転生×魔弾の王×萌えもん=カオス
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三本目
「ほーん…ここがポケモン協会日本支部か…」
あれから一月、オーキド博士が初代カントーチャンピオンとポケモン研究者のネームを使い、俺のライセンス取得の話を協会に押し通したそうだ。
「そうじゃ。今日は筆記、明日は実技の予定じゃよ」
十歳になれば無条件で発行されるが、俺はまだ五歳なのでテストが設けられる事となった。
協会に入ると、一人の男が出迎えてくれた。
「君が、ティグルか?」
「はい。お初にお目にかかりますチャンピオン」
「どうじゃ?面白いじゃろう?」
ポンポンとオーキド博士が俺の頭を撫でる。
「ふむ……」
チャンピオンの瞳は俺を見透かすように動かない。
刹那、チャンピオンからプレッシャーが放たれた。
殺気…というよりは闘気だろうか?
こちらを圧倒しようとしているが、こちらを害する意思が無い。
俺は、その圧に負けぬよう、チャンピオンを見つめ続ける。
冷や汗が頬を伝うが、悟られないよう、毅然とする。
「ほう?面白い」
「お褒めに預り光栄です」
「おっと、こんな場合ではなかったのぅ。
ワタル、試験会場はどこじゃ?」
とオーキド博士が尋ねた。
「第三会議室だ」
「第三じゃな?相違ないな?」
「無い…と言い切れんのがつらいな」
どういう事だろうか?
首を傾げていると、ワタルが答えた。
「君のライセンス取得は協会内部では反対派が多い。
それを私とオーキド博士で押し通したような物だ。
恐らく試験の内容は凶悪、それどころか試験を受けさせない可能性すらある」
「今になって?」
「大人とは、そういう物だ」
大人ねぇ…
前世の、パーソナリティに関する記憶が欠落している俺には"大人"の汚さはわからない。
俺は汚い大人だったかもしれないし、まだ子供だったかもしれない。
「筆記試験のレベルは問題無いよ」
つー訳で第三会議室とやらに向かったのだが…
試験官五人ってーのは嫌がらせじゃないんですかねぇ…
しかもネイティオまで用意してやがる。
んな事しなくてもカンニングなんてしねぇっつの。
「では持ち物検査と身体検査だ。
どこにカンニングペーパーがあるかわからないからな」
「おい!貴様!」
「はいはい落ち着いて博士。
俺が清廉潔白なのは博士が一番知ってるでしょ」
で、身体検査なんだが…
この試験官ホモじゃねぇよな?
で、ようやく筆記試験。
始めは数学(算数ではない)だったのだが…
初っぱなの小問集合から高校レベルだった。
合格させる気ねぇだろお前ら…
と思いつつ余裕で全問回答。
次、国語。
以下のカタカナを漢字に直せ『バラ』『ユウウツ』。
以下の漢字の読みを答えよ『須臾』 『刹那』。
ヤベェ…出題者をぶん殴りたくなってきた…。
次、ポケモン学。
バトルのダメージ計算問題…
能力の下降上昇を10回近く繰り返した後の技のダメージを計算。
更にどのポケモンに放てばどれだけのダメージか? みたいな問題もあった。
つーか普通のポケモントレーナーって絶対こんなテストしねぇだろ…
「試験終了!」
と試験官が言って試験用紙が回収された。
会議室を出ると、オーキド博士が待っており、隣にはチャンピオンも居た。
「おお、どうだったかね?」
「とにかく俺を合格させまいと言う気持ちが伝わって来ましたよ」
「ふむ…少年、どのような問題が出たか教えてくれ」
「ああ、はい解りました。
数学で三角関数、国語で難読漢字、ポケモン学でダメージ計算ですかね」
すると二人が絶句していた。
「どうしました二人共?」
「いや…ティグル…お主」
「少年…その問題はエリートトレーナー認定試験の内容だが…」
エリートトレーナー認定試験?
「おい、ワタル、わかっておるな?」
「ええ、わかっていますオーキド博士」
二人は会議室にドアを開け、中へ入って行った。
「エリートトレーナー認定試験…
ヤバい…やらかしたか?」
一度、二人の怒号が中から聞こえたが、その後は静かになった。
少しして、二人が出てきた。
「ティグル…お主…」
「素晴らしいぞ少年!満点じゃないか!」
当たり前だろうが。模試の大問の各一番程度の難易度だったんだから。
その後は、協会の一室に泊まった。
二日目の実技試験は、ポケモンの手当てと……
「対ポケモン無手戦闘技術ねぇ…」
「明らかおかしいのぉ…これは本来ユニオンの試験なんじゃがのぅ」
ユニオン?
「ユニオンって何です?」
「レンジャーユニオンじゃよ。
ポケモンレンジャーを育成する機関での、卒業試験の内容じゃ」
ポケモンレンジャーかぁ…
ゲームやったけど、あんまり覚えてないなぁ…
「まぁ、せいぜいポッポ程度でしょう」
協会の横の広場に行くと、試験官が待っていた。
「では試験を始める。GOスピアー!」
両腕と腹部のスピア、黒と黄の危険色。
「じゃ、博士、行ってきます」
「お、おぅ…」
スピアーと相対し、出方を伺う。
はは…すげぇプレッシャーだなぁおい…
下手したら死ぬんじゃね?
「シュァ!」
翅を羽ばたかせ、此方に飛翔してくる。
それをギリギリで避ける。
案外速くない。
スピアーは蜂がモチーフのポケモンだが、一体だけならそう手強い相手ではない。
前世で蜂が恐ろしいとされていたのは、その小ささ故の隠密性と集団で襲ってくる点だ。
だが、たった一体のスピアー程度ならどうとでもなる。
後方にいたスピアーが旋回し、此方へ戻って来た。
そして、俺の目の前で急制動、両腕のスピアを突き出してくる。
だが、それがどうした?
そのスピアを両方とも手で捉える。
いくらポケモンとはいえ、地に足が着いていないならば、踏ん張る事は出来ないだろう。
「スピアー!<どくばり>!」
「な!?」
試験官の声に答えるよう、残った腹部のスピアが、毒々しい色を纏った。
「いかん!ティグル!手を離すんじゃ!」
いや…やってみる!
毒を纏ったそのスピアは、俺の顔面に向かった放たれた。
ガキィィン!
「な!?」
「へへ…」
その一撃を歯で噛んで受け止める。
スピアー自身も驚いているようだ。
この隙に、スピアーを地面に叩きつける。
「スピ!?」
近くにあった手頃な大きさの石を拾い…
「わるいな…これで、エンドマークだ!」
ガス!ガス!ガス!
スピアーの胸部に石を打ちつける。
岩は二倍弱点だから、さぞ効くだろう?
「ピィ…ァ…」
「スピアー戦闘不能!受験者の勝利!」
「は、はは…」
緊張が溶け、後ろに倒れ込む。
「ティグル!」
オーキド博士が、心配そうな声をあげながら、此方へ駆け寄ってくる。
「ティグル!無事か!?ティグル!」
「無事ですよ、オーキド博士」
「おぉ…よかった…。
さぁ、マサラへ帰るぞ。ティッタが心配しておろう」
「そう…ですね」
そこで、俺の意識はフッと消えた。
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