アメリカ皇帝
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第二章
「ならいいな」
「そうだな、放っておけばいい」
「合衆国は言論の自由を保障している」
「これで暴力騒ぎを起こしていたら別だが」
「別にいい」
「放っておいて構わない」
どの議員も、そして政府も彼はどうでもいいとした。だがこのことに皇帝は怒ってこんな勅令を出した。
「軍隊は反乱者達を一掃せよ」
「軍隊ってアメリカ軍か」
「合衆国軍に言うのか」
「州軍を超えてか」
「また凄いことを言い出したな」
記者達も彼を知りはじめた市民達も驚いた、だが。
軍人達も彼の話を聞いてこう言った。
「冗談だな」
「冗談でないとおかしい」
「ただそれだけのことだ」
「アメリカに皇帝がいるか」
「合衆国軍の最高司令官は大統領だ」
「冗談にしては随分面白いがな」
こう言ってやはり相手にしなかった、だが。
皇帝はサンフランシスコの市民達に街頭で問うた。自ら街に出て。
「そなた達は今の戦争をどう思う」
「今の内戦ですか」
「北と南の」
「そのことについてですか」
「そうだ、朕の民同士が勝手に戦い殺し合っている」
皇帝は深い憂いを以て言った。
「このことについてどう思うか」
「まあそれは」
「あの状況なら仕方ないのでは」
「色々と理由がありますから」
「奴隷とか」
「奴隷なぞいらぬ、多くの血が流れるなぞだ」
自分の民達の間でというのだ。
「絶対にあってはならないのだ。だからだ」
「皇帝としてはですか」
「今の戦争を早く終わらせたい」
「そうなのですか」
「そうだ、絶対にだ」
こんなことを言うのだった、そして。
教会にもだ、こう言いだした。
「新旧関係ない」
「プロテスタントもカトリックもか」
「どっちもか」
「朕を皇帝と認めよ」
今度は教会に言うのだった。
「よいな」
「いえ、それはです」
「どうにもです」
真面目でかつユーモアを解する牧師や神父が彼の相手をした。
「事情がありまして」
「大統領の許可がありませんと」
「流石にです」
「それは無理です」
「時をお待ち下さい」
「大統領が言われる時を」
「そういう訳にはいかぬ、朕は皇帝としてだ」
そのうえでと言うのだった。
「やらねばならぬことが多々あるからな」
「それは存じております」
「ですが時があります」
「その時が来ることをお待ち下さい」
「今暫くは」
「軽挙妄動は慎んで下さい」
こう言って皇帝を止めた、皇帝も人の言葉を聞いて頷いた。
だが一連の発言や行動からだ、多くの者は確信していた。
「明らかにおかしいな」
「そうだな、どう考えてもな」
「心の病だろう」
「何でも破産してかなり落ち込んだらしい」
「ならだ」
「そこでおかしくなったんだろう」
こう予想した、だが。
勅令、彼がそう言う勅令の内容を見ると多くの者が思った。
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