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碧い銀河

作者:fw187
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夢想 その1
  両雄の邂逅

 フェザーンで鋼鉄の砦を奪取した魔術師と密かに会い、腹を割って話し合った僕の上司は。
 蒼氷色(アイス・ブルー)の瞳と黄金の髪、絶世の美貌を兼ね備える野心家の許に賓客を誘った。
 ジークフリード・キルヒアイスの乗艦を審査、密入国者を逮捕する度胸なんて誰にも無い。
 エル・ファシルの英雄は密かに帝国の領域を横切り、ラインハルトの私室に案内された。

 ヤン提督は穏やかな口調で明確に君主制の長所、短所を指摘したんだけど。
 不敗と常勝の名を冠する両雄は、時を忘れて話し込み、包括的な戦略論を戦わせた。
 ローエングラム侯爵は話が一段落すると慧眼を讃え、優雅に握手を求めたんだけど。
 賓客の表情が急に曇り、予想外の言葉が溢れた。


「私は貴方の仰る様な慧眼の持ち主、貴方に匹敵する様な優れた戦略家ではありません。
 もし、そうなら、帝国領侵攻作戦の実施を阻み、数千万人も犠牲者を出さずに済んだ。
 士官学校に入学の動機も、学費が免除される、ただ、それだけです。

 本当は、軍人にならなければ良かった。
 今でも、そう思っています。
 イゼルローン要塞を奪取して、すぐに辞表を出したんですけどね。
 士官学校時代の校長に丸め込まれて、退役の機会を逃がしてしまいました。

 アムリッツァ星域会戦で包囲網を破る事が出来たのも、僥倖に過ぎません。
 戦死者の遺族から人殺し、と罵られずに済む無名の一市民になりたい。
 落ち込むと酒に逃避する癖が抜けず、身内から幾度も叱られましたけど。
 帝国領侵攻作戦の後始末を見て、痛感しました。

 私を英雄に祭り上げ、責任転嫁に汲々とする最高評議会に先は無いと思います。
 大袈裟に騒ぎ立てて無理難題を巧みに押し付け、自分の責任を誤魔化す事ばかり考えている。
 私利私欲を貪る輩を叩き出し、同盟を建て直せと唆す男も居ますが。
 責任を押し付けられるのは、もう沢山です。

 私は、独裁者になりたくない。
 一刻も早く軍隊を退役して、年金生活に入りたいのです。
 ありのままの自分になりたい、それが唯一最大の願望なんですよ。
 誰も、信じてくれませんけどね」


 どう反応すれば、良いんだろう?
 まさか、こんな、愚痴、と取られかねない様な言葉を聞かされるとは思わなかった。
 だけど、嘘を吐いている様には、全然、見えない。

 これって、本心なのか?
 蒼氷色《アイス・ブルー》の瞳が宙を彷徨い、切れ者の腹心に援けを求めたけど。
 キルヒアイスも咄嗟に言葉が出ず、ローエングラム侯爵の眸には『回答不能』と映った。 
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