ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第20話:Rockman
上半身だけとなったシグマを見遣り、エックスとゼロはとどめを刺すためにバスターを向ける。
「イレギュラー・シグマ!お前の企みもここまでだ!!」
「お前に利用され、死んでいった者達の無念をここで晴らしてやる!!」
「まだだ…まだ終わらん…!!」
突如シグマの頭部がボディから外れ、壁へと向かっていき、壁の狼の額に頭部が装着した次の瞬間であった。
壁を粉砕して巨大な狼型メカニロイドと融合したシグマが、エックスとゼロを睨み据える。
「シ、シグマ!?」
「ば、馬鹿な…!!」
あまりの事態に絶句するエックスとゼロを嘲笑うようにシグマは言い放つ。
「驚いているようだな…私は万が一に備え、部下に新たなボディを造らせていたのだ。いくら私と言えども人型の状態では出来ることが限られてくるのでね。お前達が来るのが予想以上に早かったためにまだ未完成だが…今の満身創痍のお前達を始末するには充分過ぎるほどだ。私の真の力…その身で味わうがいい!!」
メカニロイドの口から火炎が放たれる。
並のレプリロイドが受ければ容易く溶解してしまう程の高熱にエックスとゼロは反射的に回避した。
凄まじい熱にエックスとゼロは思わず戦慄する。
「チッ!図体がでかくなっただけでいい気になるなシグマ!!」
巨体になったためにパワーは格段に上昇したが、ボディが不完全であるために機動力が無いに等しいシグマの攻撃はある程度距離を置けばかわせると判断して即座にゼロはチャージショットをシグマのメカニロイドボディに浴びせた。
「無駄だゼロ!!最早お前如きの攻撃では今の私を傷つけることなど出来ん!!此処がお前達の墓場となるのだ!!」
「なんだと…!?」
ゼロのチャージショットが確かに命中したにも関わらず、直撃を受けてもメカニロイドのボディには傷1つ付かない。
「裁きの雷を受けるがいい!!」
エックスとゼロに目掛けて降り注ぐ電撃。
避けようとしても雷撃のあまりの数に直撃を受けてしまい、膝をつくエックスとゼロ。
「な、なんて威力なんだ…!!」
「くそ…ここまで来て負けてたまるか!!」
2人は何とか痛みに耐えながら立ち上がり、シグマに向けてバスターを構えた。
「「うおおおおおおおお!!!!」」
残った全てのエネルギーと武器をシグマに叩き込むエックスとゼロ。
しかし如何なる武器を用いようと、どれ程のエネルギーを叩き込もうと眼前のシグマの巨体は身じろぎもしなかった。
「無駄だ!!こうなった以上貴様らに勝ち目はない!!大型メカニロイドのパワーを手にした私は最早全能の存在なのだ!!」
質量にものを言わせた打撃と莫大な出力任せの電撃と火炎を放つシグマ。
そしてそれらを受けながらもエックスとゼロも負けじとバスターからショットを放ち続ける。
互いに凄まじい火力の応酬がされるが、どんなに攻撃を受けてもビクともしないシグマと徐々にダメージが蓄積していくエックスとゼロ。
このままではどうなるかなど火を見るより明らかであり、エックスとゼロに向かって腕を振り下ろすシグマ。
攻撃をかわそうとするエックスとゼロだが、それは既にシグマには先読みされており、雷撃がエックスとゼロを襲う。
「うわああああっ!!」
「ぐわああああっ!!」
電撃をまともに受けて敢え無く吹き飛ばされるエックスとゼロ。
「滅びるがいい!!」
腕を出鱈目に振るい続けるシグマの攻撃を受けるエックスとゼロは壊れた人形のように宙を舞う。
単純な攻撃でも大型メカニロイドのボディのパワーによるそれは驚異的な威力である。
「く…そ…っ」
重力に従って床に叩き付けられるエックスとゼロ。
度重なるダメージによって動けなくなり、2人は倒れ込んだままピクリとさえ動きはしない。
「もう終わりか…まあ、当然の結果だがな…私は更に時間をかけてこのボディを完成させ、完成したこの力を以てレプリロイドだけの新たな世界をこの地上に築く」
「勝手に…決めるな…!!まだ…終わっていない…俺はまだ…生きている……!!」
激痛に震える体を叱咤し、必死に起き上がろうとするエックス。
「流石は無限の可能性を持つレプリロイド。我々の元になっただけのことはある。だが…」
そんなエックスに対してシグマの額のバスターにエネルギーが収束していく。
「所詮は雑魚の遠吠えに過ぎん!!滅びよっ!!」
シグマが額のバスターをチャージし、巨体のボディの出力に物を言わせた巨大なチャージショットが放たれた。
出力も規模もエックス達の物とは比較にならないそれは真っすぐエックスへと向かっていき、エックスが思わず目を閉じた瞬間。
「させるかああああ!!」
ゼロがエックスと攻撃の間に割って入り、シグマの放ったチャージショットを相殺しようとゼロもチャージショットを放つが、簡単に打ち破られてしまい、それはゼロに直撃した。
「うわあああ…!!」
直撃を受けたゼロは片腕と下半身が吹き飛び、床に叩き付けられる。
ゼロのアーマーが漆黒からいつもの紅へと変わっていき、髪の色も銀色から金色に戻っている。
「ゼロ!!ゼローーーーッ!!!!」
それを見てエックスは痛みも忘れ、無我夢中でゼロに駆け寄る。
「ゼロ!!しっかりしてくれゼロ!!」
「エックス…すまない。どうやら…俺はここまでのようだ……」
「そんな…」
「頼む…シグマを…奴を…倒してくれ…そして…連れていってくれ…お前の…創る…懐かしい、未来へ…」
「…………」
死に際にゼロの脳裏に過ぎるのは、エックス、ルイン、自分の3人で一緒に任務に励み、一緒に騒ぎ、ケインの悪戯を受け、共にケインに報復したりした騒がしくも楽しかった日々。
エックスならきっとシグマを倒せると信じてゼロは静かに機能停止した。
「ゼロ…!!」
涙を流しながら立ち上がるエックスは親友を奪った男を鋭く睨み据えた。
「シグマ…お前を倒す」
「ほう?お前にそれが出来るというのか?」
「ああ、どんな手を使ってでもお前を倒す。」
嘲笑するシグマにエックスは力強く言い放つとシグマが放つ電撃をかわしながらエックスはバスターからショットを放ってシグマに叩き込んだ。
「何度やっても無駄だ!!」
「(俺はゼロやルインのように強くなんかない…ゼロのような強さもルインのような勇気もない…だけど…)」
シグマを睨みつけながら、諦めることなく何度も何度も攻撃を当てるエックス。
「(だけど俺だって…平和を守りたいと願う気持ちの強さは誰にも負ける気はない。そしてゼロとルインが望んだ世界に2人を連れていきたいと願う気持ちは誰にも負けない!!)」
「しぶとい奴め!!」
「生憎、このしぶとさが俺の取り柄でな!ゼロもルインも最期まで諦めなかったんだ…俺も最後まで諦めるものか!!」
どれ程熾烈な攻撃を加えられようとエックスは1歩たりとも退かなかった。
エックスはシグマの手の甲へと飛び乗ると、そのまま一気にシグマの腕を駆け上がる。
目指すはそう…メカニロイドの額にあるシグマの顔。
至近距離からのスパイラルクラッシュバスターなら防御壁を貫けるはずだ。
「何!?」
「スパイラルクラッシュバスター!!」
「ぐおおおお!?」
防御壁によりスパイラルクラッシュバスターの大半は防がれたが、ようやくシグマにダメージを与えることに成功したエックス。
そして至近距離まで近付いたことで防御壁のあることに気付いた。
「この防御壁は…アルマージのローリングシールドのエネルギーと同質の物か!?なら!!」
エックスはメカニロイドの頭部にしがみつき、ローリングシールドを発射する。
ローリングシールドはエックスの読み通り、シグマの防御壁を素通りしてシグマに直撃する。
「ええい!!離れろ!!」
シグマがエックスを振りほどき、シグマの巨大な腕がエックスを床に叩き付けるとエックスに向けて再び降り注ぐ電撃と火炎。
「ぐああああああ!!」
激痛に絶叫するエックス。
更にエックスに向けて打撃が繰り出されるが、それでもエックスは耐えて立ち上がるとシグマの頭部に向けてローリングシールドとスパイラルクラッシュバスターを放つ。
一見すると大して効いていないように見えるが、シグマの異常なまでの精神力の強さを思えば、彼がエックスの攻撃で些かも怯まなかったからと言ってそこが弱点で無いと判断するのは早計だ。
シグマのメカニロイドのボディには通常ショットやチャージショットどころか、スパイラルクラッシュバスターも特殊武器も通用しない。
ならば攻撃が通用するそこを攻撃するしかないのだ。
「くっ、ローリングシールドはエネルギー切れか…!!」
ローリングシールドのエネルギーが尽きて、今度はスパイラルクラッシュバスターをシグマに喰らわせようとする。
「甘いぞエックス!!」
シグマの額のバスターから再びゼロを破壊したチャージショットが放たれ、エックスを飲み込んだ。
「がは…っ!!」
更にエックスの頭上から振り下ろされた腕がエックスの全身を強かに打ち据え、凄まじい速度で落下したエックスは、床上に激しく叩き付けられると数度バウンドし、そのまま力なく床に倒れ込んだ。
「勝ったぞ…この勝負…私の勝ちだ!!」
シグマの笑い声が響き渡り、意識を失っていたエックスの脳裏を過ぎる光景があった。
『…ス。……ックス。エックス』
目を開けると、白い豊かな髭を持った老科学者が優しげな目で自分を覗きこんでいた。
自分の知る物より若さを感じるが、この老科学者は自分やゼロ、ルインを強化してくれた人ではないか。
周りには古い型の設備が並んでいた。ここは何処だろう?
『あな…たは…?』
自分の意思とは無関係に胸までしかない状態でカプセルのようなもの寝かされている自分は老人に問う。
すると老人はエックスの問いに嬉しそうに答えた。
『私の名前はトーマス・ライト。お前の生みの親だよ。エックス』
生みの親と聞いて妙に納得してしまった。
だから自分のパワーアップパーツを造ることが出来たのだなと。
『エックス……それが…私の…な…ま…え…』
意識が落ちる…出力不足だろう。
『エックス…そう、無限の可能性を意味する名前だ。お前は自分で考え、行動する新しいタイプのロボットになるんだよ』
そして場面は変わり、この頃のエックスは組み立てが終了し、後は微調整と主武装となるバスターの装着を残すのみとなっていた。
しかし、この日に会いに来てくれた老人は窶れ果て、憔悴しきっていたために何時もと様子が違うことを、外の様子を知らないエックスでもすぐに察した。
『どうしました?博士…お疲れの様子ですが…』
『エックス。お前は本当に人間と同じようだな…だがそれだけに…ゴホッゴホッ…お前のように極めて自分達に近い存在を受け入れるには、まだ人類は幼すぎるかもしれん…人はお前の無限の進化の可能性を危険と感じるかもしれない…“エックス”という名前には危険という意味もあるのだ。』
暗転。
場面が変わり、自分が老人と話せる最後の日だと…何となくだが分かった。
『すまないエックス…。お前を世の中に出してやるには、時間が足りなかった…ゴホッゴホッ!!』
更に窶れた老人は、掠れた声であの少年の面影を持つ最後の“息子”に詫びた。
そこまで言うと、老人は咳き込む。
医療に関して無知な今のエックスにも分かるくらい呼吸系の異常は明らかだった。
『ライト博士!!』
『わしはお前に悩み考え、そして進化を戦い取る力を与えた。だが、それをまだ解放するわけにはいかないのだ』
それは実質のエックスの封印宣告であった。
だが、エックスの中にあったのは恨みでも悲しみでもない、1つの決意だった。
『博士。私はこの力を正しいことのために使います。希望のために!!』
進化を戦い取るために与えられたバスターを胸に翳し、エックスは老人に、“父”を安心させるために誓った。
『ああ、もちろんわしもそう信じている。お前がその正しい心を持ち続けるということを。未来の人々が…世界がそう願うことを…』
エックスの言葉に老人は心から嬉しそうに笑った。
老人がカプセルの蓋が閉めてエックスの封印が始まったが、2人の顔に悲しみはない。
最後に残った菱形の窓に老人が顔を覗きこむ。
『博士…』
『さらばだ、エックス…ワシの…世界の希望』
それが最後の別れだった。
光が遠退き、意識が暗闇に落ちていく。
次の場面はハンターベースの屋上で隣にはVAVAとの戦いで大破したルインとの会話であった。
『うーん……でも私は、エックスのそう言う優しい性格も悪くないと思うよ。あのペンギン君やシグマ隊長達のような戦闘型よりも…君ならきっと違う視点でイレギュラーを見ることが出来るんじゃないかな?』
『え?』
『私もね、ケイン博士と同じようにエックスを信じてる…エックスならイレギュラーに対してのハンター達の指向も上手く変えてくれる可能性を…ね…』
『ルイン……』
『優しさが弱点になるなら私がそれを補ってあげるよ。私とエックスのコンビネーション。即興にしては上出来だったよね!!』
『うん。君が俺に合わせてくれたからね』
『エックスがバスターでイレギュラーを牽制して私が決める!!』
笑顔を浮かべながら言うルインにエックスもいつの間にか笑みを浮かべていた。
今思えばこの時からかもしれない。
彼女に惹かれたのは…。
彼女の無邪気な笑顔と言葉には何度も救われた。
更に風景が変わり、次の風景はVAVAとの最後の戦いの直後で大破したルインが弱々しい笑みで自分を見つめている。
『つれ、てっ…て…エック…スとゼ、ロが…2人がつく、る…や、さし…い…平和な…せ、かい…に…』
それを言うと彼女は機能停止して世界が暗転する。
次は、多分自分がイレギュラーハンターとなって初めてイレギュラーを倒した時の光景であった。
イレギュラーを殺したことに対して、バスターに添えた手に力が無意識に入り、恐怖を感じていた時であった。
『エックス、その心の痛みを絶対に忘れるな。痛みを負うのは誰でも辛い。だが、心が無ければ俺達はただの人形だ。それにな、お前はあの笑顔を守る事が出来たんだ…もっと胸を張れ』
ゼロの指差す方向にはエックスの手で助けられた人々がいる。
暗転し、そして自分を庇ってボロボロになったゼロが必死に紡いだ言葉。
『頼む…シグマを…奴を…倒してくれ…そして…連れていってくれ…お前の…創る…懐かしい、未来へ…』
懐かしい未来…。
それを創るために自分は…。
「………」
エックスは静かに立ち上がる。
老人から授かった強化アーマーは最早使い物にならず、邪魔になるために即座に外してシグマを見上げると、シグマの反乱に悲しんでいたケイン博士の顔が脳裏を過ぎる。
「すみませんケイン博士…隊長を…シグマを止めるには…もうこれしかなさそうです…」
アルファに続いてシグマまで彼から奪うことを謝罪しながら構えるのはZXバスター。
エックスのバスターは度重なるダメージで限界に達しているために形見であるルインのバスターをシグマに向ける。
不思議な武器である。
初めて触れるはずなのにそんな気がしない。
まるで最初から自分の武器であるかのように違和感がなく、この戦いで得たどんな特殊武器よりも自分に馴染んだ。
「フン…そんな玩具で私を倒せると思っているのかね?さあ…お別れだエックス。あの世にいるゼロとルインの後を追うがいい!!」
嘲笑と共にシグマの砲撃がエックスに向けて放たれる。
「ゼロとルインが何だって?2人なら…さっきから俺の傍にいるぞ!!」
「!?」
一瞬、シグマの視界にエックスの隣にいるゼロとルインの姿が見えた。
そんなはずはない。
ゼロはそこに転がっているし、ルインはケインの研究所にいるためにエックスの隣にいるわけがない。
「うおおおおお!!」
ルインのバスターから放たれたチャージショット。
それはシグマの砲撃を砕いただけではなく、防御壁さえも貫いて頭部に直撃する。
「があああああ!?」
「はあああああ!!」
よろめいたシグマにエックスはバスターをセイバーに切り替えると、セイバーを構えてシグマの頭部に斬り掛かる。
「ずぁああ!!でやあああ!!」
エックスは剣を使ったことなどないために、基本的な型すらマトモに出来ていないため、ただがむしゃらにセイバーをシグマに叩き付ける。
しかしセイバーによる攻撃は確実にシグマにダメージを与えて蓄積させていく。
「ぬうううう!!己ええええ!!」
無視出来ないダメージが蓄積していくシグマの表情にも焦りの色が見えている。
シグマの腕がエックスを床に叩き落とす。
「がはっ!!ぐっ…まだまだあっ!!」
床に叩き付けられるエックスだが直ぐさま立ち上がり、再びセイバーで斬り掛かる。
「ぐっ…何故だ。何故これ程の力を前にしても尚、戦おうとする!?」
「守りたいものがあるからだ!!俺が今まで戦ってこれたのはルインやゼロ、ライト博士とケイン博士達の存在があったから…そしてみんなとの思い出やみんなの願い…それが俺にどんな敵とでも戦える勇気をくれるんだ!!」
「戯れ言を!!」
シグマがエックスに向けて腕を振るうが、エックスは強化アーマーを失っているのにも関わらず、素早く動いてそれをかわした。
「お前の言う戯れ言が俺を支えてくれているんだ!!そしてお前を倒すのもお前にとっては取るに足らないだろう人々の無数の願いだ!!」
エックスは渾身の力でセイバーを無防備なシグマの腕に向けて振るい、両断した。
「ば、馬鹿な…私のボディが…!?」
「願いは!!そしてそれに応えようとする意志は!!どんな強固なものでも打ち砕く!!これは俺だけの力じゃない…これはルインやゼロ、そして死んでいった仲間達…そして俺を信じてくれたみんなの力なんだ!!」
「黙れ!!今ここにいない機能停止したルインとゼロと愚か者達に何が出来る!!」
「少なくとも!!」
セイバーをチャージし、そしてシグマに最後の一撃を叩き込むために一気に跳躍してシグマの頭部に向けて振り下ろされるチャージセイバー。
「みんなはお前を倒すための力を俺にくれた!!」
チャージセイバーの直撃を受けたシグマは蓄積していたダメージもあり、メカニロイドのボディから爆炎が上がっていく。
「ぐわああああああっ!!エェックスゥゥゥゥゥゥ!!!!」
屈辱か、怒りか。
怨嗟に似た咆哮が部屋に響き渡るが、エックスはそれに構わずに大破したゼロを抱えると、すぐさまシグマパレスから脱出する。
「(さようならシグマ隊長…)」
かつて尊敬していたシグマへ最後の言葉を胸中で呟くエックス。
爆発するシグマパレスを脱出したエックスは遠くで炎上するシグマパレスをただ悲しげに見つめていた…。
戦いは終わった。
明日になれば、再び平和な朝が訪れることだろう。
しかし、傷つき、倒れ、夜の闇へと消えていった者達がその朝を目覚めることは決してない。
1人立ち尽くすエックスの姿は爆発の光に照らされて、今にも消えてしまいそうに見えた。
何故、戦わなければならないのか。
誰もエックスにその事を教えてはくれない。
休む間もなく、どこかでイレギュラーが発生し、再びエックスは戦いの渦へと巻き込まれていくのだろう…。
優しさを捨てきれぬイレギュラーハンター・エックス。
エックスの戦いは、どこまで続くのであろうか。
エックスの苦しみは、いつまで続くのであろうか。
彼が握る、ルインの形見であるZXセイバーの翡翠の輝きと共に…。
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