デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第82話:黒幕
バンドコンテストを行っている会場のあるフジテレビの前へと向かった。
またあそこが戦場となるとは思いもしなかったが。
「フジテレビ…ヴァンデモンに占拠されたり色々と呪われてんじゃないのかあの建物…」
「否定出来ないかも…」
ライドラモンに乗った大輔とヒカリは複雑な表情でフジテレビを見つめる。
現地に到着するとダークタワーは既に破壊されており、メタルグレイモン達がダークティラノモン達を叩き伏せていた。
唯一残されているのは数が比較的多く、ウロチョロするバケモン達。
「ヒカリちゃん、タケル。頼む!!」
「「うん!!」」
捕獲のスペシャリストであるネフェルティモンとペガスモンがサンクチュアリバインドによる網でバケモン達を捕獲した。
「デジモン達を一カ所に集めてパソコンでデジタルワールドに!!」
賢が指示を飛ばし、メタルグレイモン達が気絶させたデジモン達を一カ所にまとめ、ネフェルティモンとペガスモンが捕まえたバケモン達も強制送還された。
「何とか被害を出さずに済んだようだな」
「悪かったな、デジモンを倒すだけなら俺達でも大丈夫なんだけどデジタルワールドに帰すとなるとD-3の力が必要なんだ。」
「せっかくパーティーしていたのに、邪魔をしてしまってごめんなさい」
「いや、寧ろ今年のクリスマスパーティーは大失敗だったんでこれで良かったかもしれません」
【?】
太一と芽心が謝罪するが、楽しいクリスマスパーティーとは全然言えなかったので寧ろこれで良かったのかもしれない。
「それにしてもまさか現実世界にデジモンが現れるなんてな」
「間違いなく彼の仕業だろうね。」
「一乗寺治君ね」
ヤマト、丈、空がダークタワーがあった方を見遣りながら表情を険しくする。
治にとっても現実世界は自分の生まれた世界であるはずなのにダークタワーを出現させたことに不快感を抱く。
「これ以上あいつの好きにはさせねえ。明日からでもデジタルワールドに行ってあいつを捕まえに行くぞ!!」
【おー!!】
大輔の言葉に全員が賛同し、今日はこれで解散することになった。
「本当に今日は散々なクリスマスだったな」
「あはは…でもある意味あれはあれで良かったのかもね。あのまま何も言えなかったらきっと…あの人達に賢君が大変な目に遭わされていただろうし」
大輔の呟きにヒカリは苦笑し、結果だけ見れば悪いものではないかもしれないと思った。
「そうだなあ…あ、そうだ。ヒカリちゃん、これ俺からのクリスマスプレゼント」
思い出したようにポケットからプレゼントを出してヒカリにそれを差し出す。
「え?あ、ありがとう。開けていい?」
「勿論」
ヒカリが丁寧にプレゼントを開けるとプレゼントの中身は髪留めであった。
「これ…」
「ヒカリちゃん、その髪留め気に入ってたろ?最近ボロボロになってきたって落ち込んでたからさ。だからプレゼントにさ」
「…ありがとう、じゃあ早速…」
ヒカリは今まで使っていた髪留めを外し、新しいのを着ける。
「どう?」
「うん、似合ってるよヒカリちゃん」
「私からも礼を言うわ、ありがとう大輔」
ヒカリにプレゼントを用意してくれた大輔にテイルモンは素直に礼を言う。
「ほう?お前が素直に礼を言うとは珍しい。明日はデジモンが大量発生するかもな」
「何ですって!?」
日常茶飯事となっているブイモンとテイルモンの喧嘩。
しかしブイモンは今回ばかりは本当にからかいの意味で言っただけであり、悪気は一切無かったことをここに記しておく。
「あ、そうそう…みんなに伝えとくことがあるんだ」
【?】
芽心以外のメンバーが疑問符を浮かべると、太一は芽心を抱き寄せた。
「ひゃ…」
「俺、芽心と付き合うことになったんだ。一応みんなに伝えとく」
「え?ほ、本当なのお兄ちゃん!?じゃあ、これからは本格的に芽心さんは私のお義姉ちゃんなのね!!」
「そ、その…人前ではあまり言わないで下さい…」
からかっていたとは言え、太一と芽心の交際を心から喜ぶヒカリに対して芽心は恥ずかしそうに赤面しながらも微笑んでヒカリと会話する。
ヤマト達や大輔達も最初は驚いていたが、太一達を祝福する。
そしてヤマトと空も交際することを発表し、ヤマト達も祝福を受ける。
大輔達は最悪のクリスマスだと思ったが、前言撤回だ。
最高のクリスマスだ。
「ごめんね賢君」
「え?何がですか?」
大輔達が太一達の交際のことで賑わう中、いきなりの京からの謝罪に賢は目を見開く。
「私カッとなってついバンバン言っちゃって…」
いくら頭に来たとは言え、賢の両親に対して色々言い過ぎたことを反省する京。
「いえ、寧ろあれだけ言ってもらえて僕もすっきりしました。ありがとうございます…何時も京さんの明るさに僕達は救われてるんですよ」
「本当に?」
「はい、ブイモンも口では手厳しいことを言っていても京さんに感謝してると思いますよ」
それを聞いた京が微妙な表情を浮かべる。
「あいつが~?とてもそうは思えないんだけど…て言うか私は今でもあいつのボロクソ発言を許してないわよ!!確かに…確かに大半は事実だけどさあ!!」
「あははは…ブイモンは素直だからつい思ったことを素直に言っちゃうんだと思いますよ」
「だからって笑顔で本人に向かってドストレートに言い放つ?普通!?」
「本人はただ思ったことを素直に言っただけだと思いますけど」
「悪意が無い分、質が悪いわ!!」
当時のブイモンの言葉を思い出したのか、京は憤慨しながら叫んだ。
「ふふ…ところで、京さん。少しだけ時間をもらえますか?」
「え?時間?」
「はい、僕と一緒に帰りませんか?送ります…あ、でも帰る前に少し街を回りませんか?」
「え?賢君と私の…2人で?」
「はい…」
「(え?これってもしかして、デートのお誘い…?)わ、私で良いの?」
寒さとは別の理由で顔が真っ赤になっていく京に、賢の顔もまた赤くなっていく。
「僕は京さんと一緒に回りたいんです…京さんが嫌なら僕は…」
「い、嫌じゃないわ!寧ろその…賢君に誘われて嬉しい…」
顔を真っ赤にしながら俯きながらも、賢の誘いを受ける京であった。
「それは良かった…じゃあ一緒に街を回りましょう」
「う、うん…」
賢と京は手を繋いで街の中に消えていく。
「…上手く行くと良いな、賢と京。」
「うん…ねえ、大輔君…私達ももう少し、ゆっくりしていかない?」
「…うん」
太一と芽心の交際を聞いて、ヒカリもまた勇気をもらったのか、大輔をデートに誘う。
大輔もそれを受け入れて、大輔とヒカリも街の中に消えていった。
「頑張れ、ヒカリちゃん。京さん…僕達は帰ろうか伊織君?」
「そうですね、大輔さんと賢さんならきっとヒカリさんや京さんを守ってくれるでしょうし…お幸せに…ふふふ…」
変わっていく関係を見ていたタケルと伊織も微笑みながら、大輔達の幸せを願いながら帰路につく。
残された太一達はそれを温かく見守った。
「はは、賢と京ちゃん。そして大輔とヒカリは夜のデートか…上手く行くと良いな…賢と京ちゃん」
「ふふふ…そうですね太一さん」
芽心と言うパートナーを得たことでヒカリに対しての余裕が生まれたのか、太一は微笑みながら言うと、太一の寄り添っていた芽心も微笑んだ。
「まあ、仲が悪いよりは良いでしょうね」
「おい、光子郎。あいつらの姿を見ての感想がそれかよ?」
空と言う恋人を得たことで、何となくだが光子郎の感想が引っ掛かったヤマトが顔を顰めた。
「まあまあヤマト」
「冷めてるね光子郎。これじゃあミミ君も光子郎に苦労するわけだよ」
空がヤマトを宥め、丈がこの場にいないミミのことを考えて苦笑する。
「…何でそこでミミさんが出て来るんですか?」
「……気付いてないのかい?ミミ君も可哀想に…君のD-ターミナルにミミ君からのプレゼントの写真付きメールが送られてるはずだけど見てないのかい?」
「ミミさんから?あ、メールが来てますね」
今更になってメールに気付いた光子郎に太一達は表情を険しくする。
「ひっでえなあ、お前!!」
「女の子からのプレゼントを何だと思ってるんですか!?」
「光子郎、お前って奴は…いけねえな…いけねえよ」
「本当に光子郎君はデリカシーがないわね」
「だからミミ君から文句言われるんだよ」
「う…た、ただメールに気付かなかっただけじゃないですか。普段は皆さん何も言わないのに何故今回だけ…」
「「クリスマスだからだよ」」
「「だから怒られる(のよ)んですよ」」
「いいから早くミミ君からのプレゼントメールを見るんだ」
「わ、分かりましたよ…どれどれ…………」
全員に促された光子郎はメールを開いて写真を見た。
それを見て光子郎は硬直した。
「ん?どうした光子郎?おお、サンタの衣装じゃん。うん、可愛い。流石ミミちゃんだな」
「はい、ミミさんとても可愛いですね!!」
太一と芽心はサンタ衣装のミミを見て絶賛する。
「…………」
「ん?どうした光子郎君?もしかしてミミちゃんのサンタ服に見取れちまったか?」
「そ、そんなんじゃありませんよ!!」
ヤマトのからかいに光子郎が慌てて返すと、それを見た全員が爆笑した。
翌日の朝、パリ、ニューヨーク、香港……見慣れた塔が、当たり前のような顔をして聳え建っていることに驚愕することになるとは知らずに。
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