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人徳?いいえモフ徳です。

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十三匹め

「んぅ………ん?」

目を覚ましたボーデンは手の中の暖かみが消えている事に気づいた。

「シラヌイ!」

ベッドから出てドタドタと部屋を後にする。

家中を探して、キッチンに行き着いた。

「あれ?起きたのボーデン?さっきからドタバタしてたけどどうしたの?黒光するGでも見つけた?」

シラヌイは台に乗って料理をしていた。

「はぁー…心配させやがって…」

「うゅー?」

「なんでもねぇよ…」

「ならいいけど…」

ボーデンがシラヌイの後ろに立ち、手元を覗いた。

鍋の中でスープが煮えていた。

「なに作ってるんだ?」

「肉じゃがを作ろうとしてビーフシチューになってトマトを入れすぎて最早トマトスープになった何か」

「は?」

「とりあえず使ったのは肉、玉ねぎ、人参、トマト。あとワイン」

「まぁ…いいけど。って待て!なんで酒の在処を…!?」

「酒精の匂いがぷんぷんしてたから。
僕って結構鼻が効くんだよ」

「ふぁっく」

「こらこら、若い女の子がはしたないよ」

「アタシはもう47だ!」

「ボーデン。まだ寝ぼけてるの?
逆サバを読むにしてもその顔つきで47はないでしょ。
せいぜい27って所かな」

「じゃぁもうそれでいいよ…」

シラヌイは夕飯を作り終え、振り返った。

「もう食べる?」

「もう少し後でいいぜ」

「そ。わかった」

シラヌイは踏み台から下りて、台を隅に置いた。

「それどうしたんだ?」

綺麗な木箱だった。

釘もきちんと打ってある。

「ちょっと裏庭の薪もらったよ」

「工具は?」

「土と石から錬成した。釘も一緒」

「魔力足りてんのか?」

「足りてなかったら倒れてるよ」

ボーデンはシラヌイを抱き上げて、ソファーに座った。

そして膝の上でシラヌイを腹這いにさせた。

「ふぁぁぁぁ…尻尾モフモフ…」

「モフるのはいいけどさ、優しくしてよね」

「おう…わかってるぞ…」

尻尾を撫で回すボーデンだったが、次第に根元辺りを触り始め…

「クリエイトアクア!
フェイズトランストゥソリッド!」

ボーデンの服の中に手を突っ込んだシラヌイは、その柔肌に手を押し付けて呪文を口にした。

「ひぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!?」

シラヌイは即座に獣化し、シュタッと床に下りた。

「きゅー!」

と抗議の声を上げるシラヌイを他所に、ボーデンは服を捲り上げ、自分の体に張り付いた氷を割っていた。

横は脇腹辺りまで、縦は腹部から鳩尾あたりまでが氷に覆われている。

「つめたっ!おいシラヌイ!アタシの瑞々しい御肌が凍傷になったらどうする気だ!」

「きゅぅ!」

シラヌイはプイッと顔を背けた。

「あぁ…もう…」

パリパリと氷を剥がしたあとのボーデンの腹は赤くなっていた。

ボーデンはソファーから立ち、戸棚から小瓶を取り出した。

中身は薄い赤で、仄かに光る液体だった。

中身を少し出して手に馴染ませ、患部へ塗る。

「おぉ…きくぅ…」

塗られた場所の赤みが急速に薄れる。

「きゅー?」

「ああ、これか?」

振り返ったボーデンがちゃぷちゃぷと小瓶の中身を揺らす。

「100倍希釈のエリクシールだ。ポーション変わりに丁度いいんだぜ」

「きゅぅ!?」

驚いた声を上げるシラヌイにボーデンが返答した。

「だって普通のポーションだと用途別でやんねぇといけねぇからよ。
だったらまだエリクシール作って薄めた方が楽って訳さ」

「きゅー…」

「大丈夫だって!どうせ自作だし!」

「きゅぅー?」

「おい、その目はなんだ。これでも国家錬金術師筆頭だぞ」

「……………きゅ?」

「嘘だろ、じゃねぇよ。アトリエにダース単位でおいてあるっつーの」

「…きゅっ」

「明日の朝お前の鼻からエリクシールの原液突っ込んで起こしてやる。キクぞぉー」

とボーデンがアホな事を言い、それを鼻で笑ったシラヌイは獣化を解いた。

「晩御飯にするよ」

と言ってキッチンへ。

「うーい」

「お皿どこー?」

「あー。ちょっと待ってな」

ボーデンが皿を鍋の横に置いた。

「ボーデン、パンあるなら切っといて」

「あいよ」

シラヌイは台に乗って、氷で作ったお玉杓子でスープを皿によそった。

その皿を少しよたつきながらテーブルへ。

「食べよう。ボーデン」

「おう」

ボーデンが切ったバゲットを皿に乗せ、テーブルに置いた。

二人は向き合うように座った。

「「いただきます」」

ボーデンはスプーンでトマトスープを掬った。

くんくんと匂いを嗅ぐ。

「ちゃんとアルコールは飛ばしてあるよ」

「おう、そうか」

「食えない物もいれてないよ」

「………………」

「おいボーデン。その信用できないみたいな顔はなんだ?」

「だってお前訳のわからん粉入れてたし…」

「あれは…ただ膨らむだけだよ。今回は魔法で煮込んだけどヤバイのは入れてないし」

「ふーん…何を使ったんだ?」

「風属性で疑似圧力鍋。仕組みはこんど話すけど、煮込みの時間を短縮できる。
まぁ、加減間違えて具材全部溶けたけど」

ボーデンは自分が食べているスープを改めて見た。

そしてスプーンで掬う。

スープだけだ。具がない。

「シラヌイ、ここまでやるなら、二日か三日はかかるはずなんだが」

「だからそれをショートカットしたのさ。
大丈夫。ヤバイものは入ってないし、ヤバイ魔法も使ってないよ」

「そうか…」

シラヌイはフンスッとドヤ顔をした。

「さ、たーんとお食べ、ボーデンちゃん」

「後で覚えてろよ…」

などと言いつつも、ボーデンはシラヌイの作ったスープをひどく気に入るのだった。
 
 

 
後書き
あぁ…テストおわったぁ…
終わったなのかオワタなのかはともかくとして…
最近衝動的にこのすばを書いてます。
例のごとく主人公は男の娘。
ヒロインは安楽少女。
気が向いたら投稿します。 
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