デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第20話:引き離される大輔
前書き
まずは倒せそうな敵から仕留めるのは戦術の基本
お台場と田町が原因不明の霧に覆われていることによって騒ぎとなっている中、霧であまり視界が良好ではないことを利用してパートナーと共に堂々と街を歩いている賢の姿があった。
「どうやら田町全体がこの濃い霧に覆われているようだね。」
「うん、しかも…」
大量のギザモンやバケモン、かなり強力な個体のスナイモンやタスクモンが彷徨いている。
おまけに完全体のファントモンやマンモンまで。
「ワームモン、狙いは間違いなく…」
「僕達選ばれし子供とパートナーデジモンだろうね。多分ヴァンデモンの仕業だよ。」
「多分どころか確実だね。…来るよ賢ちゃん!!」
賢とワームモンを発見すると、此方に向かってくるデジモン達。
「やれやれ…質より量かい!?ワームモン、薙ぎ払うんだ!!」
「うん!!ワームモン進化、スティングモン!!スティングモン超進化、ジュエルビーモン!!」
ワームモンを一気に完全体へ進化させ、即座に迎撃させる。
「スパイクバスター!!」
槍を横薙ぎし、巨大な衝撃波で迫り来る敵を吹き飛ばしていく。
マンモンが氷のブレスを吐くが、ジュエルビーモンは飛翔してかわし、脳天に斬撃と衝撃波を見舞う。
凄まじい衝撃が脳を揺さぶり昏倒させる。
「はあっ!!」
続いて槍による連続突きでギザモンを仕留める。
見ようによっては銛で魚を捕獲しているようにも見えた。
「ジュエルビーモン、後ろだ!!」
「分かってる!!」
後ろから迫るスナイモンを縦回転斬りで真っ二つにして少し離れた場所にいるタスクモンに高速連続蹴りを繰り出して吹き飛ばす。
「つ、強い!!こちらの数は勝っているのに何故!?」
「数で勝っていても質で負けていればこうなる!!」
デジモン同士の戦いの場合は人間以上に数より質が重視される。
格下の攻撃では大して決定打にならないために、いかに相手を上回っているのかが基本的に勝敗を分けるのだ。
「ヴァンデモンと戦う前の準備運動には良かったよ!!大分ジュエルビーモンの体が温まって来たようだしね」
「…丁度彼らも来たようだよ賢ちゃん」
「ライトニングブレード!!」
高速で駆けてきたライドラモンが電撃刃を繰り出して、バケモンを数体両断した。
「大輔、ライドラモン。何しに来たんだい?」
「お前を助けに来たんだよ。どうやら心配の必要はなかったようだけどな」
仲間が加勢に来たことで残りのデジモン達はたじろぐ。
「さて、ここから先は俺も一緒に戦うぜ賢。早く終わらせてヒカリちゃん達と一緒にヴァンデモンを倒さないとな。デジメンタルアップ!!」
「アーマーチェンジ、サジタリモン!!」
暗黒系のファントモンや頑丈なマンモンもいるようだし、聖なる力と高い攻撃力を持つサジタリモンの能力が活かせそうだ。
「さあて、たっぷり味わいな!!ジャッジメントアロー!!」
聖なる光を纏った矢は見事にファントモンを貫く。それだけでなく背後のマンモンまで貫通した。
「スパイクバスター!!」
サジタリモンに続くようにジュエルビーモンも槍を連続で振るって敵を片付けていく。
「ヴァンデモン様に深手を負わせた選ばれし子供とパートナーデジモンの力が…これ程とは…!!」
1体のファントモンがかなりの勢いで減っていく軍団達を見つめながら呟く。
「へっ!運が悪すぎたな、ヴァンデモンの手下共!!メテオギャロップ!!」
「お前達にこれ以上賢ちゃん達の世界を滅茶苦茶にはさせないぞ…!!」
サジタリモンとジュエルビーモンが技を繰り出す度に敵の数はどんどん減っていく。
そしてジュエルビーモンは敵を一カ所に集めるように動いている。
「僕達がいる限り好き勝手出来るとは思わないことだね!!」
「とどめだ、サジタリモン!!」
「取って置きをくれてやる!!こいつで終わりだ!!ジャッジメントアロー!!」
大規模の聖なる光を矢に纏わせて弓につがえ、そして勢いよく放たれた矢は一カ所に纏められた敵を一掃した。
「ふう…」
「残っているのはいないようだね。ありがとうサジタリモン、大輔。君達がいなければもっと時間が掛かっていたかもしれない。」
「気にすんなよジュエルビーモン。仲間なんだから助けるのは当たり前さ。」
「ところで賢、もう気付いてるとは思うけどさ」
「ああ、この異常な光景は間違いなくヴァンデモンの仕業だね…田町にここまで戦力を投入して来るとは…余程僕達にやられたのが腹が立ったのか…それとも…」
「?」
「僕と大輔を太一さん達から引き離すことが目的?」
「あ…」
「僕がヴァンデモンの立場ならまず確実に潰せる方から攻めるね。その後、苦戦しそうな相手の場合は…」
「機会を見て、狙う…だよな?」
「………嫌な予感がする。一度お台場のみんなの所に急ごう。」
大輔はサジタリモンに、賢はジュエルビーモンに乗り込んでお台場の仲間達の元に向かうのだった。
少し時間を戻し、大輔達が田町にいる頃、ヴァンデモンは神経をお台場全体に回していた。
「妙だ…何故、選ばれし子供達とパートナーデジモン達の気配が無いのだ?」
ヴァンデモンは霧の結界の力で己の能力を数段強化することに成功し、それによって拡大した感知能力で選ばれし子供達の居場所を探っていたのだ。
大輔とライドラモンは田町に向かい、お台場から引き離すことには成功した。
厄介な2組がいないうちに片付けてしまおうと考えたのだが、選ばれし子供達の何人かの反応がないのである。
反応を捜している最中にビッグサイトに集めた人間達が暴れ始めたらしく、お台場に残した戦力をそちらに回して鎮圧させようとするが、捕らえた選ばれし子供のパートナーデジモンのパルモンが完全体への超進化を成功させ、ダークティラノモンを無力化してしまう。
代わりにヴァンデモン自身が出向いてダークティラノモンを始末し、リリモンを石化させた。
もう1人の選ばれし子供は逃してしまったが、今は他の選ばれし子供達の位置を知ることを優先した。
「…む?選ばれし子供の気配が1つ増えた…?逃げ出した子供の近くまで来ているようだ…ふむ…」
ヴァンデモンは少しの間、黙考する。
「泳がせてみるか、もしかすると奴らが身を隠しているのかも知れんしな」
気配を消し、ピコデビモンを伴いながら逃げ出した選ばれし子供、空を追うヴァンデモン。
大輔と賢がお台場に戻るのを遅らせるために大半の戦力を田町に向かわせたので残りのデジモン達にビッグサイトの監視を任せながらだ。
一方、建物の中に身を潜めていたヒカリ達は…。
「大輔君達、大丈夫かな?」
「大丈夫だヒカリ。彼らが心配なのは分かるが、彼らは強い。信じて帰りを待つんだ。ところで霧の発生源は…」
「ああ、調べてみたが、やはりテレビ局のようだ。」
悠紀夫がパソコンの画面を向けると霧の結界の発生源はテレビ局らしい。
「テレビ局って、親父がいる!!」
霧の結界の発生源がテレビ局だと知ったヤマトは慌てる。
「待て、選ばれし子供が全員揃っていない。ヴァンデモンと戦うにしてもせめて大輔達が来るまで待つんだ。」
確かにガブモン達は強いが、戦闘経験の差なのかブイモン達には実力が劣る。せめてヴァンデモンと戦うには最高戦力となる2人と合流してからの方がいいとウィザーモンは判断した。
「おい、姐さん!!あれを!!」
「人間の女の子とバードラモンだ!!」
「空さん!!」
チャックモンとハニービーモンの言葉にヒカリが反応し、上を見上げると空とバードラモン、そしてヴァンデモンに石化させられたリリモンがいた。
「ヒカリちゃん…と、あなた達は?」
空の視線が悠紀夫達とテイルモン達に向けられる。
「俺達は君達の協力者さ、君達が大輔君とヒカリ君達の仲間だね。俺は及川悠紀夫。君達程ではないが、デジモンと接触した経験がある。」
「え!?そうなんですか!?」
「まあ、それについては追々話すとして…この妖精のようなデジモン…体が石になっているようだが…」
「あ、はい…実はヴァンデモンにやられて…」
「私に診せてくれ、私の治癒魔法、マジックヒールならば石化を解除出来る。どうやらヴァンデモンのデッドスクリームを受けたようだな」
「ウィザーモン、お願い」
ヒカリがリリモンの治療を頼むとウィザーモンも頷いた。
「ああ………マジックヒール」
ウィザーモンは治癒魔法をリリモンに施し、リリモンの石化を解除する。
「あれ…?私…」
石化が解除されたことでリリモンは自由に動けるようになった。
「これで動けるようになったはずだ。後は他の子供達を待つだけ…」
「その必要はない」
【!?】
真上から聞こえてきた冷たい声に全員が上を向くと、そこにはヴァンデモンが冷たい表情で此方を見下ろしていた。
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