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アイテム収集家の異世界冒険話

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03話 ふたり旅

 志陽とユフィがパーティーを組んで一緒に旅を始めることになってから、しばらくの時間が経っていた。


 志陽の興味は未知のアイテムを収集してコレクションに加えていく事であり、そしてユフィはというと、とにかく高価なアイテムやマテリアを集めて売りさばき金稼ぎをする事が目的だった。二人の旅の目的はうまい具合に合致して、揉めることも無く良好な関係を築き有意義な旅になっていた。

「うわぁ~♪ 今日もこんなにギルを稼げたよ、ショウ!」

 うずたかく積まれたギルの山を見ながら嬉しそうな声を上げ、目を金貨マークに変えて喜ぶ金の亡者となっているユフィ。彼女が、マテリアハンターと名乗って泥棒稼業を繰り返していた時には、お目にかからなかったような大金だ。

「本当に、これ全部もらっていいの?」
「いや、全部じゃないからな。事前に二人で相談した通り、新しく入手したドロップアイテムと、お店で未知のアイテムを買い集めるのに使う資金はコチラが貰うから。残りは全部持ってけ」
「やったぁ、それでも良い!」

 志陽とユフィの二人で旅をしている道中、通った場所に生息しているようなモンスターを絶滅させるぐらいの勢いで狩り尽くしていった。

 モンスターからのドロップ品を狙って朝から晩まで一日中戦ったりもして、短期間のうちにたった二人で集めたにしては破格の報酬だった。

 事前の相談というのは、志陽の目的が未知のアイテムやレアなモノを収集する事だと打ち明けていた。なので、それらを志陽が手に入れた後の残りをユフィが報酬として受け取るという約束。

 残りの成果だけを受け取ったとしても十分な報酬と言えるので、強欲ユフィも受け取ろうとする報酬を釣り上げること無くアッサリと引き下がった。そして、あの時に旅のお供として誘った選択は間違いではなかったと改めて確信していた。

 志陽も、ポーションやフェニックスの尾、万能薬と言った存在はよく知っていたが今までに持っていなかったアイテムを入手できた事で上機嫌だった。

 他にも魔法マテリアに支援マテリア、召喚マテリア等を買い漁り、月のカーテン、金の砂時計、死神のキッスに有害物質という様々なレアアイテムを入手していって、取り逃すこともなく新たなコレクションに加えていった。



「じゃあ、そろそろ今日のトレーニングを始めるか」
「うへぇ~、またぁ? 今日ぐらいは休まない?」
「毎日続けないと意味ないぞ。これから先、もっと強いモンスターと戦う為に鍛えておかないと。お宝が欲しいだろう?」

 今はまだ出会うモンスターのレベルも低く、ユフィでも問題なく戦えている。だがしかし、更にレアなアイテムを求めている志陽は強いモンスターに戦いを挑んでレアアイテムのドロップを狙おうと考えていた。

 その戦いに彼女を連れて行くことを考えると、今のうちに鍛えておいたほうが良いという判断で、志陽はユフィに対してハードなトレーニングを課していた。

「そりゃ、お宝は欲しいけど……」

 でもショウのトレーニングは厳しすぎるからなぁ、とユフィは言葉に出さず内心で思っていた。ただ、厳しい分だけ強くなっているという成長も実感できていたので、結局は素直に志陽の厳しいトレーニングを受ける事にしたユフィだった。



「はぁ、はぁ、はぁ、きょ、今日はもう、終わり?」
「そうだな。そろそろ引き上げるか」

 日が暮れて暗くなってきた頃にようやく、ユフィは日課となっていたトレーニングを終えることができた。彼女は地面に大の字になって倒れ込み息も絶え絶えで、本日のトレーニング終了を喜んでいる。

「うぅ……うちのオヤジより強いなんて、本当にショウは何者なんだよ」
「今までに色々と経験して鍛えているからね。それよりも、君のお父さんは強いのか?」
「あぁ。 ウータイ五強聖ってのを名乗ってて五強の塔を管理してるんだ。認めたくないけどアタシよりも、ほんの少しだけ強いよ」

「なるほど。それじゃあお父さんに勝てるように、ほんの少しだけトレーニングを続けて鍛えようか?」
「うっ。それは、かんべんして下さい……」

 志陽の問いに対して、強い父親だと答える。だがしかし、本気を出して戦ったら負けやしない、と強がって言ったユフィ。そんな彼女の言葉を聞いた志陽は、からかうようにトレーニングを続けようとするが、ユフィはそれを冷や汗をかきながら懇願して止めるのだった。


***


「あんな可愛い娘とふたり旅なんて、羨ましすぎるぅぅぅ……」
「でも栄一は、リアルな生身の女性には興味無いんだろう?」
「もちろん! でも羨ましいのは、羨ましい!」

 ユフィとの旅を羨ましがる栄一に、志陽が指摘した。そして、生身の女子に興味が無いと答えたのはオタクを自負する彼の本心だった。生身よりも断然、2次元のキャラクターが好きだという気持ちに嘘はない。

 ゲームの世界に行ったという志陽の話を聞いている分には羨ましがっているけれども、いざ立場を変えてお前が彼女と一緒に旅をしてみるかと問いかけられたなら、絶対に嫌だと拒否するのが栄一だった。

「しかし主人公と合流前に、ユフィちゃん強化イベント!? 相変わらず、めちゃくちゃだなぁ」
「それで、続きなんだが。ようやく主人公と合流した」
「マジで!?」

 志陽の話は続く。 
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