ABULHOOL IN ACCELWORID
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『昨日暴漢に襲われた。
応戦した時に左腕に傷が付いた。
そんな訳で今日は病院(東大付属)に行く。
家にはナツを残しておくから用が有ればナツに言っておいてくれ。
psあの人と一緒に行くから心配するな』
送信アイコンを押し、チユにメールを出す。
いや…違うな…チユのニューロリンカーにバックドアを仕掛けている奴にメールを送った。
「じゃ、行ってくるぞナツ」
「はいはーい。近い内に例の先輩紹介してね」
「おう」
玄関を出て廊下を歩く。
廊下から見える景色。
今までは何も思わなかった景色。
だけど…
「今も…この景色の中を誰かが戦ってるのかなぁ…」
加速…人間のビートを増幅し精神を加速させるオーバーテクノロジー…
おっと…少しボーっとしていたな…
そう思い、少し急いでエレベーターに向かう。
ショッピングモールがある階層を抜け、エレベーターは一階に到達した。
そしてエントランスを抜け、マンションの敷地を出る。
視界の端にグローバル接続のアイコンが浮かび…
バシィィィ!
世界が一変した。
「お、おぉう…コレが乱入か…」
視界の上…HPゲージを見る。
敵は…アッシュ・ローラー…
あぁ…あのバイク野郎か…
ガイドカーソルの方向は…マンション前の道路の右側からだな…
さてと…行くか…
ガシャン!と足を折り畳み、上空に飛び上がる。
ヒュウィィィィィン…と背中のパーツが現存するどの機器のエンジンとも違う音を発てる。
そのままどんどん上昇する。
体感的にはかなり登っている…
やがて雲を越えた。
つまり、この時点で高度1000メートルを裕に越えた。
「そろそろいいか?」
ガイドカーソルに従い、アッシュ・ローラーに向かう。
こちらは雲の上…あちらには見えていない筈だ…
そして…
ガイドカーソルが真下を指した。
俺はエンジンを切り…
自由落下を始める。
風が、鋼の体を撫でる…
「嗚呼!アァ!いい!実にいい!」
パラシュート無しのスカイダイビング!
はは…はは…ははっ…はは!ははははは!
「最高だ!最高だよシルヴァリオ・アブルホール!」
みるみる内に行動が下がっていくのが判る。
次第に地表の様子が判るようになってきた。
スラスター…点火!
自由落下にスラスターの加速が加わり、更に速度が上がる。
ドォン!と轟くような轟音が響いた…ソニックブームだ。
「はは!そうか!コレが音速の世界か!」
視界の中心にアッシュ・ローラーが見えて来た…
アッシュ・ローラーが何かわめいて居るのが見える…
「悪いけど…俺の糧になって貰うぞ!」
機首部分のフェイスを展開…
そして…
パシュシュシュシュシュシュシュ!
GNバルカンを浴びせる。
自由落下、スラスター、GNバルカンの弾速…それらが合わさり音速の数倍となった光弾がアッシュ・ローラーを襲う。
その光弾は次々にアッシュ・ローラーとバイクに突き刺さり…
「ファァァァァァァァッキィユゥゥゥゥゥ!」
"fack you"と言いながらアッシュ・ローラーは砕け散った。
…………この男はいちいち罵倒しないと気が済まないのだろうか。
ふと、アッシュ・ローラーのバイクの残骸が目に入った。
うん…ムカついたから壊そうかな…
一歩下がり…
パシュシュシュシュシュシュシュ!
ボガァン!
GNバルカンを受けたバイクは爆発した。
ザマァ!
そして、1800秒が過ぎる前にアイコンを操作し、俺は加速世界から離脱した。
「ふぅ…」
空を、見上げる。
雲があり、太陽があり、蒼い空がある。
今まで、飛んでいた場所…
「ふふ…」
バースト・リンカー…か…
生まれて13年と少し。
俺はやっと生き甲斐という物を見付けられたような気がした。
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