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社会人共がクトゥルフやった時のリプレイ

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大神村の怪異
  Part.5

 はい、では夕方の6時になりました。皆さん勿論中央会館に集まっていますよね。……集まっていますよね?

「どんだけ信用無いのよ私たち。居るわよちゃんと。ねえ咲夜」

「お嬢様あるところに咲夜ありでございます」

「居るぞちゃんと」

「私もいるねい」

「俺もいるぞ」

 ありがとうございます。それでは皆さんは今、中央会館の1番の部屋にいます。他のNPC達もみんないます。

「ああ、村長が準備をしていた部屋だねい」

 はい。適当に囲炉裏を囲うような感じで座っていてください。並び順とかは特に意味がありませんので。まぁ、イベント的にそれぞれ怪談話に自信のある人が怪談を披露するという企画はありますが、シナリオ的に不要なのですっ飛ばします。

「皆さん全員お集りのようで何よりですじゃ。さぁさ、夕食も出来上がっておりますぞ。冷めてしまう前に食べてしまいましょう。そのあとで、この村に伝わる怪談話を披露しましょうぞ」

 といった夕食の鍋料理を催促してきます。

「お料理の鍋にはどんな食材が入っていますか?」

 目に見えるのは鍋の定番ともいえる具材です。違和感は全くありません。香りも普通に美味しそうな鍋料理のものです。

「その鍋なんだが、入っているよな? 肉が」

 そうですね。海鮮鍋ではなく肉の鍋ですから。

「それでは皆さん、いただきましょう。取り分けますぞ」

 村長は大振りの丼の中に鍋の具材や野菜を丁寧に均等に分けていきます。食欲を誘いますね。

「PL的には全く食欲を誘われないんだが?」

「そう? 私はそんなこと気にもせずに食べるわ。お味はいかがかしら、GM」

 美味しい鍋だなぁ、と思うことでしょう。

「美味しいわ村長。このお料理は誰が作ったのかしら?」

「私が丹精込めてお作りしたのですじゃ。喜んでいただいて何よりですじゃ」

「あなたが。もしかして、昼食もあなたが作ったのかしら? 味付けの特徴が似ていたからふっとね」

「ええ、その通りですじゃ。いかがでしたかな?」

「勿論美味しかったわ」

「よし、いいバトンだ。私が続けてロールプレイするぜ。私も気にしないで料理を食べるからな。いや、本当美味しいぜ村長さん。ところでこの肉なんだけどよ、一体なんの肉なんだ? 食べたことないからこの村のブランド肉かなにかかい?」

「お肉を食べつつ《アイデア》振っていいかしら?」

 いいですよ。

 レミリア《アイデア》75 → 22 成功

「あら、本当ね。食べたことないお肉の味だわ。興味があるわね。これでも高級食材は食べ慣れているから、知らないものは本当に安いものか、マイナーな食材ぐらいだもの。そうよね、咲夜」

「当たり前でございます。お嬢様はイギリスの名門スカーレット家のご令嬢。真に美味しいものを召し上がっていただければなりません」

「ふふっ。ということでね、私は良いものしか食べていないということなのよ。その私の舌が美味しいと認めているということは、これはさぞ素晴らしいお肉に違いないわ。秘境みたいな村だから市場に出ていないだけで、もし出るなら私も太鼓判を押すわよ。どうかしら? テレビでこの村を紹介してみましょうか」

「主従コンビは本当にロールプレイが上手いねい。あそこからここまで持っていくか。じゃあ私がもっと追い込んでやるよ。そりゃあいい。村長、あんた紹介してもらえよ。色々困ってんだろ? って村長の肩を叩きつつ小さい声で村長の耳元で囁く」

 うっわ、そこまでするんですか?

「よくやったわ咏。もっともっと追い込んでやるわよ。ロールプレイでカバーしつくしてきた私を舐めないでちょうだい。咲夜、あなたも出来るわね?」

「この咲夜、お嬢様にどこまでもついていく所存でございます」

「よし、行くわよ。あら、どうしたのひそひそ話なんてして。ああ、いいのよ。私は占い師だからね。大体想像つくわ。いいわよ。今度テレビに出たら宣伝してあげるから。咲夜」

「はいお嬢様。そうですね、こういうお話はバラエティよりも朝の情報番組の方がよろしいかと。お嬢様が出演しています占いコーナーの手前はいかがでしょうか? それから出演者の楽屋でその話題を出して、大神村のことを皆さんに知っていただきましょう。そこからちょっとずつ他の番組で出していきましょう。楽屋でお話しした方と共演できる番組が出来ましたらフリートークで話題に出していただきましょう。これでお嬢様が大神村の将来について占っていただいたら最高ですね。どんな結果であれ、放送を見た視聴者やテレビ関係者、芸能人の方は興味を持たれることでしょう」

「間違いないわね、流石よ咲夜。それで行きましょう。これで村長の様子を探りつくしてやるわ。さぁ、誤魔化すの? それとも乗ってくるの? どうするのかしら村長」

 ロールプレイヤーの本気怖いんですけど。ま、まぁ大丈夫です。私だって伊達にあなた達と一緒にクトゥルフやらパラノイアやらをやってきてはいませんよ。対応します。
 村長はいやいやといった感じで笑いながら手を振っています。

「そこまでせずとも大丈夫ですじゃ。こんな村、そこまでする必要はございませぬ。なにせこの肉は森の奥で取れる猪のものなのですじゃ」

「え? 猪だったの?」

「《知識》と《製作(料理)》を併用します!」

 認めます。両方成功で情報を開示します。

 咲夜 《知識》55 → 11 成功
 咲夜 《製作(料理)》70 → 23 成功

 猪の肉という言葉に咲夜は疑問を抱きます。記憶にある猪の肉のどこの部位をどう味付けしてどう調理したらこんな味になるのか、咲夜には思いつきません。

「本当ですか? とても猪のお肉だとは思えませんが」

「皆さんが今まで食べていらした猪肉がどのようなものであるかはわかりますぬが、この村で取れる猪はこういう味なのじゃ。味付けにもコツがありましてな、秘伝のものなのじゃ」

「《心理学》よ。《心理学》で村長の言葉の真意を探るわ。ここ割と重要よ! みんなも振っときなさい!」

 ところがどっこい、その判定の前に村長は言葉を続けます。

「しかもなかなか取れない貴重なお肉でして、特別な日のために塾生保存してある物ですじゃ。じゃからテレビで紹介していただいても皆さんに提供することなんて出来ませんし、何より私はこの村の伝統を守っていきたいと思っているのですじゃ。気遣いだけでも充分。出来ることなら次回のツアーの参加者を増やしていただける方がありがたいのですじゃ」

 ということで村長はあなた達の《心理学》に対して村長自身の《心理学》で対抗します。あなたたちが《心理学》でこれ以上の情報を得たいのであれば、村長との《心理学》対抗ロールを行ったうえで改めて《心理学》で判定を行い成功していただく必要がございます。

「かなり重要な情報らしいなこりゃ。《言いくるめ》より難易度が高い判定だぞ。大人しく従っておくかい?」

「従いましょう。村長の《心理学》の値はいくつ?」

 80パーセントです。ちなみに1回きりの判定です。失敗したら日を跨いでも判定させません。

「ちょ……無理じゃない」

「私も無理です」

「無理だ」

「手打ち無し、だねぇ。ご愁傷様だ」

「一応、私が行ける。25パーセントだけどな。振るだけ振ってみるぜ」

 咏 《心理学》対抗 25 → 66 失敗

「ダメだったぜい」

 残念ながら皆さんは村長の表情、言葉から、料理に疑問を持ちつつもその言葉に信じてしまいます。変わった猪肉だなぁって思うことでしょう。

「ここまでね。上手く誘導できると思ったのだけど普通にいなされちゃったわ。シナリオ終ったらこのお肉の正体教えてね。想像はつくけど」

 後にいくらでも。シーン進めますよ?
 とても美味しい夕食を済ませ、鍋が空っぽになったのは夜の7時。村長がこの村に伝わる怪談、人狼伝説について語りだします。えー……説明欲しいですか? ぶっちゃけた話、ただの人狼ゲームの説明をおどろおどろしく語るだけです。村長の話し方が上手いおかげで怪談らしくなっていますが、内容はほとんど変わりません。

「じゃあ私は聞かなくていいや」

「私もいいわ」

「俺もいい」

「俺もいいや」

「私もそれで構いません、が。役職に関してだけ訊いておきましょう」

 ありがとうございます。それからいいことを聞いてくださいました。怪談話の中に出てきた単語のいくつかを解説します。
 人狼。完全な人間に化けることのできる怪物であり、夜な夜な人間を襲います。
 看破の術師。誰が人狼であるかを看破する能力を持った人間です。
 降霊術師。亡くなった人間との交信をすることのできる人間です。
 防衛術師。人狼から唯一人々を救うことのできる力を持つ人間です。……以上でございます。

「裏切り者とかはないんだな。普通の人狼以下だな」

 村長によりますと、かの人狼ゲームもこれと同じような伝説から作られたゲームであり、人狼と呼ばれる怪物は世界中のどこかに今も存在するのかもしれない。という感じでしまりました。

「感想を言おうか。俺は人狼ゲームをやったことはないから、新鮮な話だった。面白かったぞ」

「ほっほっほ、ありがとうございますですじゃ。さぁさ、皆さんもご自慢の怪談話がございましたならばご披露してくだされ。今夜は存分に怪談に花咲かせましょうぞ」

 という感じで皆さんは10時くらいまで怪談をしました。その後皆さんは民宿へ戻り、お風呂に入って就寝します。時間を一気に進めていきます。
 朝になりました。現在時刻は午前5時です……皆さん、《聞き耳》判定をよろしくお願いします。

 遊星  《聞き耳》56 → 29 成功
 レミリア《聞き耳》63 → 39 成功
 咲夜  《聞き耳》45 → 04 クリティカル
 咏   《聞き耳》35 → 02 クリティカル
 白夜  《聞き耳》25 → 68 失敗

 あらら。じゃあクリティカルを出した咲夜は1日寝て昨日の怪我が回復したことにしましょう。《耐久力》を元に戻してください。

 咲夜 《耐久力》12 → 14

 咏は……どうしましょうか。起きたときに寝癖がついてなかったということで。朝の手間が少し省けて良かったですね。

「くっそどうでもよかったぜ」

「そんなことより《聞き耳》成功だ。どうしたんだ」

 そうでしたそうでした。えー、《聞き耳》に成功した皆さんは女性の悲鳴が聞こえて目を覚まします。白夜は気付かないでぐーすか寝ています。

「呑気なやつだ。俺は悲鳴のした方へ向かうぞ。どうした!? なにがあったんだ!?」

「私は飛び起きて部屋の外に出ます。何事ですか!? お嬢様!? お嬢様!?」

「私も起きて部屋から出るわ。なによ、騒々しいわねって感じで目をこすりながらね」

「私も部屋から出ようかねい。なんだ? どうしたんだ? すげー声したけどよ」

「GM、悲鳴はどこから聞こえた! 誰の声だかわかるか!」

 旅館の女将さんのものです。それから12番の部屋の扉が開いています。今の悲鳴を聞きつけたのはあなた達だけではないらしいです。ほかのNPC達も部屋から眼を誘いながら出てきています。というか白夜以外の全員が起きています。

「12番……内藤さんの部屋ですね」

「そこか! どうしたんだ! と言いながら部屋の中に入るぞ!」

「「「遊星(さん)に続いて部屋に入(るわ、ります、るぜ)」」」

 その部屋、入ってすぐのところに女将さんはへたり込んでいました。腰が抜けた様子で土間に膝をつき、震える指を12番の部屋の真ん中に向けています。
 その指の先にあった色は白と赤でした。
 飾り気のない白い布団は皆さんの部屋にあった布団と同じ物でしたが、そこには真っ赤な染みが乱雑に飛び散っていました。
 その布団で眠る女性は女将の悲鳴に動じずに眠り続けていました。布団と同じくらいまで肌を真っ白にし、腹部から赤いものを流した、変わり果てた姿で……。
 バスガイドの内藤さんの無残な姿を目撃した探索者の皆さん、0/1D6の《SAN》チェックでございます。クトゥルフらしくなってきましたね。

 遊星  《SAN》60 → 71 失敗
 レミリア《SAN》55 → 63 失敗
 咲夜  《SAN》45 → 69 失敗
 咏   《SAN》50 → 58 失敗

 ぜ、全員失敗ですか……。

「(コロコロ)……2だ」

「(コロコロ)……1よ」

「(コロコロ)……1です」

「(コロコロ)……やっば、5だ」

 あらあらまあまあ。では5点以上減少した咏ちゃん、《アイデア》をどうぞ。

 咏 《アイデア》65 → 80 失敗

「よし、一時的狂気は回避だな。お、おい……これって……うっぷ。口を押えて部屋から出るぜ」

「これ……もしかしなくても、内藤さん、その……」

「お嬢様、あまり見てはなりません。それから私のそばから離れぬように」

「全員動くな! この部屋にもこれ以上入るな! と大声を上げて内藤さんのもとに向かう。首で脈を測るぞ。どうだ、GM」

 脈はありません。すでに亡くなっています。

「遊星さん、内藤さんは……」

「残念だが亡くなっている。俺は寝間着からアレを取り出そう。俺はこういう者だ、と言いながら警察手帳を見せる」

「! け、けい……警察……あなた警察官だったの?」

「ああ、公務員と誤魔化していたがこうなってしまった以上、隠す必要がなくなった。すまないがここは俺の指示に従ってもらうぞ」

「……そうね。あなたに従うわ。何をすればいいかしら? 手伝えることがあれば手伝うわよ」

「そうか。じゃあ今すぐ村長の所に行ってこのことを知らせてくれ」

「わかったわ。咲夜、向かうわよ」

「お供します、お嬢様」

「GM、内藤さんはどんな死に方をしている! 《SAN》チェック覚悟で死体を見るぞ!」

 内藤さんの腹部に何かに噛みつかれたような、巨大な歯形がありました。

「その傷を詳しく見る。《目星》で判定だ」

 あ、《目星》でなく《アイデア》で判定をお願いします。

 遊星 《アイデア》55 → 31 成功

 では遊星はこの噛み傷は致命傷でないことに気が付きました。確かに大きな傷でしたが、あまり深くは噛まれていませんし、抵抗したような跡がないことから一撃で何も抵抗もないままに内藤さんは殺害されたと思うことでしょう。それを踏まえた上で《目星》をどうぞ。

 遊星 《目星》55 → 22 成功

 それでは遊星はこの噛み傷に上手く隠れてこそいますが、鋭利な刃物で刺されたような刺し傷が胸にあることに気が付きました。その傷は心臓を一撃で仕留めた後背中まで貫通しており、相当長い刃物で刺されたことがわかるでしょう。凶器は見つからないことから、犯人が持ち去っていったのでしょう。

「みんな聞いてくれ。これは殺人事件だ。そして犯人はおそらくまだこの村に潜伏している可能性がある。一箇所に纏まって単独行動は控えるように。……ん? 1人少ないな……白夜さんがいない。まさか……! みんなはこの部屋から動かないように! ただし現場には入るな! 保存しないといけないからな! 俺は白夜さんの部屋に行ってくる! もしかしたら彼も……! ということで俺は白夜の部屋に向かうぞ!」

「廊下に出ていた私が合流する。部屋から出てきた遊星を呼び止める。お、おい遊星さん。その……内藤さんは」

「亡くなっている。それよりも白夜さんがいないんだ。もしかしたら彼も殺されている可能性がある。今から確かめに行こうとしていたんだ」

「……ふぅ、わかった。私も行くよ。1人よか2人の方がいいだろ? それにこれでも喧嘩には強いぜ?」

「…………わかった。行こう!」

 白夜の部屋は5番の部屋です。12番の部屋の斜め前の部屋ですね。

「引き戸を乱暴に開いて部屋の中に入る!」

 白夜は普通に寝ていました。生きています。

「良かった。白夜さん、白夜さん、起きてください! と体を揺する!」

「じゃあ起きようか。んあ? ふぁーあ、あ? なんだ遊星さんか。どうした、こんな朝っぱらから」

「呑気なことを言っている場合じゃない。落ち着いてよく聞け。ツアーガイドの内藤さんが部屋で何者かに殺害されている」

「……なんだって?」

「ここに来たのはあんたの安否確認のためだ。無事でよかったよ。早速で悪いが遺体には不審な点がある。生物学者のあんたの意見も聞きたい。辛いだろうが一度、内藤さんの遺体を見てくれないか?」

「俺には医学的知識はないぜ?」

「詳しい検死はまだだが遺体と現場の状況からして大体のことはわかった。言ったろう? 不審な点があるって。それをあんたに見てほしいんだ」

「ふーん。わかった。俺にできることなら協力しよう」

「感謝する。じゃあついて来てくれ」

 えっと、遊星たちは再び12番の部屋に戻るということでよろしいでしょうか?

「ああ」

 それではそのタイミングで村長を連れたレミリアと咲夜が戻ってきました。

「連れてきたわよ遊星さん!」

「な、内藤さんがなくなったと聞いて、何が起こったのじゃ!?」

「詳しい状況は部屋を見てからにしてくれ! 行くぞ!」

 それでは内藤さんの遺体を直視した白夜、遊星からの事前情報を考慮して0/1の《SAN》チェックです。

 白夜 《SAN》41 → 33 成功

「こいつは……で、どこだ。不審な点って」

「この歯形だ。とても大きいだろう?」

「……ああ。まさか、これが致命傷か?」

「いや、これじゃあない。上手く隠れているが、長い刃物で付けられた刺し傷がある。胸を一突き。これが致命傷だ。この歯形はおそらく、犯人が内藤さんを殺害した後に付けたものだ。あんたに訊きたいのは、この歯形がなんの歯形かだ。何かの生物のものだとは思うが、俺にはわからない」

「なるほどな。わかった。《生物学》で判定するぜ」

 白夜 《生物学》80 → 55 成功

 おれでは白夜はこの噛み傷が大型の犬のような生物によってつけられたものが特徴から推測できる。しかし、これほど大きな口を持つ犬種の動物を知らない。未知の生物の存在をこの歯形から予見した白夜、0/1の《SAN》チェックです。

 白夜 《SAN》41 → 41 成功

「こいつは犬か狼のものだな」

「犬か狼だと?」

「ああ。歯形が似ている。……だがこりゃあ、相当大きい奴だな。もののけ姫なんかに出てくる山犬クラスだ。とても現実的なものじゃあない」

「おいおい、冗談はやめてくれよ。そんなオカルトありえるかいって」

「俺だって信じたくはないさ。だがこの傷がそれを証明している。何かのトラップのものかとも思ったが、これは明らかに生物のものだ。生物学者の俺が言うんだから間違いないよ。まぁ俺自身もにわかに信じがたいことだけどね」

 とそこまであなたたちが話していたところで、村長の村岡がガクガクと震えながら叫びます。

「ま、まさか……そんな……で、伝説じゃ……伝説の人狼が現れたんじゃぁっ!」

「村長、落ち着きなさい! そんなものいないわ! 《精神分析》よ!」

 レミリア《精神分析》62 → 52 成功

 効果的なレミリアの《精神分析》ですが、それでも村長はガクガクと震えるばかりです。

「あらら、これはマズいわね」

「お嬢様下がってください。ここまで動揺した人間は何をしでかすかわかりませんので。お嬢様を守れるように立ちます」

「俺も村長のそばに行こう。村長! しっかりするんだ! 今は警察に連絡をするのが先決なんだ! 電話は、電話はこの村にないのか? 衛星電話のようなものだったら使えるんだ。それはないのか!」

「ご、ございませぬ……」

「それじゃあ迎えのバスが来るのを待つしかないな。今日でこの村を離れる予定だから、少なくとも日没までにはバスが来るはずだ。それまで全員固まって行動するように! 絶対に単独行動はとるな! いいな!」

「私は遊星さんに賛同するわ。そうね。まさか私の占いの結果がこんな形で実現するなんて思わなかったわ。残念だけど、こうなってしまっては、私は咲夜以外の全員を信用できないわ。まぁ、警察官の遊星さんは咲夜に及ばないけど一応信用できるけどね。多分みんな、そうでしょう?」

「だな。私は正直誰も信じていないぜ。だからこそ全員固まり合うのが得策だろ。全員で全員を監視し合うんだ。そうすりゃあもしこの中に犯人がいるとしても動けないだろうし、ここに犯人がいなくて潜伏しているとしても襲撃は出来まい」

「私はお嬢様の意見についていくのみです」

「だな。それが一番だ。俺も遊星さんの意見に乗るよ」

 えー、PLの皆さんはそういう結論に達したみたいですが、村長は首を勢い良く振ります。

「ダメじゃダメじゃ! そんな生ぬるい方法じゃあこの身が危ないんじゃ! 一刻も早く人狼を! 人狼を見つけ出さなくちゃいけないんじゃ!」

 その言葉を聞いてNPC達はざわつきます。人狼というワードに反応したみたいです。

「村長! この場を混乱させないでくれ。そんな伝説、あるわけないだろう!」

 遊星がそう村長に怒鳴りかけますと、村長は今までの動揺はどこへやら。真剣な顔立ちでギンッと遊星を見ます。

「昨日の怪談話では隠しておったが……実は、昨日話した伝説は本当にあった出来事なんですじゃ」

「どういうことかしら?」

「待て、話が長くなりそうだ。いつまでもここにいてもしょうがない。中央会館に行こう。そこで話を聞こうじゃないか。今はみんな、昨日まで話していた人間が亡くなって動揺しているはずだ。中央会館に着くまでなんとか心を落ち着かせて、話を聞こう。《説得》で判定だ」

 遊星 《説得》58 → 25 成功

 では遊星のその鶴の一声でNPC達の混乱も何とか収まりました。遊星の言葉に従ってくれそうです。他のPCの皆さんもよろしいですか?

「「「「大丈夫(よ、です、だ)」」」」

 結構。ではあなたたちは12番の部屋から出て中央会館に向かいました。




     ――To be continued… 
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