ABULHOOL IN ACCELWORID
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『違ったら、自惚れるなって言ってもいいです…
黒雪姫先輩は、本当に俺が好きなんですか?』
我ながら、何を言ってるんだと言いたい。
だけど、俺にはわからない…なんで、俺が選ばれたのか…
『そうだ、私は本当に君を好いているのだ』
『どうしてですか?』
『どうして…か…ふぅむ…なら聞くが、人を好きになるのに理由が必要かね?』
は…はは…はは…そっか…
『そう…ですか…』
この人は本当に…俺を好いているのか…
『ハルユキ君。私が君の隣に居るのはけして哀れみでも…ましてや"慈悲'なんかじゃないんだ』
そう言って黒雪姫先輩は、俺を抱き締めた。
『先輩…ここ…通学路ですよ?』
『なに、構わんさ』
なら…もし、本当に黒雪姫先輩が俺を好いているのなら…俺には言うべき事があるのだ…
『黒雪姫先輩』
『なにかね?』
『俺も、黒雪姫先輩の事が好きです…』
あぁ…こんな事を言うなんて…3日前までは思わなかった…
『俺と付き合ってくれますか?』
その告白に対する答えは…
『願ってもない!私は…いま、とても…嬉しいよ…』
『俺も…です…』
何時もの通学路を歩く。
俺の機械の手を、黒雪姫先輩が握っている。
感覚はないけど、心が温かくなる。
「キャアアァァァァァァァ!」
突如後ろで悲鳴が聞こえた。
「「!?」」
二人して、後ろを振り向く。
ソコには包丁を持ったアラヤが居た。
不味い!?
ボイスコマンドを発声しようとした刹那。
「バースト・リンク!」
黒雪姫先輩の声が聞こえ、世界が青く染まった。
すぐに俺と黒雪姫先輩は学内アバターになった。
「何故アラヤが…」
「今朝、保釈されたのだ…」
黒雪姫先輩の声に俺は驚愕した。
「週明けに裁判があり、最低一年は収監される…そう聞いて、この男の事を考える必要はあるまいと思っていたが…まさかこんな…」
アラヤとの距離は四メートル…イケるな。
「これは私のミスだ…人が人を害するのに"加速'なんて必要ない…包丁一本あれば、事たりるのだよ…」
黒雪姫先輩の声には自責の念が籠っていた…
「安心してください。この程度ならなんとかなりますよ」
別に車が突っ込んで来た訳じゃないんだ…やりようはある…
「しかし…」
「忘れましたか?俺の両腕は鋼の腕ですよ?
包丁一本、問題ではありません」
相手は刃物を持っている…ならば…少々やり過ぎても問題あるまい…
「俺は貴女の恋人なんです!恋人一人護れなくて…何が男子か!」
覚悟をきめる…
「バーストアウト!」
色を取り戻した世界。
そのなかをアラヤが包丁を持って進んでくる。
既に人の物じゃない叫びを上げ、目は血走っている。
「ヴェラァワワァァァァァァ!」
真っ直ぐ突き出された包丁を…
カキン!
左の掌で受け止める。
包丁を掴み…クシャリと握り潰す。
そして…
「お前は!お呼びじゃねぇんだよ!」
ボコォ!
アラヤの腹に、右ストレートを叩き込む。
内臓が潰れてるかもしれない。
アラヤはガクリと倒れ込んだ。
「お前…終わったな…」
この男は、もう、終わりだ。
保釈中に刃物を持って暴れたとなれば…十年は出て来れまい。
「なに、救急車は呼んでやる」
「すでに呼んだぞ」
速!?
後ろを向くと、黒雪姫先輩が抱き付いてきた。
「心配…したぞ…止める前にバーストアウトされて…私も急いでバーストアウトして…」
「すいません…。心配かけて…。
鋼の腕もいいものですね…好きな女の子を、護れるなら、義手になった意味もあるってものです…」
「………ばか」
遠くから、パトカーと救急車のサイレンが聞こえる中、俺と黒雪姫先輩は抱き合っていた。
後書き
「鋼の腕」というのをやりたくてアラヤ君には包丁を持ってもらいました。
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