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社会人共がクトゥルフやった時のリプレイ

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大神村の怪異
  Part.Extra

 ――個別オープニング 不動遊星――


「久し振りのセッションだな。楽しみにしているぞ」

 楽しみにしていてください。今回のセッションはいつもとは少し違う形式のものを用意していますよ。

「とりあえずキャラを作ろう。キャラシートを貰えないか」

 (コロコロ)……あ、すみません。ちょっと待ってもらっていいですか?

「なんだ今の1D6」

 えっとですね、このシナリオ、場合によってはPCに役割があるものなんですよ。

「シノビガミみたいなものか」

 そうそう、そんな感じです。

「で、俺の役割はなんなんだ?」

 えー、あなたの職業は強制的に【警察官】になります。以上。キャラを作ってください。続きは個別オープニングで色々説明します。
 あ、PVP及び戦闘が発生する可能性のあるシナリオとなっておりますので。戦闘技能を持っていることを推奨します。
 それからですね。遊星くん、あなたはこのシナリオ中、持ち物欄に書いていなくても拳銃を所持していて結構ですよ。

「マジか? かなりドンパチするシナリオじゃないか。よし、オーケー。主人公みたいだな。……キャラ出来たぞ」

 キャラ紹介お願いします。

「俺の名前は不動遊星。43歳の警察官だ」

不動 遊星
性別:男 年齢:43
職業:警察官 特徴:鋭い洞察力
STR:14 《幸運》60   《言いくるめ》60   《拳銃》75
CON:10 《アイデア》55 《聞き耳》56
POW:12 《知識》80   《心理学》65
DEX:12 《母国語》80  《説得》58
APP:14 《回避》60   《追跡》60
SIZ:13 《耐久力》12  《法律》50
INT:11 《MP》12   《目星》55
EDU:18 《DB》+1D4 《武道(空手)》76
SAN:60 《年収》500万 《こぶし/パンチ》70

 堅実ですけど面白味のない普通の万能キャラですね。何かに寄せてロールプレイを楽しむあなたらしくない。

「酷い言われようだ。役割が与えられて警察官だから、出来る限り何でもできるように作った。経歴的にはまぁ、普通のベテラン刑事ってところかな。この年収なら良くて警部補か?」

 そのくらいですかね。それでは個別オープニング行きます。
 舞台は現代日本の夏の日のこと。あなたは警視庁捜査一課の刑事です。そんなあなたのもとに課長が話しかけてきます。

「不動くん、ちょっといいかな?」

「呼ばれたから行こう。どうしましたか課長、事件ですか?」

「まぁ事件……といえば事件なんだがな、ちょっとこっちに来てくれ」

「課長についていくぞ」

 では課長は奥の部屋、誰もいない部屋にあなたを連れて行きます。

「聞かれたくない事件なのか? 危ない案件なのですか?」

「それすらもわからん……わからんからこそ、君を呼んだんだ。君は階級とかを気にしないで刑事としての職務を全うする男だからな」

「褒めているんですか?」

「褒めているんだよ。そして私はそんな君の手腕を買っている」

「それはどうも。それで、どんな事件なんですか?」

 あなたが訊ねると、課長は難しそうな顔で概要を説明し始めます。

「実はな……1年前のこの時期に、3件の謎の失踪事件が発生したんだ」

「失踪事件?」

「知らなくて当然だろうな。失踪なんてざらにある事件だし、我々もつい最近までは気にも留めていなかった」

「でも失踪事件と銘打つものまで大きくなったということは……何か進展があったんですね?」

「ああ。その事件で失踪した3人は……これだ」

 と言って胸元から1枚のチラシを君に渡してきます。

「受け取って内容を確認する」

 第2回大神村ホラーツアー、という見出しが大きく掲載されています。どうやらこの時期お馴染みのツアーの1つみたいですね。

「開催日時は?」

 約1ヶ月後です。参加期限は明日までですね。

「ギリギリじゃないか。これが事件と関係があるんですか? まさか被害者が全員?」

「察しが早くて助かるよ。そうだ。この3人とも、このツアーに参加した日から行方が分からなくなっている。内1人はこのツアーのツアーガイドだ。関係がないとは思えないだろう?」

「ですね。というかよくこんな情報入手できましたね」

「日頃の捜査の賜物ってことさ。それで不動くん、君にはこのホラーに客として参加して、なにかしら情報がないかを探ってきてほしいんだ」

「潜入捜査というやつか。わかりました。ところで、これ以外の情報はないのですか?」

「すまないが、この案件をしていたやつらは今、とても重要な事件にかかりきりになっている。だからこっちに回ってきたんだ。君は丁度抱えていた案件に区切りをつけて空いていたからな」

「成程、そういうことでしたか。やってみます」

「頼んだぞ」

「はい。というわけでGM、俺はこのツアーに参加するぞ」

 わかりました。では遊星はこのホラーツアーに参加することになりました。

「まだ1ヶ月あるんだろう? それまでこの事件についていろいろと調べておくぞ。まずはこのホラーツアーについて詳しく知りたい。概要を教えてくれ」

 今回の大神村ホラーツアーは見出しに書かれている通り2回目で、このツアーは正式な旅行会社の企画ではなく、九頭竜会というオカルト団体が主催したイベントです。バス運転手やツアーガイドは派遣された人です。
 前回のツアーはツアーガイド合わせて参加者11名で開催されていて、その内3人が行方不明となっていることが最近になって判明しました。届出がなかったものやツアーとの因果関係が不明なものを含めればもっと多い可能性があります。

「九頭竜会とは具体的にどんなオカルト団体なんだ?」

 どこにでもある普通のオカルト団体だと思うことでしょう。その会員の中に、この大神村の村長もいるらしく、その伝手でこのツアーが開催されるようになったようです。

「第1回ツアー客の詳細は?」

 記録が残っていないようです。

「管理がなっていないな。仕方がない。失踪者リストと第1回ツアーの開催日時を照らし合わせてみる。何かわからないか?」

 わかりませんね。失踪者なんていくらでもいますから。

「だよなぁ。このホラーツアーが開催される村……大神村について調べよう。まずはインターネットで調べる。えっと、何県にあるんだ?」

 うーん、埼玉県ってことにしといてください。

「どこでもいいようだな。じゃあ『埼玉県 大神村』で検索してみる。なにかしら出てくるだろう」

 そう調べても、何も出てきません。

「おかしいな。他に大神村についてわかることはないか? ツアーのチラシからでもいい」

 人狼伝説のある村、とは書いてあります。

「じゃあ『人狼伝説 大神村』で検索だな」

 ホラーツアーの情報は出てきました。それ以上の情報は何も出てきません。

「どういうことだ、おかしいぞ。埼玉県に向かう。役所にだ。大神村について職員に訊いてみる」

 職員の人は少し眉を顰めたのちパソコンに向かいます。1分もせずに困ったような顔で対応されました。そんな村は県に登録されていません、と。

「そんなことはないだろう。GM、ホラーツアーのチラシには当然行われる場所の住所が掲載されているはずだ。その住所を見せて問いただす」

 確認しますと職員の人が奥に行って数分後、困ったような顔をして戻ってきました。確かにこの住所は存在するものでしたが、そこは山奥で人は1人も住んでいないとのことです。電気も水道も通っていませんので、生活なんて成り立つはずがないと言います。

「本当に怪しい村だな。実際にこの村の住所に向かってみる」

 《ナビゲート》で判定してください。

「《ナビゲート》は初期値だから無理だ。ファンブル出して遭難する方がマズい。近くまで行ったがわからないから引き返したことにしていいか?」

 それでいいですよ。

「他に調べられることは……特にないな。俺の行動はこれで終わりにする。あとはツアーが始まるまで待つぞ」

 了解しました。それでは遊星の個別オープニングを終了します。


不動 遊星 秘密:『潜入捜査官』

 あなたは潜入捜査官だ。
 過去、大神村で行われたツアーの参加者10人のうち3人が行方不明になっているという情報をあなたは仕入れ、真相を知るべく今回のツアーに参加している。
 あなたは所持品に拳銃を書き込まずとも、拳銃を所持品とすることができる。その場合、拳銃はベレッタM92FSでなければならない。
 また、あなたは事前調査により、大神村やホラーツアーの概要を大まかではあるが知っている。

 あなたの使命は、この失踪事件の真実を突き止め、これ以上の被害者を出さないように解決することだ。

 ベレッタM92FS
 ダメージ:1D10 攻撃回数:3回 射程距離:15m 装弾数:15


 ――十六夜咲夜 個別オープニング――


「来ましたよGM。久し振りですね」

 お久し振りです。お互い忙しくて何よりですね。

「社会人はお金があっても時間はないですからね。ですから、こうしてみんなで遊べるだけでも楽しいものです。それでどんなシナリオを用意しているんですか?」

 現代日本の夏。とあるホラーツアーに参加してもらう、みたいなシナリオです。

「ありがちなクローズド系シナリオですか」

 ただしPVPや戦闘が発生する可能性のあるシナリオとなっています。

「物騒ですね。まぁ私のキャラは決まっているのでいいですよ。というかPVPって……クトゥルフなんですよね?」

 そうなんですけどPCは秘密を持っている、という特殊なシナリオなんです。

「それって全員持っているんですか?」

 それはこの1D6で決まりますよ。あなたはですねえ(コロコロ)……ああ、なるほど。あなたのPCは無事秘密を抱えるPCになったみたいですね。

「やりました。どんな秘密を抱えていているんですか?」

 あなたは『記憶喪失』にかかっています。

「え?」

 という設定です。キャラシートを作成してください。自由に作成していただいて結構ですよ。あなたの場合はちょっと今から色々考えますから。あ、それからあなたの特徴は『大切なもの』でよろしくお願いします。強制バッステ付与の為、60ポイントの技能ボーナスをプレゼントしましょう。

「太っ腹ですね。とりあえず名前は十六夜咲夜で。職業は……殺し屋にしましょうか」

 こ、殺し屋ですか?

「はい。咲夜はヴァンパイアハンターだったっていう二次設定がありましたから、そこから拝借しまして。記憶喪失の殺し屋ってかっこよくありませんか?」

 ちなみに今回のPCでレミリア・スカーレットにするって言ってる人がいるんですけど。

「メイドにします!」

 えっと、確かレミリアの人は外国人という設定ですので、《日本語》をある程度習得しておいてください。あ、名前はそのままで構いませんよ。

「そうなんですか?……はい、キャラ出来ましたよ」

十六夜 咲夜
性別:女 年齢:30
職業:メイド 特徴:大切なもの
STR:16 《幸運》45   《言いくるめ》63
CON:16 《アイデア》55 《応急手当》50
POW:09 《知識》55   《聞き耳》45
DEX:11 《母国語》55  《製作(料理)》70
APP:17 《回避》22   《経理》60
SIZ:11 《耐久力》14  《心理学》63
INT:11 《MP》09   《目星》45
EDU:12 《DB》+1D4 《日本語》80
SAN:45 《年収》500万 《運転》60

 これは……どんな感じでデザインしたんですか? 《投擲》とか《ナイフ》とか取っていないようですけど。というか戦闘技能がないようなんですが? 戦闘が発生するシナリオって言いませんでしたっけ?

「はい? 何を仰っているんですか? 私はお嬢様を御守りするメイドです。戦闘ラウンドに入ったら庇う以外の行動をするつもりはありませんよ。場合によりますけど。それに《STR》が16もありますし、なんとかなるでしょう」

 あー……なるほど、そういうことですか。なら……こんな感じの設定で行きましょう。
 それではあなたの個別オープニングに移らせていただきます。
 十六夜咲夜、あなたはスカーレット家に仕える侍女です。とある事情であなたとお嬢様であるレミリア・スカーレットは日本に訪れています。
 あなたとレミリア・スカーレットとの出会いは25年前に遡ります。
 当時、あなたはイギリスのスラム街にいました。小さなあなたは記憶がなく、名前も、どこから来たのかも覚えていませんでした。気が付いたらスラム街にいた、という表現の方が正しいのかもしれません。
 ボロボロの服と、緑色に輝く石のペンダントだけが所持品だったあなた。当然お金などなく、日に日にあなたは(やつ)れていきました。
 そんなある日のことです。あなたの前に素人目でもわかるくらいに高い服を着た少女がいました。疲れ果てていたあなたは薄く目を開いて見つめるだけでしたが、目の前の少女は慌てた様子です。あなたの意識はそこで暗転しました。
 ……そして次に目を開けたとき、今まで感じたことのないくらいに柔らかくて心地よいものが自分を包み込んでいることに気が付きました。起きてみるとそこは今までとはまるで違う世界が広がっていました。
 清潔に保たれた、品の良い家具が並べられた一室。ボロボロだった服はきちんとした服に変わっていて、鏡を見れば汚れていた自分の顔も綺麗に拭き取られていました。
 呆然としたあなた。しばらくして、ノックの後に1人の少女が部屋に入ってきました。あなたが気を失う前に見た、あの少女です。
 その少女はまず起きたあなたを見て喜び、その後に行く当てがないならここで働かないかと手を差し伸べます。この少女こそ、あなたが敬愛する主人、スカーレット家の次女、レミリア・スカーレットでした。

「とても素晴らしい人格者じゃないですか。これは一生かけてでもお仕えするでしょうね」

 はい。あなたは自分を助けてくれたレミリアに絶対の忠誠を誓います。例えるならば、自殺しろと言われたら喜んで舌をかみ切るレベルです。

「大分凄まじいですね。でもそれこそ王道のレミ咲ですよね。テンション上がってきました。気合いを入れてロールプレイに徹するとします」

 あなたはその後、自分の名前がわからないことをレミリアに伝えた後、十六夜咲夜と名づけられました。和名なのはスカーレット家が親日家であり、レミリア自身、すでに日本語と英語が両立できる環境で育てられたからです。多分漢字の方が格好いいからとかそんな理由だと思います。

「居場所と名前を一遍に貰ってしまってはなるほど、そのレベルの忠誠心を抱いていてもおかしくありませんね」

 そうでしょう?
 さて現代に話を戻して、えー、ある夏の日のこと、あなたはレミリアと一緒に日本にいました。
 ふと、レミリアは面白そうだからという理由でとあるホラーツアーのチラシをあなたに見せてきます。

「なんというホラーツアーでしょうか」

 『蘇る人狼伝説 大神村ホラーツアー』というツアーです。お嬢様であるレミリアは参加すると意気込んでいますが。

「勿論私も参加します。お嬢様いらすところ咲夜ありです」

 ありがとうございます。それではあなたはレミリアの付添人としてこのツアーに参加することになりました。


十六夜 咲夜 秘密①:『記憶喪失』
 あなたは記憶喪失にかかっており、主人であるレミリア・スカーレットとの出会いまでの記憶がない。レミリア・スカーレットに拾われた際のあなたの所持品に服以外で緑色に輝く小さな石があり、今はペンダントとして首から提げている。
 あなたはレミリア・スカーレットに絶対の忠誠を誓っている。彼女の為ならば率先して自らの身を盾にするだろう
 あなたの特徴は強制的に《大切なもの》になる。強制バッステ付与につき60ポイントの技能ボーナスを与える。

秘密②:『豊穣の善神』
 あなたはシュブ=ニグラスの化身だ。

 気紛れで地上に現れたあなたであったが人間の姿に擬態してしまったばっかりに、記憶喪失となり全ての力を失ってしまう。

 あなたが神話生物、あるいは超常現象を目撃して一時的狂気・不定の狂気に陥った時、または神話生物によるダメージを受けて《耐久力》が減少した場合に《幸運》判定を行い、成功した場合、緑の石……シュブ=ニグラスの力の結晶が弾け、失った記憶を取り戻す。

 あなたが真の力を取り戻し理性が残っているのであれば、善の心を持つ豊穣神としての全ての力を使うことができるだろう。

《忠誠を誓えし清き豊穣神》
STR:18 CON:24 POW:70 DEX:16
APP:18 SIZ:11 INT:21 EDU:12
《耐久力》18 《MP》70 《DB》+1D4

《忠誠を誓いし清き豊穣神》の姿を直視したレミリア・スカーレット以外の者は0/1D3の正気度ポイントを失う。この正気度喪失による不定の狂気は発症しない。

 あなたは1ラウンド中に2回行動することができる。

武器:【豊穣神の蔦】100%
 《耐久力》20の蔦を異空間から召喚できる(※《MP》は消費しない)。対象に2D6+DBのダメージを与えるか、捕縛しラウンド終了時に1D6の《POW》を吸収するかを選べる。

呪文:
【治癒】
 《MP》を12消費することで、傷・病気・毒などの症状を全て癒し、2D6の耐久力が回復する。倍の《MP》を消費した場合、対象を自由に増やすことができる代わりに回復量が2D3になる。

【門の創造】
 《MP》を消費することによって対象を任意のポイントにワープさせることができる。


秘密③:【豊穣の邪神】
 あなたはシュブ=ニグラスの化身だ。

 もし、記憶を取り戻す前に緑の石が破壊されるか、身体から半径100メートル以上離れた場合、またはあなたの《耐久力》か正気度ポイントが0になった場合、あなたは豊穣神としての真の力を全て取り戻す。

 ……理性を失い、自分の欲望のために全てを破壊し、新たな生命を誕生させんとする黒き邪神の姿となりて。

 ――思い出した。全テ、なニもカモ、おモイだシタ……ウは、アハはッ、アハハははハはハッ!!

 歓喜と狂気が入り混じった嗤い声がこの小さな村全体に響き渡った。
 その嗤い声は嬌声のようで悲鳴のような、聞き心地はいいが耳障りで、壊れた大型スピーカーのノイズのようで高級な和楽器の奏でる静かな音色のような、あらゆる矛盾に満ちた完全にして歪なものであった。その音ともいえぬ音の発生源は銀色の髪の毛を靡かせる異国の従者であった。

 声高々に嗤う美しかった顔は無残に爛れ、口が、鼻が、耳が、目が、溶けるように落ち、顔のなくなった顔の内側からぼこぼこと黒い液体が泡立ち、それはやがて彼女の四肢を覆いつくすように広がり、人間のものであった体の原型もない巨大な雲海のような姿へと変貌した。やがてその雲海は凝縮し、別れ、バラバラになりながらも別の生き物のフォルムを描いていく。

 黒い無数の触手にはそれぞれ人間の手のような指が5つ、鋭い爪の生えた状態でのたうち、短いながらも長寿の木の根のように曲がりくねった4本の足の先には黒い蹄がある。
 その姿は山羊のようであったが、明らかに山羊ではないという違和感が先行してしまう、とても地球上の生物であると思えない冒涜的なシルエットを有していた。

 顔のない頭部にある異臭を帯びた粘液を滴れ落とす巨大な口から人間の女性の上半身が出てきた。彼女はかつての十六夜咲夜の顔に近いが目は赤く発光し、銀色だった髪の毛の中に黒いものが混じり、口が裂けた恐ろしい以外の言葉では言い表せないほどの姿となり果てていた。

《黒き山羊 シュブ=ニグラスの化身》
STR:72 CON:170 POW:70 DEX:28
APP:21 SIZ:120 INT:21 EDU:∞
《耐久力》145 《MP》70 《DB》+11D6

《黒き山羊 シュブ=ニグラスの化身》の姿を直視したレミリア・スカーレット以外の者は1D10/1D100、レミリア・スカーレットは1D100/2D100の正気度ポイントを失う。


 ――三尋木咏 個別オープニング――


「おーっす、来てやったぜ」

 どうも、今3人ほど個別オープニングを終わりましたよ。

「へぇ、誰が来ているんだ?」

 古美門と咲夜と遊星の人です。

「和マンチとロールプレイヤーと常識人か。ルーニーのあいつは来んの?」

 あの人は都合が合わなかったみたいです。まぁあんまりルーニー向きのシナリオではないのでちょうどよかったかもしれませんが。あ、でもあなたは好きかもしれませんね。戦闘及びPVPが発生する可能性のあるシナリオですから。

「おお、戦闘か! よっしゃ、じゃあ戦闘キャラを作るぜい」

 んー……じゃああなたはこの秘密をプレゼントしましょうか。

「秘密?」

 このシナリオ、各PCがそれぞれ秘密を持っているかもしれないものになっていますからね。本当は1D6で決めるんですけどあなたには特別です。

「秘密ねえ。で、どんな秘密よ?」

 まず初めに、あなたは人間ではありません。人間社会に解け込み、ひっそりと生きる化け狐です。

「化け狐?」

 はい。あなたは平穏な生活を望む化け狐です。人間として生きているのは、単純に人間として生きていきたいというあなたの願望からであり、特に深い理由はありません。
 そんなあなたのキャラ作成なのですが、まず身体の基礎が人間のそれとは異なります。《STR》《CON》《DEX》は3D6ではなく2D6+12の値で決定してください。

「お、おお?」

 さらに《こぶし/パンチ》《キック》《組みつき》は60パーセントからスタートして結構です。《回避》も《DEX》の2倍ではなく4倍の値で算出していただきます。

「よっしゃあ! 一度作ってみたかった探索できる戦闘キャラがやっと作れるぞ!」

 ただし! そんな強靭な体と圧倒的な戦闘能力を誇るあなたですが、呪術的な攻撃には滅法弱いです。もしあなたが何か呪術的な攻撃を受けた場合、どんな数値であっても一発で即死します。
 また、あなたの秘密はそれこそ秘密にしなければならないことです。人間ではないということが知られてしまったら、ただでは済まされないでしょう。

「なるほどねい。じゃああんまりこのステータスを見せつけられるようなロールプレイは出来ないねい。じゃあそれを踏まえてキャラを作るとするか。……よし、出来たぜ」

 自己紹介をお願いします。

「私の名前は三尋木咏。プロ雀士だ」

三尋木 咏
性別:女 年齢:28
職業:プロ雀士 特徴:鋼の筋力
STR:20 《幸運》50   《言いくるめ》65  《こぶし/パンチ》60
CON:22 《アイデア》65 《隠す》55     《キック》60
POW:10 《知識》65   《聞き耳》35    《組みつき》60
DEX:20 《母国語》65  《芸術(麻雀)》80
APP:15 《回避》80   《心理学》75
SIZ:08 《耐久力》15  《目星》65
INT:13 《MP》10   《鉄扇》80
EDU:14 《DB》+1D6 《忍び歩き》60
SAN:50 《年収》1200万《跳躍》65

 あれ? 星熊勇儀じゃないんですか?

「《SIZ》が8しかなかったからな。だからこっちにしてみたぜい。プロ雀士はギャンブラーの技能に則って作ったから《心理学》もある。《聞き耳》よりも《目星》を高くしたのは麻雀で飯を食っているからだ。私の身体能力は人間のそれを凌駕しているからな、それを隠すためにこの職業にしたんだ」

 成程。じゃああなたの導入……なんですけど、その、申し訳ありません。あなたの導入、めちゃくちゃ適当なんです。
 あなたはたまたま手に取ったチラシに書いてあるホラーツアーに興味を持ちました。だからそのツアーに参加することにしました。以上です。

「おいおいおいおい、なんだそりゃ」

 ごめんなさい。いや、この秘密を抱えるPCの導入だけはどうしてもいいのが思い浮かばなくてですね。職業見て決めようと思ったんですけどプロ雀士じゃあどうも。

「あー……なんかすまん」

 いえいえ。というわけであなたの個別オープニングは終了です。今日は物足りなかったでしょうが、明日は思う存分暴れてください。

「おう、楽しみにしているぜ」


三尋木 咏 秘密:【妖狐】
 あなたは人間社会に紛れ込む化け狐だ。

 妖であるあなたは平穏な生活を望んでおり、人間社会に溶け込んで過ごしている。その秘密は決して他の人には知られてはいけない。
 あなたの身体能力は人間を凌駕している。《STR》《CON》《DEX》は3D6でなく2D6+12で算出する。また、技能特典として《こぶし/パンチ》《キック》《組みつき》の初期成功率が60パーセントとなり、《回避》は《DEX》×4の値になる。

 あなたは人間よりも強靭な体を有しているが、呪術系には滅法弱く、例え弱い呪いであってもあなたにとっては致命傷となる。


 ――夢幻の白夜 個別オープニング――


「よぉ、来たぜ」

 いやぁ、あなたが来るとは正直思いませんでした。よく時間取れましたね。

「たまたまさ。楽しみにしていたぜ? 早速キャラを作ろう。おすすめ技能と職業を教えてくれ」

 ちょっと待ってくださいねー(コロコロ)……あぁ、すみません。あなたの職業は決まっています。

「ん? 役割がある系のシナリオか?」

 ええ、そんなもんです。

「へぇ。で、俺の職業はなんだ? 警察とかか?」

 いえ、あなたの職業は【狂信者】です。

「は? 【狂信者】? それはまた……なんの【狂信者】だ?」

 あなたは所謂マッドサイエンティストです。専攻は生物学。

「ああ、そういう【狂信者】か。で、なんでったって狂信者になっちまったんだ俺は」

 あなたは生物学者として様々な生物についての研究を行っていました。しかしある日のこと、あなたはとあるものを手に入れてしまいます。

「……待て、ちょっと待て。それって魔導書じゃあないだろうな?」

 御明察。あなたは偶然、魔導書……『屍食教典儀』のフランス語版を手に入れてしまいます。その狂気の内容と、未知の生物の魅力にあなたは虜になり、堕ちてしまいました。

「なんてこった……こりゃあ面倒な立ち位置だな」

 自由に振舞っていただいていいと思いますけどね?
 さて……あなたにはせっかくのキャラ作成に制限をかけてしまったお詫びとして、色々な特典がございます。

「特典?」

 はい。まず、あなたの《フランス語》の技能を強制的に80パーセントになるように修得していただきますが、その代わりに15パーセントの《クトゥルフ神話》技能をなんとタダでデメリット無しでプレゼントいたします。

「マジか」

 さらにそれ+20パーセントまで《クトゥルフ神話》技能をお好きに習得していただいて結構です。この場合は1パーセントにつき2パーセントの正気度を失った時点でゲームに臨んでいただくことになりますが。

「まぁんなもん読んでいて正気を維持することは出来ないしな」

 そしてあなたは神格以外の神話生物を直視したときや、現実離れした怪異に遭遇した場合の《SAN》チェックを0/1にします。

「なるほど。それで発狂しにくくするわけだ。《クトゥルフ神話》技能に割り振りやすくなったな」

 さらにさらに豪華特典としまして、あなたは4つの呪文を使用できます。

「そ、そんなにかい? 何を使えるんだ?」

 【ニョグタの招来/退散】【シュブ=ニグラスの招来/退散】【ヴールの印】【食屍鬼との接触】です。

「全部何かに使えそうだな。でもどれも使いたくはないなぁ。だがいつもと違う観点からロールプレイできるのは面白そうだな」

 そうですね。新しい視点でシナリオに参加してみてください。
 それからですね、あなたは拳銃とかライフルとか所持していても構いませんよ。GMが許可します。戦闘やPVPが発生する可能性がありますからね。
 説明は以上です。キャラを作っていただいて結構ですよ。あ、特徴は『前職(生物学者)』でお願いします。

「わかったよ。……ほら、キャラ出来たぞ」

 キャラ紹介お願いします。

「俺は夢幻の白夜だ」

夢幻の白夜
性別:男 年齢:42
職業:狂信者 特徴:前職『生物学者』
STR:12 《幸運》65   《隠す》70     《フランス語》80
CON:12 《アイデア》75 《隠れる》64    《オカルト》66
POW:13 《知識》80   《心理学》54
DEX:12 《母国語》80  《説得》45
APP:15 《回避》24   《クトゥルフ神話》27
SIZ:12 《耐久力》12  《薬学》59
INT:15 《MP》13   《拳銃》55
EDU:18 《DB》±0   《生物学》80
SAN:41 《年収》5000万《忍び歩き》40

 はい、ありがとうございます。それではあなたの個別オープニングです。
 フランス版の『屍食教典儀』を手にして数年、解読に成功したあなたはその本に書かれている未知の生物や物質の研究をしたいという欲求に駆られます。
 そこであなたは表向きに発表する論文を作成しつつ、様々な伝説のある地域や祭り、心霊スポットなどに赴くような生活をしていました。
 そんなあなたは人狼伝説のある村がホラーツアーを開催していることを知ります。人狼伝説と言えば夜な夜な人狼が人間を殺害し食らうという話で有名であり、『屍食教典儀』となにかしら関係があるのではないかと考えたあなたは、このツアーに参加すればもしかしたら自分の求めるモノが手に入るのではないかと思います。
 未知なる伝説の生物と物質を求めて、あなたは人狼伝説のある村……『大神村ホラーツアー』に参加することにしました。


夢幻の白夜 秘密:【マッドサイエンティスト】
 あなたは生物学者であったが、ひょんなことから魔導書『屍食教典儀』のフランス語版を手に入れてしまう。その内容に釘付けになったあなたは『狂信者』となり、あわよくば人外の存在や未知の物質をサンプルとして持ち帰り、研究しようとしている。

 あなたの職業は『狂信者』、特徴は『前職(生物学者)』になり、《フランス語》を80パーセント強制的に習得する。
 《クトゥルフ神話》技能に+15パーセントの補正を加え、それに加え20パーセントまで《クトゥルフ神話》技能に職業・趣味的技能から割り振ることができる。16パーセント以上の《クトゥルフ神話》技能を有している場合、15パーセントを超えた値×2パーセントの正気度を失う。

 あなたは神格以外の神話生物を直視したとき、また、現実のものとは思えない生物による怪異に遭遇した場合の《SAN》チェックを0/1で済ますことができる。

 また、あなたは呪文【ニョグタの招来/退散】【シュブ=ニグラスの招来/退散】【ヴールの印】【食屍鬼との接触】を使用できる。

呪文:
【ヴールの印】
 《MP》と正気度をそれぞれ1ポイント消費する度に、クトゥルフ神話の呪文の成功率を5%上昇させる。

【ニョグタの招来/退散】【シュブ=ニグラスの招来/退散】【食屍鬼との接触】
 ルルブ準拠。




     ――Extra end… 
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