ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第51話:evolution
倒したマサイダーが突如地面から飛び出したケーブルに包み込まれ、まるで虫の繭のような状態となってしまったことにエックスもゼロも困惑する。
「な、何が起きたんだ?」
あまりのことに思考が追い付かないエックスとゼロだが、近付いてくる気配に気付いてそちらに向く。
「進化だよエックス君。君にも経験があるはずだ。進化とは新たな適応力を身に付けること…それは生き残る為の術だ…違うかねDr.ケイン?」
「ドップラー…」
姿を現したドップラーにケインは表情を険しくする。
「そう怖い顔をしないでくれ。君達に最初に見せる為に大急ぎで完了させたんだよ。進化をね!!」
そしてドップラーは戦闘用ボディに改造したボディをエックス達に見せる。
「レプリロイドの進化!即ち!!人類を滅ぼす為の“力”を手に入れること!!聞こえるぞ、進化の音が…人類の滅びゆくリズムがな!!」
「哀れな…」
「?」
「素晴らしい才能を…歪んだ夢のために使うとは哀れじゃの、ドップラー」
「とんでもない、人間の都合を押し付けられていた昔の方が哀れだったよ。所詮人間とレプリロイドは相容れないのだよ。エックス君、ゼロ君。君達も疑問に思わないのかね?自分達よりも遥かに劣る人類の命令に従わなければならないレプリロイドの現状に?実際、最初の戦いではイレギュラーハンターからも反乱者が大量に出たではないか」
「まるで…まるであいつみたいなことを!!」
エックスがドップラーに反論するよりも早くケインが前に出て口を開く。
「確かにあの時はイレギュラーハンターからも反乱者は大勢出た。中には現状に疑問を抱いておった者もおるじゃろうな。それは確かに我々人類の落ち度じゃ…しかしドップラー…わしらは仲間じゃ!!エックス達はわしの大事な仲間なんじゃ!!」
「「!!」」
「………フッ、何時までその理想が続くものかな…まあ、それも一興か…ではそろそろ失礼するよ」
笑みを浮かべてフットパーツのバーニアを噴かして上昇し始めるドップラー。
「何処へ行くドップラー!!」
「生憎、私にはやらなくてはならないことが沢山あるのだよ!!これからのことを思うとワクワクしてくるなっ!ケインよ!!楽しみだな!!」
そして鉱山から脱出してこの場を去っていくドップラー。
「ドップラー…」
変わり果てた親友の姿にケインは悲しげに俯き、そんなケインにエックスはかける言葉が見つからない。
「ケイン博士…」
「爺を慰めるのは後にしろ!先にマサイダーが取り込まれたあの繭を処理するんだ!!……っ!?」
ケインのことが気になるのは分かるが、ドップラーが残していった物をそのままには出来ない為にゼロは繭を指差すが、悪寒を感じて繭を見つめる。
すると繭からドリルが発射され、エックス達は即座にそれを回避する。
「チッ!!ドップラーの言っていた進化とやらか!?」
セイバーを抜いて繭の表面を斬り裂くが、中身には届かなかったらしく、反撃を受けてドリルで左肩のアーマーが吹き飛ばされてしまう。
「姿が変わってる…!!」
「戦闘型に改造されたんじゃ!!」
右腕がドリルになり、両肩にもドリルが装備されただけではなく、フットパーツに機動力を補うローラーが装備されて攻撃的な姿となっている。
そして改造されたマサイダーの目を見たエックスはバッファリオの姿が脳裏を過ぎる。
「(あれはバッファリオと同じだ。と言うことはバッファリオと今までのイレギュラーはドップラーに操られていたのか!?)くそ…ドップラーめ…みんなの心を弄んでっ!!」
ZXセイバーを構えてマサイダーに突撃するエックス。
しかしマサイダーは右腕のドリルを向けてエックスに発射した。
「っ!!(しまった、無防備に飛び込んでしまった!!)」
「馬鹿が!戦闘型に改造されたんだ!!さっきまでとは違うぞ!!」
「す、すまないゼロ…」
ゼロが押し倒してくれたことで直撃を免れたエックスはゼロに謝罪すると戦闘を再開した。
「二手に分かれるぞ!!」
「分かった!!」
エックスは壁蹴りでマサイダーの上を取ろうとし、ゼロはマサイダーに向かっていく。
「ぐ…」
「お前の相手は俺だ!!」
マサイダーにショットを放つが、発射されたドリルに容易く砕かれる。
「(バスターショットが砕かれた…ビームコーティングが施されているのか!?)」
ゼロはドリルの直撃は避けたものの、掠っただけで吹き飛ばされてしまう。
「ゼロ!!」
そしてマサイダーはエックスが駆け上がっている壁にローラーによる機動力と持ち前のパワーを生かした体当たりで壁に激突してエックスを叩き落とす。
「くっ!!何てパワーなんだ…」
地面に叩き付けられたエックスにドリルを突き刺そうとするマサイダーだが、ダッシュでギリギリ逃れるエックス。
「チッ…これが進化って奴か…」
「違う…あんなものが進化であってたまるか…!!悲しみや争いしか生み出さない物が進化だなんて…そんなことあってたまるか!!」
「エックス……そうだな…それをじっくりと教えてやるとしようか!!アースクラッシュ!!」
マサイダーにアースクラッシュを放って直撃させるが、直撃を受けてもマサイダーはびくともしない。
それどころかアースクラッシュの衝撃波を弾き飛ばしてしまう。
「何!?アースクラッシュを弾き飛ばしただと!?」
元々マサイダーは採掘用レプリロイドなだけあり、改造前から装甲は堅牢なのだ。
それを改造によってアースクラッシュすら弾き飛ばす程の強度を持つに至った。
そしてゼロに向けて発射されるドリルだが、ゼロはセイバーでそれを両断する。
「どうした?それで終わりか?」
「グ…」
挑発するとマサイダーは更にドリルを発射してきた。
「そうだ!!撃ってこい…俺に当てられるならな!!」
しばらくドリルを発射するマサイダーとそれをセイバーで両断するゼロと言う繰り返しが起きる。
「もう終わりか…思ったよりも楽だったな…」
ゼロの足元に大量の両断されたドリルの残骸が転がっており、業を煮やしたマサイダーはゼロに体当たりを仕掛ける。
「ダブルチャージショット!!」
ダブルチャージショットでマサイダーの足元を吹き飛ばし、ゼロがアースクラッシュで開けた穴に潜んでいたエックスがマサイダーにチャージを終えたバスターを向けていた。
「お前はドップラーに操られているだけだ!!この一撃で!!」
無防備なマサイダーに至近距離でチャージショットを直撃させる。
そしてマサイダーは天井に叩き付けられ、そのまま地面に落下して気絶している。
「「…………」」
マサイダーの気絶を確認したエックスとゼロは互いに笑みを浮かべる。
「流石じゃなぁ、2人共!!」
「マサイダーはどうします?」
エックスの問いにケインはマサイダーを見遣って、髭を弄りながら考える。
「そうじゃな…連れて帰るかのぉ~。ドップラーの秘密が分かるかもしれんし、そやつも直せば更正出来るじゃろ」
「分かりました」
マサイダーを運ぼうとするエックスだが、ゼロに止められる。
「待てエックス…おい、爺…俺は嬉しかったぞ。仲間と言ってくれてな…」
「いやー、あれは格好つけ過ぎたかのお~」
照れるケインだが、ゼロの言葉は続いていく。
「仲間…苦楽を共にする“連れ”だよな…しかし変だな。俺達ばかり“苦”をやってるよな?ここで一発、髪を弄られたことの報復も兼ねて爺にも“苦”を味わってもらおうか」
そしてエックスを引き摺って鉱山を後にしようとするゼロ。
「こりゃ~っっ、わし1人でこいつを運べと言うのか~~~っ!!?」
気絶しているマサイダーを指差しながらゼロに向かって叫ぶケイン。
この時のゼロの表情は珍しく楽しげなものであった。
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