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リング

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134部分:ヴァルハラの玉座その十五


ヴァルハラの玉座その十五

「吉報です」
「艦隊のことか」
「はい。五個艦隊が遂に揃いました」
「よし、遂にか」
 ジークフリートはその報告を聞き満足そうに頷いた。
「艦艇にして約二百五十隻」
「うむ」
「これだけの数があれば相当の戦力が来ても」
「いけるというのだな」
「はい」
「果たしてそうか」
 だがジークフリートはあえてこう述べた。
「といいますと?」
「帝国を侮ることは出来ない。バイロイトのことは覚えているな」
「ええ、まあ」
 その部下はジークフリートのその言葉に応えた。
「バイロイトはファフナーによって滅ぼされた」
「そのファフナーですが」
「どうした?」
「実はあれは試作品ではないかという情報もあります」
「試作品か」
「はい。より強力なものを何処かで建造しているのではないかという噂もあります」
「そこが帝国の本拠地かのかもな」
「おそらくは」
「ラインゴールドにもそのファフナーは配備されているかな」
「いえ、それはない様です」
 別の部下がそれに応えた。
「ないか」
「はい。あそこに置かれていたのは単に艦隊だけである様です」
「ふむ」
「そしてその艦隊も残るは八個です」
 四個艦隊が減った。そのうちジークフリートが倒したのは三つである。どうやら残り一つはタンホイザーによって倒されたものであるらしい。彼の軍もまた近くに展開しているのだ。
「そのうちの三つがまた出撃した模様です」
「その矛先はどちらにだ」
「我々にです」
「そうか、我々にか」
「敵将はハーゲン提督です」
「ハーゲン提督」
「ニーベルングの一族の者だとか」
「クリングゾル=フォン=ニーベルングの身内か」
「その彼が三個艦隊を率いてこちらに向かって来ております」
「如何為されますか」
「焦ることはない」
 ジークフリートはそれに対しまずはこう述べた。
「焦ることはないと」
「そうだ。既に我等の戦力は整った」
 彼は次にこう言った。
「戦力的には我等の方が上だな」
「はい」
「まず数において有利だ。そして」
 さらに言葉を続ける。
「地の利も。彼等はどの様なルートでこちらに向かって来ているか」
「最短距離です」
「そうか、やはりな」
 ジークフリートは部下からの報告を聞いて頷いた。これも彼の予想通りであった。
「ならばよしだ。すぐに全ての艦隊を集結させよ」
「その場所は」
「ギービヒだ」
 彼は言った。
「ギービヒ星系に向かう。そしてそこでハーゲン提督の軍を迎え撃つぞ」
「ギービヒにおいて」
 ギービヒ星系は超惑星の多い星系である。そのうえ太陽は老化が進み、重力はかなり不安定な場所となっている。下手な操艦技術では近寄ることすらままならない場所である。
「あそこは我等にとっては遊び慣れた場所だ」
「はい」
 この自信には裏付けがあった。ワルキューレはギービヒ周辺においてもよく活動していたからであった。彼にとってはあの星系は難所ではなく見知った裏庭も同然であった。
「だが敵にとっては違う」
「では」
「あそこでその三個艦隊を殲滅する」
 彼は言い切った。
「そのうえでラインゴールドに向かう。よいな」
「了解」
 こうして戦力を整えたワルキューレはそれぞれギービヒへ向かうこととなった。まずはジークフリートが直率する艦隊がそこに到着した。
 
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