼロの表情は何時もより険しい。
『ドップラー様は俺の眠っていた能力を認めて下さり、俺により強力な武器を与えて下さった。負けるのが嫌なら直ぐに帰るんだな。その門を潜ったらあんたの処刑場だからな』
「そうか、それが口先だけでないことを祈ろうか」
「相変わらず自信過剰だな~!!」
ホーネックの姿は以前より大きく変わっていた。
恐らくエックスとは違う外付けの強化アーマーだろう。
全身を火器で武装したような姿だった。
「どーだ?イカすアーマーだろ?あんたの武器なんて目じゃねえぜっ!!この部屋もあんたの処刑用に特注したんだぜ。ドップラー様は気前良いぜ!!」
「言いたいことはそれだけか?自分の得意な戦い方とは真逆の武装をするとは新人以下だ。暴走族時代の頃のお前の方がまだマシだったな」
溜め息と一緒に吐かれた言葉にホーネックは歯軋りする。
「くぅ~…死ねーーーっ!!」
左腕の火器で攻撃するものの、発射の反動で手が弾かれた。
「…………」
狙いが定められていない弾は見当違いの方向に飛んでいく。
「(反動で手が弾かれた…)」
「“豚に真珠”とは正にこれだな。使いこなせない武器など恐れるに足りん」
「言いたいことはそれだけかーっ!!」
ホーネックは全武装の攻撃をゼロにぶつけようとするが、一発も当たらない。
「どうしたホーネック?俺は一歩も動いてないぞ。動かない的に当てるのは新人にも出来る」
呆れの表情を浮かべるゼロにホーネックは叫ぶ。
「うるへーっ!!まだこれからだ!!俺は強力な武器を持ってるんだ!!負けねえんだ!!」
「強力な武器か…」
バックパックからセイバーは外して床に放り投げ、腕からバスターとアースクラッシュの回路を外す。
「それはバスターとアースクラッシュを使うための回路…」
「今のお前にバスターもアースクラッシュも必要ない。セイバーもな」
回路を握り潰し、ゼロは丸腰の状態となる。
それを好機と見たのかホーネックは笑いだした。
「キヒヒヒヒ…自信過剰なんだよ~っ!!」
そしてゼロに向かって放たれる一斉掃射。
下手な鉄砲でも数を撃てば当たると言うかのようにゼロに命中する。
「くっ…」
「これが強さだ!!」
絶え間なく続く連続攻撃によってゼロは爆炎に飲まれた。
「どうだゼロ!!これが“強さ”だ!!…くくく…身を以て“強さ”の証を立ててくれたな~っ………!?」
「新人時代に言われなかったか?戦場での判断ミスは自分の“死”を招くとな」
アーマーが傷付きながらもゼロはしっかりと立っていた。
「(何故死なねえ…俺は強えんだ。俺は強え俺は強え俺は強え俺は強え俺は強え俺は強え俺は強え…)俺は強いんだーっ!!」
弾切れとなった武装を外してゼロのセイバーの柄を拾い上げる。
「へへへ、格好つけて大失敗だったな…さあ、貴様の武器で殺してやらぁ~…!!?何て高出力ビームサーベルだ!?」
セイバーを出力させた瞬間、あまりの出力にホーネックの腕が振り回される。
「(奴はこれを片手で扱っていたのかーっ!?)」
ホーネックは両手で何とかセイバーを抑えると、ゼロがこれを片手で扱っていたことに驚く。
「ひひひ、あんたずりぃよ。格好良いこと言っといてよ。こんな凄え武器使ってたんじゃねえかーっ!!」
セイバーをゼロに振り下ろすが、それはゼロのヘッドパーツを両断するだけで終わる。
僅かに額が斬られたのか、ゼロの額から疑似血液が流れる。
「お前の言う“強さ”とは俺のヘッドパーツしか斬れないのか…?その程度の“強さ”を…お前は欲しかったのか?……ホーネック…お前が欲しかったのは…こんな紛い物の力じゃないだろうっ!!!」
ホーネックの頬にゼロの拳が突き刺さり、ホーネックの体は勢い良く吹き飛んでいった。
「(俺の求めていた“強さ”…それはゼロのような…そうだ…隊長のように何者にも屈さない強さ…ドップラーのくれた強さなんかじゃない!!俺は…俺は大馬鹿野郎だ…)」
先程の一撃で正気を取り戻したらしく、ホーネックは本来の人格に戻っていた。
「頭部に強烈な衝撃を与えれば、一時的に正気に戻る…エックスの言っていた通りだったな…目が覚めたか?この大馬鹿が」
ホーネックを見下ろしながら言うゼロ。
実はここに来る前にエックスからバッファリオを正気に戻した方法を聞いていたので、ゼロもホーネックに試したのだ。
「(た…隊長…くっ…みっともなくて…情けなくて…顔が合わせらんねえよ…)」
憧れであったゼロにとんでもない醜態を見せてしまったことにホーネックはゼロの顔を見ることなど出来ずに顔を背けてしまう。
「……ふう」
溜め息を吐きながらゼロは踵を返す。
「(行っちまう…良いのかよこのままで…)」
自分は人類に反旗を翻したイレギュラーなのに処分しないゼロにホーネックは目を見開く。
「以前のお前なら立ち上がる位の根性はあったぞホーネック」
その言葉にホーネックは震える体を叱咤して立ち上がる。
「こ…根性だけは…昔よりついてるつもりですよゼロ…隊長!!」
次の瞬間、警報が鳴り響いた。
『エマージェンシー、エマージェンシー。裏切り者を抹殺せよ!!抹殺せよ!!』
そして部屋にかなり数のメカニロイドが押し寄せてきた。
「ホーネック、俺達の仕事は何だ?」
「イ…イレギュラーハンターです!!」
ホーネックの答えにゼロは微笑を浮かべる。
「その通りだ。今度こそ忘れるな…行くぞ副隊長!!」
「はいっ!!隊長!!」
セイバーを回収してホーネックと共にメカニロイドの大群に突っ込んでいくゼロ。
しばらくして工場が破壊され、ゼロとホーネックがハンターベースに帰還したのであった。
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