アイテム収集家の異世界冒険話
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
05話 主人公たち
「ショウ、こっちだ」
志陽とユフィが案内されてやって来たのは宿屋の一室。そこには、男ひとりに女ひとり、それから何故か大型のライオンのようなケモノが鎮座していた。
「どうやら、勧誘に成功したようだな」
「犬が喋ってる!?」
部屋に入ると、最初に口を開いたのが大型犬にも見えるケモノだった。そんな風に、普通に人間の言葉を話しているのを聞いてユフィが驚きの声を上げた。
「ケモノが人間の言葉を喋るのが、そんなに不思議か? お嬢さん」
驚くユフィに対してクールに振る舞う自称ケモノ。初対面で口を開き、話すだけで驚かれる事には慣れている様子だった。
「フフッ。私達も、最初はビックリしたんだから」
「おい、レッド。また猫かぶってるのか。どうせバレるんだから、止めとけよ」
「彼らとは初めて会うんだから、最初くらい格好つけたって良いでしょバレット。あっさりバラさないでよ!」
ティファは、レッドが神羅ビルに実験動物として囚われていた時の初対面を思い出し懐かしいと笑った。
その後、レッドの故郷であるコスモキャニオンに到着すると隠していた本性がすぐにバレてしまい、本当は人間年齢でいうと15、6歳ぐらいの精神年齢だという事も皆に知られていた。
そんな事情を知っているバレットが、レッドに対して良い子ぶるのは止めたらとツッコミを入れたのだった。
「それと、こっちがクラウド」
「……」
部屋の中に居た、物静かな青年を紹介するバレット。しかし、紹介された本人は無言のままだった。何も言葉を発さないクラウドに対して、怒りを顕にするバレット。
「おいおい、クラウドさんよ! せっかく俺達の新しい仲間になってくれる奴らが来たんだから、少しは愛想良くしたらどうなんだ?」
「俺は、自分の目的を果たすだけだ。新しい仲間なんかに興味は無い」
「ちょっと、クラウド! ごめんなさいね」
さすがに言いすぎだとティファが咎めるが、黙ったまま直す気はまったくないらしいクラウド。最初からギスギスしたような関係を見せられてしまった志陽達。
「私はエアリス。よろしくね」
「あぁ、よろしく。志陽だ」
三人が揉めている間、手を差し伸べてきたのはエアリスと名乗る美女。握手を交わした後しばらく、不思議そうな表情で志陽をジッと見つめていた。
「ふーん、ショウさん、ね」
「何か?」
「なんだか、この星とは違う所から来た人みたい?」
志陽をジッと見つめていたエアリスが、そんな事を言った。
「ん? それって、どういう意味?」
ユフィが見つめ合う志陽とエアリス、二人の間に割って入り彼女の発した言葉に対して疑問を口にする。しかし、エアリスは感じた事をそのまま言っただけで何かを理解しているわけではない。疑問に答えあぐねていると、代わりに口を開いたのは志陽の方だった。
「ふっ。分かるか。そういう君も、普通の人間とは違うようだが」
「私は、自分の事あまり知らないんだけどね」
志陽とエアリス、二人は初対面でありながら何かを理解し合って、お互いに顔を見合わせて意味深に笑い合う。
部屋の中の皆が、そんな二人のやり取りを不思議そうに見ていた。興味ない、と言い放ったクラウドですらも少し興味を持って二人のやり取りを見ている。
「さて、新しい仲間が加わったから改めて状況を整理するぞ」
自己紹介も終わって、バレットが中心となり今後の話し合いが始まった。
「俺達の旅の目的はセフィロスの居場所を突き止めて、彼を止めること。そして星を救うことだ」
「え? セフィロスって英雄セフィロスのこと?」
「そうだ」
さっそく旅の目的がバレットの口から告げられる。しかし、ユフィが質問する。セフィロスとは伝説とまでなって知られている、あのセフィロスなのかと。それを肯定するバレット。
「ちょ、チョット待って! セフィロスを探し出すって言っても、もう死人じゃない。居場所を突き止める、ってどういう事?」
公式発表では、英雄セフィロスは数年前に死亡している。ユフィの知っている情報も、そうだったので死人を追いかけているという彼らの言葉をよく理解できなかった。
「俺達もセフィロスという人間は死んだものと思っていた。しかし先日、神羅カンパニーのプレジデントが彼の手によって殺された。殺害された現場を俺たちも見たんだ」
ミッドガルにある神羅カンパニーの本社で起こった殺人事件。社員達を殺しまわり、最上階の社長室には刀で刺し貫かれて絶命しているプレジデント神羅の姿があった。そして、死体に刺さったままの凶器はセフィロスの愛刀である正宗だった、という事。
「それで、星を救うという目的、というのは?」
「死んだと思われていたセフィロスが生きていた。彼は、”約束の地”を目指しているらしい。そこで何をしようとしているのか分からない。ただ、彼を行かせてしまったらとんでもない事が起こる。それこそ星が終わってしまうような何かが」
話を進めて尋ねた志陽に、答えるバレット。
「なるほど、な。英雄セフィロスを追って、約束の地を目指す旅か」
「ショウ。なんだか、とんでもない事に巻きこれているような気がするよ」
ユフィでも知っていた英雄セフィロスの名前。伝説にまでなっている人物と戦いになるかもしれないのだから、少しでも戦力を求めて志陽とユフィの二人を頼った。
「さぁ、話は聞いたな? 聞いてしまったら、もう仕事を放棄することは出来ないぜ。なんせ星が終わってしまうかもしれない危機なんだから!」
バレットが志陽とユフィを巻き込み、もう後戻りはできないぞと、ニヤリと笑った。
***
「なるほど、なるほど。こうして志陽とクラウド達は出会ってメインストーリーに関わっていく、という訳だな」
「あぁそうだ」
星を救う旅が始まったというのに、いつもの事だという気軽さで話をする志陽と、それを聞く栄一。
志陽にとっては何度か同じような経験したこともあって特に慌てることは無いし、栄一にとっては別世界のお話なので実感があるという訳でもなく聞いて楽しんでいるだけだから、平然としているのはしょうがない事なのだが。
「しかし、クラウドの有名なセリフ”興味ないね”を生で聞いたのか」
「出会った当初から彼の態度は素っ気なくて、親しくなるまでにはしばらく時間が掛かったかな」
ページ上へ戻る