ゲーテの創作
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三章
「そして戦争においてです」
「恰好のよい結末を与えたのか」
「そうしました」
「実際はかなり長生きしたのにな」
八十過ぎまでというのだ。
「そうしたのだな」
「人は時としてです」
「若くして死ぬ方がか」
「絵になる時もあるので」
「作品としてはか」
「そうしました」
作品として、というのだ。
「その方が面白いので」
「だからか」
「そうです、あの様に書きました」
「何から何まで変えてか」
「そうしました」
「成程な」
「そして作品としてはどうでしょうか」
「名作だ」
貴族はゲーテの今の問いに即座に答えた。
「皮肉抜きで言うが」
「名作ですか」
「はっきり言える」
まさにというのだ。
「素晴らしい作品だ」
「そうですか」
「君の文才が如何なく発揮された」
そこまでというのだ。
「いい作品だった」
「それは何よりです」
「しかし。面白いならか」
「はい、時として史実と違うことを書きましても」
「許されるか」
「物語は」
「そうしたものか。しかしそれは面白いならだな」
ここでこうも言った貴族だった。
「若しそれで面白くないなら」
「その時は決まっています」
ゲーテは複雑な顔になった貴族に笑って述べた。
「即座にです」
「面白くないと言われてか」
「否定されます」
「そうなるか」
「それが物語というものです」
ゲーテは貴族に笑って話した、そして彼の家の者が入れてくれたワインを美味しそうに飲んだ。そのうえで次もまたよい物語か詩を書こうと思うのだった。
ゲーテの創作 完
2018・6・12
ページ上へ戻る