世界に痛みを(嘘) ー修正中ー
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最善にして最高の策
時計台に隠された爆弾を処理すべく、ビビは奮闘する。
爆弾の番人であったMr.7&ミス・ファーザーズデーペアは早々にご退場頂いた。
ルフィをクロコダイルへと飛ばしたアキトは、ナミ達と合流する。
ビビとペルーの2人とも合流し、行動を共にすることになった。
その後、身を潜めていたMr.7&ミス・ファーザーズデーの両者は時計台からその姿を現した刹那、瞬く間に撃破される。
眼下の戦場を意気揚々とした様子で見下ろしていた奴らを足蹴にし、アキトがその場に到着したのである。
しかし、爆弾は時限式であり、例え導火線を断ち切ろうとも意味などなかった。
己の無力に嘆き、ビビはクロコダイルに対して憎悪を吐く。
血が出るほど強く拳を握り締め、何度も地面に己の両手を叩き付けた。
事態が最悪のものであると理解し、アキトは既に満身創痍の状態ながらも、爆弾の処理を決意する。
焦燥した表情を見せるビビの肩に優し気に手を置き、アキトは爆弾へと歩み寄った。
血だらけの状態ながらも同じくこの場に到着したペルーの協力を経て、アキトとペルの2人は宙へと飛翔した。
爆弾をペルが抱え上げ、爆弾の処理をアキトが担当する役割だ。
「手筈通り頼むぞ、アキト君!」
「ええ、分かっていますよ、ペルさん」
ペルは爆弾を真下のアキトへと投下する。
後はアキトの能力にて天高く吹き飛ばし、事なきを得るだけだ。
これが現状考えられる最善にして最高の策である。
アキトは疲労困憊の身体に鞭を打ち、手をかざし、現状放てる最大限の威力の衝撃波にて爆弾を吹き飛ばした。
遥か彼方、被害が及ばない上空へと
あと数秒で大爆発を引き起こす爆弾の余波から身を守るべくアキトはペルの下へと歩み寄る。
「……!?」
しかし、そう取り繕うのも此処までだ。
後は自分一人で対処する。
ペルさんには申し訳ないが、この場からご退場願おう。
能力込みで彼の襟首を掴み、ビビが見上げている時計台へと勢い良く投げ飛ばす。
少し手荒であるが許して欲しい。
見ればペルは理解が出来ないと言わんばかりの表情で墜落していく。
アキトはそんな彼を静かに見下ろしている。
時計台にて待機していたビビは事態が理解出来ないとばかりに狼狽し、両者の遣り取りを見上げていた。
回顧するはアキトの言葉
『爆弾が爆発する瞬間に、ペルさんが爆弾を真下に投下してください。投下された爆弾を俺が能力で遥か上空まで吹き飛ばします』
『今の自分の状態では半径5㎞が爆発範囲である爆弾の余波を完全に防ぐことは難しいです』
『だから、直撃は避けます』
『そのための俺とペルさんの連携です』
『爆弾を遥か上空まで吹き飛ばした後、俺が能力で爆発と爆風を何とかするのでペルさんは安心してください』
何とかする?、一体どうやって?
それは自身の身の安全は含まれていたのか?
まさか今の彼には自身とペルの二人を守る力も残っていなかったのではないか?
今までの彼なら身に迫る脅威は全て防御していたはずだ。
クロコダイルと相対したあの地下室然り
宮殿での二度目のクロコダイルとの衝突然り
だが、今、この瞬間だけは彼はそうしなかった。
そこで気付くべきだったのだ。
形容し難い程のこの違和感の正体に
『これが現状、考えられる最善にして最高の策です』
最善に最高の策?
まさかそれは私とペルの身の安全が確保されていることが前提の策ではないのか?
アキトの能力なら万が一にも生存する可能性はあるだろう。
何故ならペルの能力は防御に適した能力ではないのだから
ペルがあの超重量の爆弾を上空まで運び、その後はアキトが対処する。
成程、確かにこの策は単純明快かつ効率的、最善にして最高の策だ。
だが、それはアキト自身の身の安全が保障してあればの話であるが
瞳から流れる涙が止まらない。
声は枯れ、何度も咳き込む。
視界は曇り、真面に上空さえも見上げることも出来ない。
緊迫とした状況でも、ビビは今なお上空に浮遊し、宙にて佇むアキトが此方を見据えた気がした。
錯覚かもしれない。
しかし、それでも……
彼の真紅の瞳が自分を見据えた気がしたのだ。
口元に笑みを浮かべ、静かに此方を見下ろす彼を
途端、アラバスタ王国の全土を眩いまでの極光が照らし出す。
その光はこの場の全てを震撼させ、振動させる。
ビビは必死に前方へと手を宙に佇むアキトへと伸ばす。
今なお、本人はその場から動こうとしない。
しかし、アキトには回避する時間すら存在しなかった。
ペルを宙からこの時計台まで投げ落とした時には秒針は既にゼロに達していたのだ。
アキトは左手で顔を覆い、目を細め、来たるべく爆発と向かい合う。
「アキトさん!」
ビビの絶叫虚しく、アラバスタ王国を滅ぼしうる爆弾がアキトを包み込み、次の瞬間には大爆発を引き起こす。
天を裂き、爆風を巻き起こし、光の極光とも呼ぶべき爆発が止んだころには何も残らない。
空を覆う雲も、爆弾の姿も、鳥も、アキトの姿も
全てが消えていた。
弱々し気な様子で崩れ落ち、ビビは泣き叫ぶ。
時を同じくして時計台の傍で成り行きを見据えていたナミも泣き崩れていた。
▽▲▽▲
神殿が崩れ落ち、崩壊していく。
地がひび割れ、倒壊していく。
そんなまともな足元も見つからない状況で、ルフィとクロコダイルは戦っていた。
両者は既に満身創痍
方や二度の戦闘で腹に風穴を開けられ、ミイラにさせられたルフィ
肩は無残にも裂け、さそりの毒がその身を毒している。
方や王下七武海であるサー・クロコダイル
体の至る箇所から血を流し、額には大きな傷跡が見える。
ルフィの絶叫、否、魂の声が鳴り響く。
人体の急所である鳩尾に鋭い拳が突き刺さり、クロコダイルは吐血する。
「ああああああ───!!」
「か……はっ!?」
ルフィの攻撃は止まらない。
顎を蹴り飛ばし、クロコダイルをタイル造りの地面に深く減り込ませる。
このガキのどこに此処までの力が……?
サソリの毒は間違いなく効いている。ならばこの力は一体……!?
『アンラッキーズからの連絡が途絶えだと?それは一体どういうことだ?』
『こちらクソレストラン、ご用件は?』
『何ふざけてやがるんだ、手前ェは?』
『クロコダイル!!』
『これはこれは、わざわざこの場にご足労なもんだな、アラバスタ王国王女ビビ。いやミ
ス・ウェンズデー』
『何度だって来るわよ!貴方に死んで欲しいから…!Mr.0!!』
『死ぬのは、このくだらねェ国だぜ、ミス・ウェンズデー?』
『幾らだ?幾ら出せば、俺の下につく?』
『折角の提案だが、自分はあんたの計画に興味はない』
『ビビは俺達の仲間だ。そこに助ける理由を問う必要なんてない』
『くはは、それが貴様らの言う信頼というやつか』
『そんなに仲間が大事ならば貴様らの言う"信頼"と共に此処で死ね』
『船長ってのは何時でも率先して戦わなきゃいけないんだ』
『アキトにばかり頼ってちゃいちゃいけないんだ』
『……だからお前は俺が倒す』
『分かってんのか、手前ェらの船長はもう死んだ。それにこのアラバスタ王国もじき終わる』
『この国は救われる。他ならぬビビの手によって』
『何寝言を言うかと思えば。笑えない冗談だ』
『イカれるのなら一人でしろよ』
『お前が及ぼした被害は両手の指じゃ足りないんだよ』
『この国やビビ達は関係ないだろうが』
『悪が蔓延ることに何の矛盾がある?何故、俺をそこまで目の敵にする?』
『……だから滅ぼされてきた』
『だからお前達も俺達が滅ぼす』
『馬鹿なっ……!?』
『クロコダイル───!!』
『麦わらぁ……!』
『ふふ、分かっていたわ。貴方がいずれ私を殺そうとすることくらい……!』
『全てを許そう、ニコ・ロビン!何故なら俺は最初から誰も信頼などしていないからさ!』
『俺は"海賊王"になる男だ……!』
『この海の恐ろしさを知れば、そんな夢を語ることなどできなくなるのさ!』
『俺はお前を超える男だ……!』
甘さは捨てた。
信頼など不要、仲間など必要ない。
『死なせたくないから"仲間"だろうが!?』
俺は二度と似の轍を踏まない。
夢見る時代は終わったのだ。
「どこの馬とも知れない小物が……」
こんな所で、こんな所で……
こんなイキの良いルーキーなんぞに……!
俺の十数年の計画を……!
「この俺を誰だと思っていやがる!」
クロコダイルはへし折れた毒針に代わり、ルフィへと短剣を振りかぶった。
「お前がどこの誰だろうと……」
「俺はお前を超えていく!!」
万感の思いを込めたルフィの蹴りが炸裂し、クロコダイルを蹴り飛ばす。
「……さっさとこの廃墟と化した神殿と共に潰れちまうがいい!」
「砂嵐"重”!!」
「"ゴムゴムの"……」
俺は、俺はァ……!
『俺は"海賊王"になる男だ……!』
『いいか、麦わら。この海の恐ろしさを知れば、そんな夢を語ることなどできなくなるのさ!』
宙にて対峙するルフィとクロコダイル
決着の時だ。
「”砂漠の金剛宝刀”!!」
「"暴風雨"!!」
顕現するは大地を容易く両断する威力を秘めた砂漠の宝刀
対して放たれるは暴風が如く連撃
どちらも必殺の威力を秘めた一撃だ。
しかし、両者の力の拮抗は一瞬であり、砂漠の宝刀が無残にも、虚しく砕け散った。
周囲一帯に、ルフィの咆哮が鳴り響く。
自身の必殺の一撃を破られたクロコダイルは為す術なく拳の連打を受け、天井に叩き付けられる。
やがてこの神殿を形成する天井の岩盤が砕け、崩壊し、クロコダイルを天高く吹き飛ばした。
「……」
その光景を遠方から見つめるはビビ
泣き崩れながらも彼女は茫然とクロコダイルを見据える。
「ルフィさん……」
ルフィが自身との約束を守ってくれたのだ。
しかし、戦争が止まることはなく、地上では大勢の血が流れ続けている。
「爆弾はアキトさんが処理してくれた……!」
「クロコダイルはルフィさんが倒してくれた……!」
「もう、もう……!戦う理由なんて何一つないのに……!!」
「戦いを、戦いを止めてください!!」
ビビの魂からの叫びが周囲に響き渡り、広場を震撼させる。
狂気に呑まれ、血みどろになりながらも戦闘を繰り広げていた者達が正気を取り戻し始めた。
武器を力なく手から離し、時計台へ、ビビが佇む場へと目を向ける。
既に彼らの目に狂気は存在しない。
─こうしてビビの叫びが、数十年にも渡る長きに渡る戦いに終止符を打つことになった─
後書き
流石に原作を読み返してもペルさん、あの大爆発で生きているのは流石に無理・無理(ヾノ・∀・`)
あの至近距離で大爆発の直撃を受け、上半身に怪我だけって(ヾノ・∀・`)ナイナイ
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