デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第88話:明日に備えて芽心は頑張る
前書き
今回は大輔と芽心が八神家に泊まる話です。
カスタードクリームパイを美味しく平らげ、おやつ会は無事に終了した。
そして大輔と芽心は裕子からの招待を受けて、今日は八神家に泊まることになったのだが。
「はーい、いらっしゃい大輔君、芽心ちゃん」
「「…………」」
「「(お)母さん、何(だよ)その格好!?」」
裕子の服装は何故か普段よりもビシッとしており、これから外出でもするのかとツッコみたくなるような姿だった。
「ふふふ、今日は息子と娘が彼女と彼氏を連れて来るからお母さんも気合いを入れたのよー」
「そ、そうですか…」
「と、とてもお似合いです」
苦笑を浮かべているが、裕子の服装が似合ってると言うのは本当だ。
太一やヒカリのような大きな子供がいるとは思えないくらい裕子は若々しく、とても似合っている。
息子と娘である太一とヒカリはと言うと、はしゃぎすぎな母親に恥ずかしそうにしているが。
「さあさあ、大輔君!芽心ちゃん!!中に入って入って!!2人が来ると聞いておばさん、腕によりをかけて作ったのよー!!」
嬉々として中に入っていく裕子に太一とヒカリは恥ずかしそうに口を開いた。
「何か悪いな」
「お母さんったら」
息子と娘の恋愛にはしゃいでいる裕子の姿に恥ずかしそうにしている太一とヒカリの姿に大輔と芽心は苦笑する。
「まあ、露骨に嫌がられるよりはずっと良いですよ」
「そうですね、私達のことを歓迎してくれてると思えば寧ろ嬉しいです」
「「ありがとうございます」」
引くどころか寧ろ受け入れてくれる大輔と芽心に八神兄妹は頭が下がる思いだ。
「(そう言えばおじさんはいるのかな?)」
以前、大輔がデジタルワールド関係のことで遅くなり、同じく遅くなったヒカリを家の前まで送っていったら、ちょうど父親の進が帰ってきて鉢合わせしてしまったことがあった。
挨拶する大輔の顔を見て、進は明らかに顔を顰めたことは今でも覚えている。
デジモン関係のことで沢山一緒にいたことで大輔とヒカリがただの友人と言う関係ではないことは知っているが、こうやってヒカリの傍にいる大輔を見て改めて複雑な気持ちになってしまったのだろう。
家の中に入ると進は当然中にいて、芽心はともかく、大輔を見た瞬間に憮然となった。
「(やっぱり俺はおじさんに嫌われてるな)」
まあ、進の気持ちもわからなくはないのだ。
可愛い娘に男が出来て気にならないわけがない。
いつか自分の元から娘を掻っ攫っていく男が現れることを、父親はいつも危惧しているのだと自分の母親が言っていた。
まあ、自分の姉に恋人などまだまだ時間が掛かるだろうが…寧ろうちの父親の場合、ジュンに相手が見つかるのかと頭を抱える始末である。
「おじさん、久しぶりです」
それでもヒカリの父親なので、大輔は進の目を見て挨拶をした。
「………ああ、しばらく見ないうちにまた大きくなったな大輔君」
昔ヒカリが家に連れて来た時は娘と大して変わらなかったのに今では体つきががっしりとしており、背だって年相応に伸びている。
自分には想像も出来ない恐怖を前にしながらも必死に戦って、そして今回の騒動にもぶつかっているのだろう。
本来、大人に守られるべき子供に守られて自分達の生活は守られていることは何となく理解出来る。
「…これからもヒカリを頼む、大輔君。」
「え?は、はい」
いきなりヒカリを任されたことに目を見開きながらも頷いた大輔。
それを見た裕子は微笑みながらテーブルに料理を置いていく。
「さあさあ、2人共!食べて頂戴!!」
【頂きます…】
裕子お手製の料理を口に運んでいく。
最初に口にしたエビフライの衣はサクサクでとても美味しい。
どんどん箸を動かしていく大輔達。
「ふふ、どう?芽心ちゃん、おばさんの料理は芽心ちゃんの口に合うかしら?」
「え?はい!とても美味しいです!!」
「あらそう?」
芽心は本心からそう言うと、裕子はとても嬉しそうに笑う。
「「(何で(お)母さん、こんな上機嫌で気合い入ってるんだろ…?)」」
疑問符を浮かべながら料理を口に運ぶ太一とヒカリ。
「…美味い…何か久しぶりに誰かの手料理食べた気がする」
感動で少し涙目になっている大輔に、現在の本宮家の事情を知るブイモンが同意するように頷く。
「俺も作るけど基本的には大輔と一緒だからなあ」
「おばさんいないの?」
大輔以外に料理が出来る人と言えば大輔の母親だ。
あの人はどうしたのだろうか?
「母さんは今、色々溜め込んだ物を解放している最中だから、父さんは料理出来ないし、姉貴は論外だから消去法で俺が作るしかない」
「大輔、お前…」
色々と溜め込んでるのは大輔も同じではないかと思った太一であった。
「さあ、大輔君も沢山食べて頂戴!!」
「お代わりぃ!!」
「あんたがするな!!」
大輔ではなく、ブイモンがお代わり要求。
即座にツッコミを入れるテイルモン。
その光景に全員が笑い、賑やかな夕食はあっという間に過ぎていく。
そして今回の食器洗いなどは大輔達がした。
「凄く美味しかったです」
芽心の表情はとても満足そうで、母親の料理を彼女から褒められた太一も満更ではなさそうに笑った。
「おお、そうか」
「明日の朝食は今日のお礼に私が鳥取の郷土料理をご馳走しますね」
「え?マジ?サンキュー」
彼女の手作り料理を食べられると言う幸運に太一は喜んだ。
ケーキやお菓子を貰っているから芽心の料理の腕は信頼出来る…少なくともミミのようなことは絶対にしない。
「お兄ちゃん、顔が緩んでるよ。いくらお義姉ちゃんから手料理を振る舞って貰えるからって緩みすぎ」
「うるせ、お前だって大輔に菓子を貰ってる時、滅茶苦茶顔が緩んでるぜ」
「だ、だってしょうがないじゃない!!大輔君の料理は美味しいんだもん!!分かるでしょ!?」
「だよなー、理由が大輔の姉ちゃんが家事が壊滅的に下手だからってのが悲しいけどな」
「そ、そんなに下手なんですか?」
「ジュンお姉ちゃんが作ったらダークマターが出来上がっちゃう」
「ダークマター…!?」
「(ダークマターって何だ!?)」
芽心や酒を飲んでいた進が娘の口から出た“ダークマター”と言う単語に戦慄を覚えるのであった。
「そう言えば、料理だけじゃなくて掃除とかも駄目なんだっけか?」
「ええ、料理を作ればダークマター、掃除をすれば部屋は更に散らかる始末でゴミの分別さえ出来ない…洗濯をすればぼろ布に…教えようとしても本人がやる気出さないから、俺はもうどうすればいいんだ…!!」
【oh……】
大輔の嘆きにヒカリは話を変えようと芽心に明日のことで尋ねた。
「と、ところでお義姉ちゃんは明日、どんな料理を作るつもりなの?」
「え?そ、そうですね、“いただき”を作ろうと思ってます。」
いきなり話題を変えられた芽心は戸惑いながらも明日の料理の名前を言う。
【いただき?】
殆ど全員が聞き慣れない料理に疑問符を浮かべるが、大輔は何となく知っていたので口を開く。
「いただきって、あのいなり寿司みたいな料理のことですよね?」
「はい、材料は既に買ってあるし、おばさんには既に話は通してます…私、頑張って作りますから」
こうして食器洗いは終わり、太一達は風呂に入ることになったが、言うまでもなく女性優先だ。
「良かったわね太一」
芽心が入浴してるため、大輔とヒカリと話していた太一が話しかけてきた裕子に振り返った。
「へ?何が?」
「芽心ちゃんが美味しそうに食べてくれたし、これで将来太一が芽心ちゃんの代わりにご飯を作る時、味付けの好みで夫婦喧嘩することはなさそうだわ」
「「気が早すぎ」」
気が早すぎる発言に太一とヒカリの兄妹からのツッコミを受ける裕子であった。
「あははは…」
大輔も大輔で苦笑することしか出来なかった。
「それに明日の朝は手料理を振る舞ってくれるらしいしね、鳥取の郷土料理…楽しみだわー」
「いただき…どんな料理なんだろう?」
「明日のお楽しみさ」
大輔とヒカリも芽心のお手製いただきを楽しみにしながら会話を再開するのであった。
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