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別伝 キルヒアイスとアンネローゼの最後 中編


こっちの方が書きやすく、
塾長は考え中です。
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別伝 キルヒアイスとアンネローゼの最後 中編

帝国暦488年10月10日

ブリュンヒルトが宇宙の藻屑と消えたとき、
バルバロッサ内では走馬燈のようにアンネローゼとラインハルトとの思い出がキルヒアイスの頭の中を駆け回っていた。

呆然と成ったキルヒアイスに代わり、
参謀長ブラウチッヒがエンジン停止を命令し全艦隊に降伏を命令した。
次々に降伏していく旧ラインハルト軍。

一刻も早く降伏しないと怒りまくっているシュワルツ・ランツェンレイターに嬲り殺されるからである。特にクリエムヒルトを砲撃した艦は付け狙われ殆どの艦が撃沈された。
降伏後各艦は監視下に置かれ順次オーディンへ回航することになった。

貴族連合と家族達とラインハルト軍の幹部達はガイエスブルグ要塞から、
オーディンへ向かうように輸送艦に乗せられていく。
しかし、ジークフリード・フォン・キルヒアイスだけは総旗艦ヴェルザンディに搭乗させられ帰国する。

当初は自決も考えたキルヒアイスであるが、
アンネローゼ様の事を残しておけないと思いとどまり護送されていく。

航海中、ビッテンフェルトは大声でキルヒアイスとラインハルトを非難した。
ミッターマイヤーはラインハルトは幼年学校時からの因縁があったと独白した。
ロイエンタールは、夢破れたなと一言だけ話していった。

テレーゼ自身がやってきたのは、オーディンへあと5日の距離を残した時であった。
「キルヒアイス、卿が居ながらシェーンヴァルトの野心を抑えきれなかったとは残念だ」
「貴方に何が判るのですが、恵まれた生まれの貴方に」
「恵まれたか、フン。妾は3度も殺されかけて居るのじゃ、それでも恵まれたと言えるか」

「3度も・・・」
「そうよ3度じゃ。グリューネワルト伯爵夫人は一度もないではないか」
「アンネローゼ様は囚われていた、それでも恵まれていたと言えるのですか」
「キルヒアイスよ考えてみよ。
後宮に上がらず、あのままおれば遠く無い未来にアンネローゼはさらに過酷な運命を迎えたであろう」

「そんなこと私が」
「どうにか出来る年齢であったか?
あるまえ、何れアンネローゼは弟と父親を喰わせる為に春を売ったであろう」

「アンネローゼ様がその様な事をするわけがない!」
「落ちぶれた帝国騎士の娘の末路は大概そうじゃ、
アンネローゼだけが特別ではあるまえ」
「アンネローゼ様・・・・」

売春宿にいるアンネローゼを想像したのであろうか、
キルヒアイスが涙顔になっていく。

テレーゼは別にキルヒアイスを虐めに来たわけではない。
「キルヒアイスよ、アンネローゼの罪は弟が簒奪未遂と大逆未遂と不敬罪と言う事じゃ」
「アンネローゼ様は関係有りません!」
「そうはいかんのじゃ、連座があるのでな。卿の両親も連座じゃ」

「そんなアンネローゼ様、父さん、母さん・・・・」
「ただし言うておくぞ、卿が死んでも罪は変わらぬ。いや逆に残った者が責任を更に追及されよう。
つまりグリューネワルト伯爵夫人が簒奪と大逆を唆したとな」
「アンネローゼ様はそんな事はしない!」

「真実などは関係ないのじゃ、
卿が生きて法廷に立たなければグリューネワルト伯爵夫人が立つだけなのじゃ」
うなだれるキルヒアイス。

こうなれば生きて自分が罪を全て被り死罪と成ってもアンネローゼを守ろうと心に決めたのである。
「私が法廷で罪を認めればアンネローゼ様を助けて頂けるのですか?」
「良かろう、キルイアイスが罪を認めればアンネローゼは助けて遣わそう」

「約束です」
「判った」
キルヒアイスは自らの命をアンネローゼに捧げるのである。

同じ頃ノイエ・サンスーシ、グリューネワルト伯爵邸ではアンネローゼに対して自害等をしないように監視がつき軟禁されていた。
又キルイアイスの両親も自宅に軟禁されていた。

帝国暦488年11月20日

総旗艦ヴェルザンディ以下艦隊がオーディンへ帰還した。
そのままキルヒアイスは誰とも面会も許されずに、
憲兵隊で取り調べを受けラインハルトとの共同謀議を認めた上で自分が主犯であるとアンネローゼを守る為に独白したのである。

弁護人無し反論無しの裁判で出た判決は、簒奪犯、大逆犯、不敬罪で死刑が宣告された。
キルヒアイスは淡々と判決を受け入れ、心の中でアンネローゼ様は救われると安堵した。
そして父さんと母さんに迷惑をかけてしまった事を詫びていた。

帝国暦488年12月24日

キルヒアイスの銃殺は嫌みたらしく、
グリューネワルト伯爵邸の至近で行われる事になった。
アンネローゼは今も幽閉中である。

テレーゼも銃殺を見届けに来ていた。
キルヒアイスの両親も引っ立てられて来た。
キルヒアイスは涙ながらに両親に詫びた。

「父さん母さんゴメン」
それしか言えなかった。
両親も判ったと言うしか無い。

まず両親が壁に立たされ、銃殺隊により銃殺された。
「父さんー母さんー!!」
銃殺され崩れ落ちる両親。

それを見て泣くキルヒアイス。
テレーゼはつまらなそうに扇を弄っている。
それを見てキルヒアイスは怒りを覚える。

その時である、後方のグリューネワルト伯爵邸から黒煙が上がり始めた。
騒ぎ出す、宮中警備隊。
キルヒアイスもアンネローゼの事を考え蒼くなる。

1人テレーゼだけが冷静にその黒煙を見ていた。
暫くしてグリューネワルト伯爵邸から伯爵夫人を軟禁していた兵達が駆け寄ってきた。
テレーゼが誰何する。

「如何したのじゃ?」
「はっ、グリューネワルト伯爵夫人が全ての罪を認めて、
ご自害成されました、その際火災も発生し炎上中でございます」

自害。アンネローゼ様が自害・・・嘘だ・・・嘘だ・・・嘘だ!!!
キルヒアイスは胸が裂けるほど苦しみだす。
其処へテレーゼがとどめを刺す。

「存外アンネローゼも弱い女よ。自害とはな、ほんに期待はずれじゃ」
「何だと!」
キルヒアイスが怒りを上げる。

「どうせ謀反人として流刑じゃ。それに、そちの居ない世界はたえられんそうじゃな」
掴みかかろうとするが、駄目である。
それよりせめてアンネローゼ様を炎からお出ししようと体が動いた。

銃殺する為に拘束が解かれていた為、燃える館へ走り出した。
逃げるぞーの声が走る。
銃殺隊が銃を構えて止まれと言うがそんな事は構わない。

あと少しでアンネローゼ様の元へいける。あと少し。あと少し。
しかし、無情にもあと少しでキルヒアイスの体をブラスターが貫いた。
キルヒアイスは薄れていく意識の中で10歳の時のあの幸せだった日々を思い出しながら倒れていったのである。

 
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