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戦国異伝供書

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第二十二話 川中島にてその二

「戦の後、天下統一し泰平になった時もな」
「民の、国の役に立つ」
「そうした政であるべきですな」
「目先の己の為ではなく」
「そうした政が大事ですな」
「そうじゃ、己の利のみを貪るなぞ」
 信長はそうしたことを鼻で笑って終わらせた。
「小さいわ、わしはその様な小さいものは求めぬ」
「一切ですな」
「殿が見られているものはより大きなもの」
「天下だからこそ」
「その様なことは考えられませぬな」
「己の贅沢なぞそれこそじゃ」
 信長にとってはだ。
「少し城におればじゃ」
「好きなだけ出来る」
「殿にとっては」
「そうしたものですな」
「そうじゃ、よい衣を着て馳走を食い御殿に住む」
 そうしたことはなのだ、信長にとっては。
「それだけのこと、普通にあって深いとは思えぬ」
「深いのは天下」
「そちらですな」
「それ故にですな」
「天下の政を考えられますな」
「そういうことじゃ、ではこれからもじゃ」
 まさにというのだ。
「この国はだ」
「はい、それでは」
「これからもですな」
「天下布武の為に」
「上杉家とも戦い」
「そのうえで」
「政もするぞ、それとこの信濃は梨の産地」
 ここでこちらの話もした信長だった。
「季節になればな」
「信濃の梨もですか」
「食されたいですか」
「そうされたいですか」
「そうじゃ、わしは柿も蜜柑も好きじゃが」
 信長は酒は飲めない、だが甘いものは無類と言っていいまでに好きで菓子だけでなく果実も好きなのだ。
「柿もじゃ」
「だからですな」
「そちらも食されたいですな」
「そうされたいですな」
「うむ、季節になれば」
 その時はというのだ。
「食いたいのう」
「梨ですか」
「水気が多くていいですな」
「では季節になれば」
「殿は」
「食するぞ、勿論枇杷も好きであるし西瓜もであるが」
 とかく甘いものを好む信長だった。
「葡萄もよいのう」
「葡萄といえば甲斐ですな」
「あちらもお好きで」
「それで、ですか」
「食したいわ、天下泰平になればどんどん植えさせ」
 そうしてというのだ。
「食える機会があればな」
「食されたいのですな」
「その時は」
「左様ですな」
「そうじゃ、それとじゃ」
 さらに言う信長だった。
「南蛮の者達は葡萄から酒を造るが」
「あの南蛮の酒ですな」
「他には麦からも造るといいますが」
「その酒もですな」
「民達に造らせますか」
「そうして商いもさせるか」
 こうしたことも考えている信長だった、そしてだった。
 信長は自身が率いる軍勢と共に川中島に着いた、そこに着いてもまだ上杉家の軍勢は到着しておらず。 
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