人徳?いいえモフ徳です。
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
四匹め
「シラヌイよ。これをどう思う」
「すごく…大きいです」
僕はいま王宮に来ていた。
「お早うございます!宮廷魔術師筆頭殿!
王宮付き相談役殿!」
門を潜ろうとすると衛兵がお母様とお婆様に挨拶をした。
「おお!ひさしいのぅ!なんじゃいお主未だに門番なんぞやっとるのか?」
「いえ、案外楽しい物ですよ。給料もいいですしね。
ところでそちらはもしや…」
衛兵が僕の方に眼をむけた。
「ええ、私とブライの息子です」
「これはこれは…」
「ほれ挨拶せぃ」
お婆様が僕に目配せした。
「はじめまして。僕の名前はシラヌイです」
「はじめまして。俺はレオン。見ての通りこの城の衛兵だ」
レオンはつり目で強面の男だった。
衛兵らしいといえば衛兵らしい。
「レオ坊。多分シラヌイはこの城に度々来るであろうから、頼むぞ」
「相談役の言い付けとあらば。
よろしくなシラヌイ!俺の事ぁ呼び捨てでいいぜ!」
「わかったよレオン」
「では、いきましょうか」
「じゃあね、レオン!」
「おう!」
side out
王宮を歩くシラヌイは興味の視線にさらされていた。
特にメイド達からだ。
ピンと立った狐耳。
もふもふの尻尾。
母親譲りのたれ目。
キョロキョロと辺りを見回す仕草。
そして時折こてんと首を傾げる。
「かっ…かわいい!持ってかえりたい…!」
「やめときなって。あれ宮廷魔術師筆頭様の息子よ?」
「えぇー…お話くらい…」
「宮廷魔術師筆頭様の夫は王都第三師団隊長よ?従来貴族じゃぁないけど、手を出したら王室付暗殺者が動きかねないわぁ…」
「大丈夫。たまたま出会って話すくらいならね!」
「一応いっておくけどあの隣に居るの王宮付き相談役だからね?あの二人が居ない時になさいよ?」
「まずは…餌付けよね…」
「もう好きになさいよ…」
side in
お母様が宮廷魔術師として与えられている部屋に来た。
「シラヌイ、私は少し用事があります。
一時間程で戻るので本を読んで待っていてください」
「わかりましたお母様」
お母様に渡されたのは、『猫でもわかる魔法基礎』という本だった。
あの、僕は狐なんですが…。
お母様が退室してすぐにお婆様も出ていった。
王様に会いに行くらしい。
なので僕はソファーに座って本を読む事にした。
『魔法を扱うには、まずこの世界の仕組みをしるべきである。
はじめに、物が燃えるとは、物質の中の燃素が』
読むのをやめた。爆笑した。
「燃素!マジかよ!この世界フロギストン説で科学してんのかよ!あっはっはっはっはっは!腹いてぇ!」
成る程この世界には酸素説がないのか。
まぁ、フロギストン説も科学的根拠が無い訳じゃぁない。
事実フロギストン説で酸化還元反応は説明できる。
爆笑してても始まらないのでパラパラと読み進めると、この本はほとんどが簡単な化学と物理(中世くらい)の内容だった。
この世界は科学が十分に発達していない。
代わりに魔法で代用しているようだ。
とは言え化学は中世レベルには至っているらしい。
錬金術のおかげだろう。
そうして、本当に後半の方に魔法を発動させる方法があった。
『この世のすべての人間は魔力を持っている。
魔力は物理的なエネルギーを持つのでそのまま打ち出す事も可能である。
そして、魔力は魔法を発動させる対価でもあり、魔力を消費しながら事象を想像すれば、簡単な事象ならば起こす事ができる。
そしてその事象をより詳しく想像することで、魔力の消費は押さえられる。
反対に漠然としたイメージでは、魔力の消費が大きくなる。
呪文は初級魔法では無くてもよい。
無くてもよいがあった方がイメージしやすいので、自分が事象をイメージしやすい呪文を考えるのが良い』
成る程だから化学と物理の知識が要るのか…
でもこのレベルの科学知識じゃぁ魔力めっちゃ持っていかれると思うけど…
『つまり、初級魔法は想像すればできる!
さぁこの本を読んでいる子猫ちゃん達!
レッツトライ!』
「この本の作者頭沸いてるんじゃ無いのか?」
『ブライ・フォン・シュリッセル著』
「俺は何にも見てない。断じてお父様の名前なんて見ていない…」
『猫でもわかる魔法基礎』を隣におく。
「水を想像する…クリエイトアクア!」
ばっしゃぁん!
「…………………」
成功した。成功してしまった。
ただし、ソファー周りがびちゃびちゃ…
「………ぃやらかしたぁぁぁぁ!?」
後書き
先週の土日、進研マーク模試。
今日、GTEC。明日、県下一斉模試。
ぅわーいやすみなしでしかもらいしゅうからてすときかんだうれしーなー(錯乱)。
ページ上へ戻る