戦国異伝供書
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第二十二話 川中島にてその三
目の前には川中島の開けた場所があった、後ろには山がある。
その開けた場所を見てだ、信長はすぐに兵達に命じた。
「布陣せよ、そしてじゃ」
「何時でもですな」
「敵が戦える様に布陣して」
「そうして敵を待つのですな」
「そうせよ、敵はすぐに来るぞ」
上杉家の軍勢はというのだ。
「だからじゃ」
「今すぐにですな」
「布陣をして」
「備えておき」
「何時戦になってもいい様にしておくのですな」
「そうじゃ」
その通りだというのだ。
「ではよいな」
「わかり申した」
「それでは」
「すぐに布陣します」
「殿の言われるままに」
「そうせよ、わしの言う通りにすればじゃ」
それでと言うのだった。
「必ず勝てる」
「上杉の軍勢にも」
「謙信公にも」
「軍神と呼ばれていますが」
「考えよ、わしは武田に勝った」
武田信玄と彼の軍勢にだ。
「だからじゃ」
「上杉家にもですか」
「勝てるのですか」
「そうなのですか」
「わしの言う通りにすれば勝てる」
必ず、とだ。言い切った言葉だった。
「安心せよ」
「わかり申した」
「それではですな」
「我等は殿のお言葉に従えば」
「勝つことが出来て」
「生きることが出来ますか」
「そうなる、だから怯えることなくじゃ」
それはない様にしてというのだ。
「そうしてじゃ」
「戦うのですな」
「これから来る上杉家の軍勢に」
「そうすればいいのですな」
「その通りじゃ、ではよいな」
信長は兵達にあらためて話した。
「これより飯を食い」
「用意をしてですな」
「そしてそれが整えば」
「その後は」
「見張りを残しゆっくりと寝よ」
そうしろと言うのだった。
「よいな」
「そうして英気を養い」
「そのうえで、ですな」
「戦になれば全力で戦え」
「兵達にそうせよというのですな」
「その通りじゃ、兵は勿論お主達もじゃ」
主な将帥達もというのだ。
「よく食ってじゃ」
「そしてよく休み」
「そうして英気を養って」
「武田の時と同じ様に戦う」
「そうせよというのですな」
「そうじゃ、敵はおそらく車懸かりで来る」
かつて謙信が川中島で使った陣で戦いを挑んで来るというのだ、あの信玄を散々に苦しめた陣でだ。
「そうしてくるがな」
「我等にもかつてしてきましたな」
「手取川において」
「その時は引分けましたが」
「次はどうか」
「必ず勝つ」
ここでも自信を以て言う信長だった。
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