デジモンアドベンチャー Miracle Light
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第30話:メタルシードラモン
シェルモンの軽い犠牲の際に出た副産物である魚を全て平らげた子供達とデジモン達。
これからどうするかと頭を悩ませていた子供達だが…。
「なあ、ブイモン。お前何してんだ?」
「技の継承みたいなもんさ」
メタル属性のデジメンタルはデータのみの炎、雷、神聖属性のデジメンタルと違い、実体化させることが出来るのだ。
ブイモンはメタル属性のデジメンタルを輝かせながら意識を集中した。
「技の継承って何?」
「ほら、ダークマスターズとの初戦でマジックゲームって言う分身を作り出す技を使ったろ?あれは元々ウィザーモンの技なんだ。まあ、メタル属性のデジメンタルの中にウィザーモンのデータがあるからだし、マグナモンの時にしか使えないんだけどな」
「ウィザーモン…」
「馬鹿」
少し暗い雰囲気になりかけたテイルモンの額にデコピンをお見舞いした。
「痛っ!?」
「そのしょんぼり顔は止めろ。似合わないから」
「何ですって!?」
「お前は何時も通り偉そうな顔してればいいんだよ。何時も通りで時々笑えば…きっと、それがウィザーモンにとっても救いになると思うからさ」
「……そう、ね…」
「まあ、話は戻すけどウィザーモンのデータ…もとい魂とのシンクロ率を高めて新たに技を継承したんだ。その技はサンダークラウド。ウィザーモンの場合は成熟期だからか杖の先に小さい雷雲を作り出して放ってたけど本来は雷雲を呼び出して雷を対象に叩き込む技なんだ。」
「それは知ってるけど、サンダークラウドなんて覚えてどうするのよ?ウィザーモンを馬鹿にする訳じゃないけど成熟期の技を覚えてどうするつもり?」
テイルモンからすればマグナモンにとって下の世代の成熟期であるウィザーモンの技を継承してどうするのだろうかと疑問符を浮かべている。
「そう馬鹿にしたもんでもないぞ?下の世代の技の方が完全体や究極体より性能が優れているのもあるし、完全体に進化しても成熟期の技を多用するデジモンもいるくらいだしな。確か、現実世界で戦ったパンジャモンだったかな?レオモンの色違いの完全体。」
確か去年に現実世界で戦ったレオモンの完全体の1体であるパンジャモン。
色違いであることを除けばまんまレオモンのためにレオモンの技を使うことが出来たのだ。
特に獣王拳を100発繰り出すレオモンも使える百獣拳は鬼畜性能でした。
「成熟期の技でも使い手によって威力が跳ね上がるから、マグナモンに進化した俺ならオリジナルの数十倍の威力になるはず」
「なる程」
「メタルシードラモンは海のエリアを支配してるんだ。だから雷は効くと思うぞ」
「ああ、確かにそうね。でもあんた。メタルシードラモンに当てることが出来るの?覚えたてなんでしょ?」
「メタルシードラモンに関しては命中率云々は気にしなくていいと思うぞー」
「?」
その言葉にはテイルモンだけでなく、全員が疑問符を浮かべた。
「考えてみろよ。水の中にいて水の属性持ち、おまけに金属の装甲を纏っていて自分で“私は雷が弱点で~す”って自己主張しているような馬鹿に当たらないで誰に当たるんだよ?」
【…………】
身も蓋もない言い方に子供達も他のデジモン達も黙るしかなかった。
「あの~」
【ん?】
光子郎が言いにくそうに手を上げてきた。
「何かね?光子郎君?」
「僕も対メタルシードラモンで調べたんですがウォーグレイモンもメタルシードラモンを倒せる可能性がありそうなんです」
ブイモンの問いにパソコンの画面を全員に見えるようにしながら光子郎が説明した。
「ウォーグレイモンの両腕に装備されている“ドラモンキラー”何ですが、これは竜系のデジモンに有効な武器らしいんですよ。これならメタルシードラモンに有効打を与えられるんじゃないかなと……」
「なる程な~。確かにメタルシー“ドラモン”だしな。確かに通用するかも」
「でしょう?なら、マグナモンとウォーグレイモンがコンビを組んで戦えば……」
「よし、却下♪」
「やっぱり却下ですか…って、ええ!?」
まさかの却下に光子郎はパソコンを落としそうになる。
「だって俺、基本的に単独で戦ってきたからコンビプレーは得意じゃないしな。どうせ戦うなら気ままに戦いたいから却下」
「まあ、賢とワームモンは田町だからどうしてもブイモンだけで戦わないといけないから…」
「コンビプレーなんかあまり出来なかったよね」
「勿論、アグモンが足手まといって訳じゃないぞ。アグモンの力は信頼してるし、ただ俺がコンビプレーが出来ないってだけだから」
「コンビプレーとかそれ以前だったね僕達」
ワームモンも単独戦闘が圧倒的に多いので、コンビプレーは苦手だからブイモンの言いたいことは理解出来る模様。
「まあ、今回は俺に任せとけ。さあ、来るなら来いメタルシードラモン!!この俺に時間を与えたことを後悔するように焼き魚ならぬ焼き蛇にしてくれるわー!!」
「アノマロカリモーン!!」
「む!?」
海の家から飛び出してきたデジモン…大輔達から見れば久しぶりに見るアノマロカリモンが子供達に迫る。
「あ、あの海の家は罠だったのか!?危なかったぜ…」
「ブイモンのおかげで助かったね」
太一の隣でアグモンが呑気に巨大な魚を丸飲みしながら呟いた。
「メタルシードラモン様からの命令だ!!お前達を捕k…」
「シャイニングゴールドソーラーストーム!!!」
マグナモンの一撃によりアノマロカリモン退場。
「さあ、来い。メタルシードラモン。勝負だ!!」
マグナモンの声に応えるようにメタルシードラモンが飛び出してきた。
「良いだろう!!ここが貴様の墓場となるのだ!!」
アノマロカリモンがあっさり失敗したので他の部下を差し向けても瞬殺されるのがオチだと思ったメタルシードラモンは自ら出向いてきたのだ。
「ようやく現れたかメタルシードラモン。この俺に倒されにな」
「ふん、自信過剰な奴だ。前回の俺と同じだと思っていると痛い目に遭うぞ!!このエリアならば俺の力が大幅に強化されるのだからな!!」
「自信過剰はお前の方だ。たかが雀の涙程度の強化がされたところで木偶の坊のお前が俺に勝てると思っているのか?」
強烈な挑発を叩き付けるマグナモンにメタルシードラモンは歯軋りし、マグナモンに飛びかかる。
「後悔するなよマグナモン!!」
「それはこっちの台詞だ!マグナムパンチ!!」
メタルシードラモンの顔面にマグナモンの鉄拳が叩き込まれた。
「ぬぐっ!貴様の鎧と同じクロンデジゾイド合金の装甲だ…そう簡単に砕けると思うな…!!」
「その割にはしっかりとダメージを受けてるようだな?メタルシードラモンさんよ?」
「黙れ!!」
打撃自体は耐えられても内部に走る衝撃でダメージを受けたらしい。
メタルシードラモンは再度襲いかかるが、マグナモンは回転し、遠心力を加えた蹴りをメタルシードラモンの横面に叩き込んでご自慢の装甲を大きくへこませた。
「があっ!?」
「同じクロンデジゾイド合金でも金属の質が違うんだよ。俺の鎧のクロンデジゾイド合金をお前の粗悪合金と一緒にするな」
マグナモンの鎧とメタルシードラモンの装甲は確かに同じクロンデジゾイド合金。
しかし、使われている金属の純度が桁違いなのだ。
特にマグナモンはロイヤルナイツの守りの要である以上、鎧に使われているクロンデジゾイドは並みの究極体に使われる物より高純度なのである。
「さあ、今度は逃がさない。ピノッキモンの後を追わせてやるよメタルシードラモン」
「ほざけ!!アルティメットストリーム!!」
「ライトオーラバリア!!マジックゲーム!!」
メタルシードラモンのエネルギー砲をバリアで防ぎながら分身を作り出し、分身達が鎧のミサイル格納部を展開し、両手に作り出したプラズマ弾を放つ。
「「「「「プラズマシュート!!」」」」」
40発のミサイルと5発のプラズマ弾が必殺技を放って無防備なメタルシードラモンに炸裂。
「ぐああああ!?」
メタルシードラモンは無防備な状態でミサイルとプラズマ弾の直撃を受けて海に沈む。
「逃がすか!!」
マグナモンもメタルシードラモンを追い掛けて海に飛び込んだ。
「いけません!!水中ではメタルシードラモンの…」
「大丈夫です光子郎さん。あいつには何か考えがあるんですよ。だから水中に…」
大輔がマグナモンに何か作戦があるのだと光子郎を止めた。
「ふははは!!馬鹿め!!この俺の得意なフィールドにわざわざやってくるとは!!」
水中ならメタルシードラモンは地上より速く動けるのか縦横無尽に泳ぎ回る。
「なる程、中々速い」
メタルシードラモンの突進をかわし続けるマグナモンに嘲笑を浮かべ、勝利を確信したメタルシードラモン。
「他愛ない!!マグナモン、これで最期だ!!」
「お前がな」
突進しながら口を大きく開けたメタルシードラモンに手を翳すとメタルシードラモンは半透明の金色の球体に閉じ込められた。
「な、何だこれは!?」
「ライトオーラバリアの応用さ。お前をバリアの中に閉じ込めた…生憎お前の動きを捉えるのは簡単なんだよ。ただこのまま終わらせるのも可哀想だから良い夢を見させてやっただけさ、勝利を確信する夢を見られたんだ?良かったろ?」
マグナモンは残った片手を空に翳すと雷雲を呼ぶ。蒼い雷が轟音を鳴らした。
「さて、覚悟はいいな?」
「ま、待て!!馬鹿め、水中では貴様もただではすまんぞ!!」
「自分の技でやられる馬鹿はいない。それにいざとなれば自分にバリアを張ればいい。それじゃあメタルシードラモン。あ・ば・よ。サンダークラウド!!」
天から降り注ぐ無数の雷。
マグナモンはメタルシードラモンのバリアを解除し、メタルシードラモンが逃げる間もなく炸裂した。
「ぐあああああああ!!?」
断末魔の悲鳴を上げながらメタルシードラモンはデータ粒子となった。
「やった!マグナモン!!」
「ダークマスターズとの初戦のおかげで力を大分扱えるようになったようだね」
「でもマグナモンの力はまだまだこんなもんじゃねえ。この調子でもっともっと強くなってダークマスターズを倒そう!!」
「うん。ピッコロモンが言っていたように経験だね!!」
ヒカリがマグナモンの圧勝を喜び、賢は感心したように呟き、大輔はまだまだ強くなれると確信した。
ヒカリの最後の言葉にマグナモンから退化したブイモン達が頷いた。
その時、ここら一帯が大きく揺れた。
「何だ!?」
「地震…いや、これはあの時と同じ…」
「皆さん!!」
【ホエーモン!?】
「「「?」」」
突如現れたホエーモンに世話になった子供達は驚き、初対面の3人は疑問符を浮かべた。
「メタルシードラモンが倒されたことで海のエリアが消滅しようとしています。私が別のエリアに運ぶので急いで下さい!!」
「よ、よし!!みんなホエーモンに乗り込め!!」
太一の指示により、全員がホエーモンに乗り込んだ。
全員が乗り込んだことを確認したホエーモンはすぐさま移動する。
マグナモンがメタルシードラモンを倒したことにより海のエリアが無くなり、これで森と海のエリアを解放したことになる。
そして、しばらくして…。
「……ぐお~」
「おい、初っ端から寝るんじゃねえよ」
いきなり寝ているブイモンに太一がツッコミを入れた。
「く~」
「ワームモンも寝ているわ」
丸まって寝ているワームモンを指差す空。
「こいつら暇さえあれば寝てるよな。食って遊んで寝て…いや寝るの比率が大きいか…?」
取り敢えず近くのエリアまでホエーモンに乗せてもらっていた子供達だが、ブイモンとワームモンのことに気付いていた。
「最近疲れが溜まっているようですねブイモンとワームモン。」
「そりゃあお前…今まで現実世界で戦ってきたらしいし、ヴァンデモンとの戦いの後、すぐにこっちに来たんだから疲れて当然だろ」
「それにしても寝過ぎじゃないかい?眠りすぎなのも体に良くないよ」
ヤマトの言葉に丈がブイモンとワームモンを見遣りながら呟く。
そこにゴマモンがマジックペン片手にブイモンに歩み寄る。
「ゴマモン、何する気?」
「いや~、こいつにはボコボコにされたりしたから悪戯で仕返ししようと」
ミミの問いにゴマモンはニヤリと笑いながら言う。
「今度こそ殺されるぞお前」
太一はビッグサイトで不用意な発言をしたことでボコボコにされたゴマモンを思い出し、今度はボコボコにされるだけじゃ済まないと確信した。
「大丈夫大丈夫!!みんなが黙っていてくれれば…」
「でもホエーモンの中には僕達しかいないからブイモンは僕達を真っ先に疑うよ?」
「あ…」
タケルの言葉にハッとなるゴマモン。
確かにホエーモンの体内には今自分達しかいないので真っ先に疑うのは自分達。
「僕は嫌ですよ。ブイモンの頭突きを受けたりワームモンの糸で雁字搦めにされたりなんて」
光子郎は嫌そうに呟く。
誰だって木を薙ぎ倒す頭突きを受けたり粘着質の糸で雁字搦めされるのは嫌だろう。
「…くっ、でもこのチャンスを逃したら復讐のチャンスは…ぶげらっ!?」
「むにゃ~」
ブイモンは戦っている夢を見ているのか拳がゴマモンの顎に炸裂し、見事にぶっ飛ばされた。
「ほら言わんこっちゃない」
丈が目を回して気絶しているゴマモンを見遣りながら呆れたように呟く。
「でも実際、ブイモンは強かったわね。このまま残りのダークマスターズまで倒してしまいそうな勢いだわ。1人で…」
「それで良いのか…?」
「え?」
空の言葉に反応したヤマトは小さく呟く。
「大輔と賢の歳を思い出せよ。まだ小学2年生。タケルと同い年なんだぞ。どんなにパートナーのブイモンとワームモンが強くても本当なら俺達が守ってやらなきゃいけない方なんだぞ」
【あ…】
太一達の視線は常に3人1組でいる大輔達。
慣れない環境で疲れているのか、太一達から少し離れた場所で体を休めている大輔達。
「大輔も賢も慣れない場所で疲れてるかもしれない。それなのに俺達がそれに甘えていて良いのか?ヴァンデモンとの戦いもそして今の戦いも…足を引っ張ってばかりじゃないか」
実際メタルシードラモンの時もブイモンが止めなかったら自分達は確実に海の家に向かって罠に嵌まっていた。
と言うか何故あの時の自分達はあんな怪しさ満点の海の家に行こうとしていたのだろうか?
疲れていたのだろうか?
「だよなあ、よし。陸に着いたらアレをしようぜ」
【アレ?】
「ピッコロモン流に言わせれば修行だよ修行。戦いの経験が足りないなら自主練で補うんだよ!!」
「そんな~、またあんな階段登るの~?」
「私、努力嫌い…」
「おいら根性ないし…」
「いや、階段関係ねえし…後、そこ!!マイナス発言すんな!!やる気なくなるだろうが!!」
パルモンとゴマモンのマイナス発言に太一がズビシと指差しながら叫んだ。
「それで?」
「え?」
「“え?”じゃないですよ。肝心の修行内容はどうするんですか?」
「あ…」
「考えてなかったんですね…まあ、あんまり派手なことをすれば気付かれるかもしれませんから、今までのデジモン達の成長のことを考えれば進化を繰り返して戦わせる…でしょうね。今の僕達には2つの選択肢がありますね。1:わざと遠回りをして進化と戦いの経験を積んでパワーアップ。2:このまま進んで大輔君達に頑張ってダークマスターズを倒してもらう…ですね」
「1だよ1!!2は却下だ!!悔しいけど大輔に何かあったらヒカリが泣くからな!!悔しいけど却下だ!!」
「兄貴としての本音が出てるぞ。まあ、俺も1だな、ホエーモンには悪いけどルート変更だな」
「ええ~…そんなあ…」
「ミミちゃん。頑張りましょう?ミミちゃんだって大輔君達ばかり危険な目に遭わせたくないでしょ?」
「はあい…」
こうして遠回りしての自己強化ルートを選択した子供達だが、そこで思わぬ存在と出会うことに。
ページ上へ戻る