徒然草

二百四十二．とこしなへに

　　　　　　　　　　　　　　二百四十二．とこしなへに
　人が性懲りもなく苦楽の間を迷っていることはひとえに苦しいところから逃れて楽をしたいからに他ありません。楽とは何かといいますと何かを求めて執着することであります、そうした執着への欲求というものもきりがありません。それの第一は何かといいますとまずは名誉であります。この名誉にも大きく分けて二つあります。一つは世における名誉でありましてもう一つは学問や芸術の誉れであります。そしてその次に来るのが異性であれ同性であれそうした相手へ欲であり三つ目に食べ物に関すること、即ち食欲があります。他にも欲は多くありますがこの三つに比べればたかが知れているのであります。こうした欲は自然の摂理そのままでありまして多くはそこから大きな間違いを招いてしまうものなのであります。ですから欲なぞというものは追求しないに限ります。欲があるからこそそもそも間違いを犯してしまうものなのであります。人間まずは欲を捨てなければなりません。逆に言えば欲を捨てればそこからかなり大きなことになっていきます。欲を捨てましょう、まずはそれからなのであります。
　思えば欲があるからこそ人は醜くもなってしまいます。それよりは無欲であることが遥かにいいのであります。


とこしなへに　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　２０１０・１・１１