デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第77話:信頼0
パソコン室に集まった選ばれし子供達だが、全員の表情は微妙だ。
「ねえ、あの女。何考えてんのかしら?この前に完全体のオオクワモン出して以来、完全体ばっかだけど全然やる気が感じられないんだけど?戦いにしたって作ったらすぐバイバイだし」
「一乗寺治に対する忠誠心がないことに対しての分かり易すぎる証拠ですけど。正直何を考えているのかさっぱりですね」
京と伊織は微妙な表情を浮かべて言う。
治の基地跡に残ったダークタワー(大半はデュナスモンのドラゴンコライダーで塵一つ残さず蒸発した)を使って完全体のオオクワモンを出して以来、大体は完全体ばかりが相手だ。
まあ、回収して改良した暗黒のデジメンタルで思う存分暴れられるようになった大輔達の敵ではないため、正直アルケニモンが何を考えているのかさっぱりだ。
「そしてこのメール…“私に会いたいのなら、ギガハウスにいらっしゃい。あんたらの聞きたいことに答えてやるわ”…って、これって…罠…だよね?」
ヒカリがアルケニモンからD-ターミナルに送られてきたメールに複雑な表情。
「もしこのメールが本当だったら流石に変態仮面が哀れに思えてくるね。味方にあっさり売られてるよ」
「……行くしかねえかな?これ?」
完全に愛想を尽かしたはずの賢ですらあまりの人望の無さに哀れむようにメールを見つめる。
微妙な表情で全員を見遣る大輔に頷く子供達。
早速アルケニモンに指定されたギガハウスに到着。
「良く来たね選ばれし子供達」
「おう、取り敢えず来たぞ。一体何の用だ?」
「そこまで警戒しなくてもいいじゃないか。私はあんたらには礼を言いたいくらいなんだからさ」
【は?どういうこと?】
いきなりそんなこと言われても自分達はダークタワーデジモンを倒したりと、アルケニモンの怒りを買いそうなことをしても礼を言われるようなことは一切していないはずだが?
「あのクソガキの要塞をぶっ壊してくれたじゃないか。おかげであんな薄暗い所から予想より早くおさらば出来たよ。」
「あのさ、あんた何者なんだ?人間…じゃないよな?ダークタワーをデジモンに出来るくらいだし」
「ああ、そうさ。既に分かってると思うけど私は…後もう1人いるけど人間じゃない。私は…」
アルケニモンの輪郭が言葉と共に変化してアルケニモンの正体を現した。
帽子は尖った角に、巨大な胴から6本の脚が生え、指は獣のような鋭い鈎爪に。
「人間に擬態していたのかい?」
「そうだよ。あんたの兄が与えた能力さ」
「あの変態仮面が?」
「そうさ、人間に擬態すれば力も抑えられる。私は一乗寺治の遺伝子情報を基にして作り出された人造デジモンだ。」
「じゃあ、キメラモンと同じなの?」
タケルの問いにアルケニモンは首を横に振る。
「似ているけど違うよ。私ともう1人は一乗寺治の遺伝子情報を基にしてデータの構築から始めたのに対して、キメラモンは既存のデジモンの継ぎ接ぎだからね。まあ、人造デジモンである点は変わらないけどね。」
「ところでお前があの変態仮面の作ったデジモンならどうして俺達に好意的なんだ?」
「あんたらがあのクソガキを倒してくれると期待してるからだよ。あのクソガキは私とマミーモンを作って間もなく薄暗い基地の中に押し込めやがったのよ。出してくれって言ったら創造主の僕に指図するなとか癇癪を起こして喧しかったよ」
「愚兄がすみません」
兄の恥ずかしい姿を想像してアルケニモンに頭を下げる。
「兄貴よりはまともだね。あんた」
「さて、話はこれで切り上げて…俺達をギガハウスに呼んでどうするつもりなんだ。」
「そうね、私もこういう腹の探り合いはあんまり好きじゃないし、単刀直入に言うよ。私が出すダークタワーデジモンを倒して私達を自由にして欲しい」
【自由?】
「私とマミーモンには創造主のクソガキの命令を実行するためのプログラムがあるのさ。だから、“ダークタワーを使い、デジタルワールドを浄化”と言う命令がある限り、私とマミーモンはあのクソガキの呪縛から逃れられない。だからあんた達にはダークタワーを全てぶっ壊してもらいたいのさ。デジタルワールド全てのダークタワーをぶっ壊したのを確認したら私達はすぐに身を隠す。後はあんたらがあのクソガキを煮るなり焼くなり好きにしな」
「はあ…?あなた達はそれでいいの?一応生みの親でしょ?」
「はん!!生みの親!?生まれて間もなくあーんな薄暗い基地の中で約2年間も缶詰めだよ小娘!?私は本気で退屈で退屈でストレスで死ぬかと思ったんだ!!正直体の中にこんなくそったれプログラムが無けりゃあ私達が直々にあのクソガキを懲らしめたいくらいよ全く!!あんたらに分かるのかい?娯楽も何もない悪趣味な基地の中でただただ無意味な時間を過ごしていかなきゃならない退屈さと苦痛が!!さあ、答えなさいよ!!答えてみなさいよ畜生!!」
ヒカリの問いにアルケニモンが怒りのオーラを迸らせながら叫んだ。
因みにストレス発散のためにマミーモンが酷い目に遭っていたりする。
「ご、ごめんなさい…」
【す、すみません…】
「まあまあ、落ち着けってアルケニモン。ほら、喫茶店・MITSUBACHIのパンケーキ」
「ああ、マミーモンかい…ご苦労だったね…」
ミイラ男を思わせるマミーモンが箱に入ったパンケーキをアルケニモンに渡す。
アルケニモンは渡されたパンケーキをやけ食いした。
「とまあ、こんな感じで。俺達の自由のために手伝って欲しいんだ。前線基地も無くなって俺達とダークタワーも無くなればあいつは何の力もないただの子供だからな。」
「まあ、頭がただ良いだけの子供だよねあの変態仮面」
タケルがマミーモンの言葉に頷いた。
「ただ最近、俺達が負けっぱなしだからか目を光らせ始めているんだ。だから次はもっと強力なデジモンを出すから頑張ってくれ」
「もぐもぐ…ダークタワー10本で完全体だから更に10倍の100本のダークタワーで究極体かね」
「軽いなあんたら。まあ、俺達も準備しとくよ」
こうして選ばれし子供達とアルケニモン達の密会は終わった。
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