人徳?いいえモフ徳です。
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二十一匹め
「シラヌイ。話がある」
「どったのボーデン?」
風呂から上がると、ボーデンがシリアスな顔をしていた。
「お前のスキルの事だ」
ボーデンはバスローブのまま、僕にステータスプレートを手渡した。
「そこのスキル欄。<エナジードレイン>ってあるだろ?」
エナジードレイン?
ステータスプレートを確認すると確かにそう書いてある。
「知ってたか?」
「全然」
「だろうな。それ、タマモ様が封印していたスキルらしいぜ」
「そうなの?」
「お前の記憶が解放されたのと同時に解かれたそうだ」
なるほどー。
「理由は、危険なスキルだからだ」
「魔力の過剰供給とか?」
「いや、無意識に発動する場合だ」
「これってパッシブスキルなの?」
「半パッシブスキルだ」
半…。
「恐らく、お前が望めば様々なエネルギーを吸いとれる。
それは別にいい。問題は、無意識に他者の魔力を吸うことだ」
まるで某猫委員長だなぁ。
「正確には、お前の魔力が不足している場合、触れた者の魔力を急速にすいとる」
「へ━━」
「真面目に聞け。もう少しでメリーが昏睡する所だったんだぜ」
え……? 今なんて言った? メリーちゃんが昏睡?
「どういう事ボーデン!?」
気付けばボーデンに掴みかかっていた。
「落ち着け。話を聞け」
ボーデンの手が僕の手に重なる。
「まぁ、ただの魔力切れで済んだから大事にはなってない」
「そっか…よかった…」
「だから明日王宮に行くぜ。タマモ様に会おう」
お婆様か…うん…お婆様なら…。
「わかった…。行くよ。事は重大だね…」
「ああ…重大だ…。なんせこのままではお前をモフれない」
うん…僕をもふ……………
「ってやっぱそっちかよ‼ 僕のシリアスをかえせ!」
「滅茶苦茶シリアスだろうが! このままじゃお前を抱いて寝るだけで衰弱死だぞ!」
「抱くなよ!」
「 私をこんな体にしといてよく言えるなシラヌイ!」
「どんな体にしたって言うんだ!」
「モフモフがないと眠れない体にっ…!」
「死ねよお前! ケモナーでショタコンとか救い様のない変態じゃないか!」
もうやだコイツ!
「今日は抱き枕にしないが明日は必ずっ…!」
決めた。明日は寝る前に何か宝石でも錬成しよう。
「ぜったいさせないもん」
今日もなんか造っとこう。
うん……窓は開いてるね。
詠唱どうしようかなぁ…。
かっこよくて、それでいて分かりやすくて、手順が想像しやすくて…
いやそもそも何を作ろう?
「ボーデン。ダイアモンド錬成できる?」
「あん? できなくはねぇが……」
そっか、ダイアモンドは作って大丈夫なんだね。
じゃぁ、つくっちゃおうかな。
素手はあぶないから…
近くにあった皿を持つ。
「集え、集え、人の息。重なれ重なれ大気の灰」
ヒュゥッと風が吹いている。
吹き込んだ風が、お皿の上に集まる。
「集え、集まれ、姿を顕せ」
風魔法で二酸化炭素を集めて、液体化させる。
「重なり、結べ、形を成せ。
ジェネレート! ディアマント・ナイフ!」
液体二酸化炭素から炭素原子だけが引っ張られ、形を為す。
色々ごっそり持っていかれたけど、楽しい。
イメージを絶やさず、集中を途切れさせないよう注意を払う。
分子の強制分離とかに魔力を持っていかれているのがわかる。
さらには無理矢理ダイアモンドの分子構造を作っていくのも…
「鋭く、硬く、全てを切り裂く金剛の刃」
最後に、キンッ…と音がして、形が固定された。
刃渡り15センチ程の、純粋ダイアモンド製ナイフ。
液体酸素の入った皿を置き、隣にダイアモンドナイフを置く。
体のあらゆる物が消失した感覚だ。
ああ…コレが魔力切れなんだね…。
「お休みなさい。ボーデン」
その気だるさに身を任せ、僕は体から力を抜いた。
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