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ONE PIECEを知らないエヴァンジェリン中将が原作を破壊するようです

作者:羽田京
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第1章 ネオオハラ・イン・ブリザード
  第2話 ONEPIECEの正体

 
前書き
キングクリムゾン!
ガープの育成結果はいかに……。

※ONEPIECEの正体が判明します(ネタばれ) 

 
「おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやる。探せ! この世のすべてをそこに置いてきた!!!」

 くそっ、やられた。
 海賊王ゴールド・ロジャーの最期を見届けるために来ていたのだが、最後の最後でアイツやらかしやがった!


 ロジャーはすぐに処刑されたが、大勢の聴衆は彼の最期の言葉を確かに聞いていた。

「……こりゃあ、荒れるのう」
「そうだな」

 隣のガープも深刻そうな顔をしている。
 私と同じく頭の回る彼もこの後の展開が予想できてしまったのだろう。
 少年だったガープもいまや老年にさしかかっている。
 数多の激戦を超えて、彼は見事『海軍の英雄』になっていた。
 師匠としてそれを誇らしく思う。彼の心中を思うと複雑な気持ちだが。

「金獅子のシキの襲撃がなければこの場を封鎖できたのに、口惜しいわい」
「チッ、全くだ。油断した! 頼むから予想が外れてくれるといいんだが」
「ガープ中将、エヴァンジェリン中将、どういうことでしょうか?」

 疑問符を浮かべた新兵が聞いてくる。

「スモーカー三等兵、直にわかるさ」

 この場には一般人に紛れて多くの海賊が紛れているはずだ。
 そんな奴らがロジャーの言葉を聞いてどう行動するか。

 ――――大海賊時代の幕開けである。


 ◇

「ガープ中将はどこだあああ!?」

 センゴクの大声が聞こえる。いつのもの光景だ。
 どたどたという音が近づいてくると、バンと扉があいた。

「ガープのやつを知らないか!?」
「うるさいよ、センゴク。もうちょっと静かにできないのかね」
「あ!? こりゃすまん。おつるちゃんがいるとは知らず……」
「ははは、センゴクのボウヤ、私もいるぞ」
「げえ、エヴァンジェリンさん!?」

 たまたまラウンジでおつると一緒にいたのだ。
 つゆ知らなかったセンゴクは驚いてしどろもどろになる。
 ガープと同じく新兵だったころから面倒をていた私には頭が上がらない。
 おつるは彼とほぼ同期だが、いろいろと世話してやっていたので、やはり彼は頭が上がらない。
 まあ、私とおつるは中将で、彼は大将だから頭を下げるのは、本来こちらなのだがな。

「はあ、センゴクらしくないな。お前も大将になったんだ。もっとどっしり構えろ」
「すみません。けれど、中将が大将に聞く口ではないような……」
「ふん、いまはオフなんだ。年上は敬うものだろう」
「い、いや、エヴァンジェリンさんはどうみても年上には見えないような」

 納得いかないという顔をするセンゴクをみて、まあ仕方ないと思う。
 海軍に入って40年以上経つが、幼女な私の姿は一切変わっていない。
 当然異端視される……かと思いきや、そうでもない。
 なぜなら、この世界には吸血姫もびっくりな人間が大勢いるからだ。


 動物に変身したり、どろどろに溶けてみたり、はたまたピカピカと光になってみたり。


 私も大概だが、なんだこのびっくり人間コンテストと思った。
 このびっくり人間をまとめて『悪魔の実の能力者』と総称している。
 だから、私も対外的には『動物系幻獣種・ヒトヒトの実モデルヴァンパイア』を喰った吸血鬼人間ということにした。
 チャチャゼロも能力の一部ということにしてある。
 『悪魔の実の能力者』……なんて便利な言葉だろう。


 この世界もまた何かのアニメや漫画の世界なのだろうか。
 いまとなっては分からない。
 いやあ、本当に腕っぷしだけで海軍では昇進できるとは思ってもいなかったぜ。
 まあ、おつるのように頭脳面でも評価されるから、ガープへの教育は無駄ではなかったようだが。
 しかし、600年という時は、前世の記憶を摩耗させるのに十分すぎた。


 いや、待て。ひとつなぎの大秘宝、ワンピース……何かひっかかる。


 !! 思い出した!

「ワンピース!」
「どうしたんです、急に」
「あ、いや何でもないぞ、おつる。ははは」

 脳裏を映像がよぎる。
 それは、上着とスカートが一続きになった女性と子供の服。
 それは、上半身(トップ)下半身(ボトム)が繋がっている水着。


 ――――服の名前だ!


 あーすっきりした。
 この世界にはワンピースという名前の服はない。
 紛らわしいからだろうな。
 さすがに財宝の中身が服ということはないだろう。


 ……ないよね?
 ロジャーのやつ、あれで冗談が好きだったからな。
 しかも笑えない類の。
 必死こいて手に入れた財宝が女物の服だったら、海賊さん泣くぞ?
 ざまあwと嗤ってやろう。

「ガープはまたどこかでサボっているんだろうよ」
「あいつ、書類仕事もできるくせに、なんでこんなにサボるんだか」
「……理由は気づいているんだろ?」
「……まあな」

 おっと、思考の海に沈んでいる間にセンゴクとおつるの会話が進んでいた。
 ガープがさぼる理由、か。
 知勇兼備のガープがさぼるようになったのは、中将になってしばらく経ってからだ。
 センゴクと共に切磋琢磨していたガープは大将になって当然の功績を上げていた。


 が、あいつはその話を蹴った。
 大将になったら現場に出ることが少なくなる。俺は現場が好きなんだ。
 そう言って、わざと書類仕事をさぼることで、評価を下げたのだ。
 本当の理由を私たちは知っているが、言うまい。


 しかも "わしも、年とって急に衰えを感じるようになったわい" とかほざいて急にじじい言葉を使うようになった。
 これも評価を下げるためなんだろうが、私に喧嘩売っているのだろうか?
 おつると二人でガープをボコボコにしてやった。
 

 まあ、それでもじじい言葉をやめないあたり、決意は固いのだろうな。
 昔からそういうやつだった。どこまでも純粋で、真っすぐで、太陽のような眩しいやつ。 
 だからこそ、綺麗ごとではすまない世界に、人の悪意に、それでもなお信じる正義に、彼なりの折り合いが必要だったのだろう。
 全く、変わらないな。……いや、変わってしまったのは私の方だろうか。


 いつの間にか話題が変わったようで、センゴクが愚痴り出す。

「本当なら私ではなくエヴァンジェリンさんが大将になるべきだったのに」
「まだそれを言うか。センゴクのボウヤ」

 ボウヤはやめてください、と顔をしかめるセンゴクをみやりながら、おつるも同じような顔をしているのをみた。
 私が大将の器なんて過分な評価だ。それに――――

「私は『誇りある悪』だ。そもそも中将という階級も荷が重いのさ」
「……」

 二人は黙り込んでしまった。
 そう、私は原作通り『誇りある悪』をあろうことか『絶対正義』をかかげる海軍で掲げている。
 当然反発もあるが、それ以上に功績を上げて黙らせている。
 いろいろと面倒をみてきたので、海軍内部ではあまり風当たりは強くないが、世界政府上層部からの受けは悪い。
 その辺のつなひきの結果が、中将という地位だった。

「さて、そんな心気くさい顔をするなボウヤたち。私は現状に満足している。よい弟子たちに恵まれたしな」
「私たちを褒めるなんて、明日は槍が降るんじゃないかい?」
「そうだな、おつるさん」

 ははは、とむなしく笑い合う。

「どうせガープは戻ってくる。部下が処理できるギリギリの量を見極めるのがうまいからな。
部下のケアも怠っておらんし、心配はいらんだろう」
「ま、そうでしょうな。しかし、体裁というものがあるのです。一応、もう少し探してから私は戻るとします」
「ああ、がんばれ『未来の元帥殿』」

 揶揄するように言うと、意外にも "もちろんです" と凛々しい顔をしてセンゴクは出て行った。
 まったく、いい弟子をもったものだ。




『なぜ”誇りある悪”なのかだって? エヴァンジェリンだからさ』

 よくわららない返事だった。いまでもその意味はわかっていない。
 海軍に入ってから彼女は、盛んに『誇りある悪』という言葉を好んで使うようになった。 
 しかも入隊したての新入りが、大口を叩いて『悪』を宣言するのだ。
 それも『正義』の海軍の中で。
 恩師だから『悪』を掲げてほしくなかったし、その理由も知りたかった。

『女子供は殺さない。それが”誇りある悪”だ』

 簡潔な返答だった。むしろ、どこが悪なのかよくわらない。
 だが、”誇りある悪”とやらは無害である。と、センゴク、おつる、ガープの三人が必至になって広めた。
 それにより、エヴァンジェリンを敵視する人間もだいぶ減っただろう。
 ……サカズキとは激しく衝突していたが、いまは仲が良いのか悪いのかよくわからない関係に落ち着いている。


 彼女は、その圧倒的な力でもって海賊を駆逐していった。
 彼らの不安も一緒に駆逐していった。
 何もかも駆逐していった。
 今までも、そして――これからも。


◆◇◆

・おれの財宝か? 欲しけりゃくれてやる。探せ! この世のすべてをそこに置いてきた!
アニメ版ワンピースのOPでも流れる有名なセリフ。この一言が世界を変えた。

・ゴールド・ロジャー
本名はゴール・D・ロジャー。新世界の果てラフテルへとたどり着き海賊王と呼ばれた男。
主人公やガープたちとしのぎを削ってきた。
病に侵されとうとう捕縛されたが、最期に爆弾を残していった。

・大海賊時代
海賊王ロジャーの処刑をもって海賊時代は終わるかにみえたが、始まったのは大海賊時代だった。
ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を狙って海賊たちがわんさか出現してしまう。
原作の24年前の出来事である。主人公最大の失策。修正力さん大勝利。

・金獅子のシキ
映画で大暴れした伝説の海賊だがなかったことにされることもある。
ロジャー処刑の1週間前に海軍本部マリンフォードを襲撃するという前代未聞の事件を起こす。
幸い撃退され脱出不可能な牢獄(インペルダウン)へと収監されたが、被害は甚大だった。

・海軍の英雄
ガープは見事海軍の英雄になってみせた。エヴァンジェリンに師事し研鑽を積んだ彼は、原作よりも手強いだろう。
"拳骨のガープ" "魔術師ガープ" の異名をもつ知勇兼備の名将である。要塞戦において彼が編み出した『D船上のワルツ(ワルツ・オン・デットライン)』は有名。

・エヴァンジェリン中将
やっとタイトルに追いついた。ずっと中将をしている万年中将。出世の予定はない。

・スモーカー三等兵
ぴかぴかの新兵で初々しい。将来有望と主人公は睨んでいる。原作キャラだが勿論主人公は知らない。

・仕事をしないガープ
修正力さんが頑張りました。

・センゴク
大将になったばかりだが、上層部からの期待を一身に背負っている。
人望もあり真面目な性格なため、気苦労が絶えない。
ガープやおつるとは親友で、揃って主人公に師事した。原作では未来の元帥である。
悪魔の実の能力者。

・つる
戦闘力もさることながらその智謀は海軍随一な女性海兵である。
主人公はガープ、センゴク、おつるに特に目をかけていたが、見事大成した。
そして、全員原作キャラである。これには修正力さんも苦笑い。
彼女も悪魔の実の能力者。

・悪魔の実
ワンピース最大の特徴ともいえる不思議な果物。
これを食べると不思議な能力が身につくが、泳げなくなる。めちゃくちゃ不味いらしい。
主人公は悪魔の実の能力者の振りをしている。
ちなみに、アイスの実との関係が噂されている……。

・エターナルロリ
海軍に入って40年以上経ったが、やはりロリなまま。
ロリと言われると怒るが、ロリババアと言われるともっと怒る。
排斥されるのを恐れていたが、びっくり人間がいっぱいいたので、そんなことはなかったぜ。

・ワンピースの正体()
主人公はアホの子。

・ガープの言葉遣い
じじい言葉を使うようになった理由づけをしてみました。中将になってしばらくたった壮年期から使い始めたので、周囲も違和感を持っていたようです。それでもやめません。彼なりに信じる正義に殉じるために。

・誇りある悪
主人公が掲げる信念。本作のカギでありテーマ。この信念にもとづいて、主人公は原作を蹂躙していく。本人は、「エヴァンジェリンになったんだ」と思っているようだが……。

・絶対正義
絶対的正義を海軍は掲げている。どのような正義なのかは、人によって様々なようだ。

・年齢比べ(原作24年前)
エヴァンジェリン(640歳以上)>>>センゴク(55歳)>ガープ(54歳)>つる(52歳)>>スモーカー(12歳) 
 

 
後書き
この後の展開は少々修正を入れていこうかなと思います。分かりづらいとご指摘を受けました。 
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