前世の知識があるベル君が竜具で頑張る話
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あされん
「おきて、ベル。おきて」
声が聞こえた。
目を開けると、アイズさんがベッドに腰かけていた。
「……………………Why?」
「わい…?」
なんでアイズさんが?
周りを見渡すと、『僕の』部屋だった。
昨日ロキが『もうベルの部屋ここでええやろ』と言ったのでこの部屋が僕の部屋になった。
一人部屋だ。本当は幹部じゃないと一人部屋はないらしいけど…
「ベルの装備買いにいくんでしょ?」
あ、あぁ…そういう話もあったなぁ…
だが窓の外を見ると、太陽はまだ低い位置だ。
「あの。アイズさん。たぶんまだどの店も開いてないですよ?」
「?」
あれ?
「いまから、ベルの修行。今日は買い物にいくから、早めに済ませる」
あ、そういう事……
「Really…?」
5日前(主観的には一昨日)リヴェリアさんに吹っ飛ばされた練兵場に来た。
練兵場の中程で、アイズさんが足を止めた。
「私は、教えるの上手じゃない」
振り返ったアイズさんが腰の剣に手を伸ばした。
しゃらん…と抜かれた剣が、朝日に照らされる。
「だから、こうやって教える」
要するに実戦形式って訳だ。
「わかりました…バルグレン!」
五秒後。
「えい」
「ぎゃふ!」
更に十秒後。
「えい、えい」
「ぎゃふ! ぎゃふ!」
なんとか態勢を立て直し、突撃したが、剣の腹でぶん殴られて、数メートル吹っ飛ばされた。
「大丈夫?」
と、申し訳なさそうな声が聞こえる。
貴女が、そう思う必要はない…
弱い僕が悪いのだから…
「まだいけます!」
飛び起きて、バルグレンを構え直す。
「でやぁぁぁぁ!」
side out
朝早くから、剣撃の音で目を覚ました複数の団員は、怒りに震えていた。
つい最近入ってきたばかりの新人が幹部アイズ・ヴァレンシュタインに膝枕をされていたのだっ!
ファミリア内外を問わずアイズのファンは多い。
それなのにぽっと出の新人が…!
と団員達は思っていた。
二人部屋の窓から、その部屋の団員二人が広場を見下ろしていた。
「あの野郎〆る」
「ああ、教育が必要だな」
しかし、彼等は数十分後にはその意見を180度逆転させる。
「お、兎が起きたぞ」
「くそっ…! アイズさんの膝枕…!」
彼等の視線の先で、立ち上がった二人が相対する。
ベルがアイズにつっこみ、アイズがベルをいなす。
「レベル1にしちゃよくやるな」
「ただの女顔のエロガキじゃぁねぇっってこった」
刹那、ベルがアイズに吹っ飛ばされた。
「うわ…痛そう…」
ベルが再び立ち上がり、アイズに短剣を振るう。
「根性あるな…」
「あ、あぁ、そ、そうだな」
彼等は、もし自分がベルの立場なら諦めてしまうだろうと思った。
だが、ベルは何度でもアイズへ向かっていく。
何度ベルが短剣を振っても、アイズには掠りもしない。
それどころかアイズの反撃により、ベルの体は傷ついていく。
「……見てられん」
「同意見だ」
だが、ベルはそれでも向かっていく。
たかが修行。いや、修行だからこそ、己の全てをぶつけようとしていた。
「………」
「………」
やがて、アイズの一撃を受けたベルが、動かなくなった。
そうして気を失ったベルに、アイズが膝枕をしてやっていた。
「飴と鞭だ…!?」
「意識がないから飴になってない…!?」
さらに数度、ベルが目覚めては気を失い、アイズがベルをボコボコにしては膝枕をした。
「あの新人には…うんと優しくしてやろう…」
「そうだな…。あれだけ傷ついた対価が膝枕ってのは…………………アイズさんのならアリか?」
「ナシだろ…」
side in
黄昏の館には大きな食堂がある。
皆その食堂で食事を取るのが決まりらしい。
幹部も、新入りも。もちろん主神も。
僕の隣ではアイズさんが朝食を取っている。
僕も朝ごはんのサンドイッチを食べていた。
「ようベル。朝からお前の悲鳴が聞こえてたぜ」
ポン、と頭に手を置かれ、後ろを見るとベートさんが立っていた。
「お早うございますベートさん」
「おう。隣座るぞ」
隣にベートさんが座ると、僕の小ささが目立つ。
パルゥムの血は引いてないと思うんだけどなぁ。
「ベート。何の用?」
「ん?どうかしたかアイズ?」
「何か、用があるんじゃないの?」
「特に……いや、ベルを弄りに来た」
最悪だ。最悪の答えだ。
「ベル。お前アイズに修行つけて貰ってるんだよな?」
「そうですよ」
するとベートさんはニヤァと笑った。
「なぁアイズ。一つ提案だ」
「なに?」
「もしもベルがお前に一撃入れられたら、何か褒美を与えるっていうのはどうだ?」
ご褒美?
「ん、わかった。ベルが私に一撃入れられたらご褒美あげる」
ご褒美…どんなのだろう?
「でも…」
ん?
「ご褒美ってどうすればいいのか知らない」
あ、そうなんだ…
「じゃぁよ、アイズ。『なんでも一つだけ言うこと聞く』ってのはどうだ?」
「そんなことでいいの?」
「男ならな。なぁ、ベル?」
え?そこで僕に振るの?
「よし。話は決まった。良かったなーベル。
上手く行けばアイズの処女貰えるぜ」
しょじょ…?……………処女!?
「いやいやいやいや! 何言ってるんですかベートさん!? 悪ふざけが過ぎますよ!
アイズさんも女の子なんだからそんな簡単になんでもするとか言っちゃダメですよ!」
「あぁん? 面白いからいいじゃねぇか」
「どうして? これじゃご褒美にたりない?」
だああああぁぁぁぁ!? 違う! そうじゃないんですよアイズさん!
「十分です!十分過ぎます!たった一撃でそんなのは貰えません!」
「貰う………そう言えばベート。『しょじょ』って何?」
そこから!? っていうかアイズさんピュアなの!?
「処女ってのはな、要するにベルの剣をお前の鞘にだな…」
「剣? ベルの剣ってどれ? 短剣? 長剣?」
「短剣から長剣になった剣を…」
「短剣が長剣になるの…?」
そこでゴチン! と音が聞こえた。
「喧しいぞベート」
「何すんだババァ!?」
スタッフを振り下ろしたリヴェリアさんが立っていた。
「しかも飯中だ馬鹿者」
「リヴェリア『しょじょ』って…」
「後で教えるから少し静かにしていろアイズ」
「わかった」
「ベル。出かける前に少し勉強だ。食べ終わったら部屋に来い」
「はい」
リヴェリアさんって『お母さん』っぽいなぁ…
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