艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~
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番外編~『最強』の遭遇~
前書き
どうも、プロ野球、開幕。頑張れ横浜。
オレは工廠に向かって走り始めていた。間宮さんたちに悪いからさばの味噌煮定食を丸飲みする勢いで口のなかに押し込んでからだが。
「木曾さん!?演習に混ざったらダメですからね!!」
大丈夫だ青葉。流石にそんなことはしねぇさ。
「ちょおっと、話を聞くだけさ。」
ニヤリと笑いながら言い返した。青葉曰く、そのときのオレは画面を見ながらこめかみに青筋を立てながら笑ってたらしい。
あのときの木曾さんは『魔神』より怖かったです。by青葉
走りながら、あのときの映像を頭のなかで再生していた。
基本的に演習では指定されている服を着ることになっている。千尋は眼帯してないけど、基本的に『木曾』は左目に眼帯に、球磨型の制服だ。
つまり、あれは『横須賀の木曾』だと思う。
『思う』ってのは、『木曾』はマントなんか着けないからだ。
つまり、あれは木曾だけど木曾じゃない。
…………時と場合によっては、提督をぶん殴ってやろうかなとか考えていた。
―工廠―
「明石さん!アイツはなんだ!!」
オレは工廠の扉をくぐるなり、明石さんの名前を呼んだ。
「おおー、良いとこに来てくれたー。」
明石さんのかすれた声が聞こえてきた。
「あ?どこだ?」
オレは辺りを見渡して明石さんを探した。というか、なぜかいつもより散らかってる気がするんだが…………って。
「ここだよー。引っこ抜いてくれー…………。」
そこには、様々なガラクタのようなものに上半身が埋もれてしまっている明石さんが居た。流石工作艦といっても艦娘は艦娘。人間なら死んでるよ。
「いやー、艤装を引っ張り出そうとしたらガラクタが落ちてきちゃってー。」
あ、ガラクタで合ってた。
オレはため息をつくと、明石さんの両足を掴んだ。
「ふぅん、白か。悪かねぇな。」
「…………それで助けてくれるなら…………。」
意味が分からなかった。ちゃんと助けるわ。
オレはそのまま両足を引っ張った。
ズポッと明石さんをガラクタの中から引っ張り出すことができた。
「ったく、気ぃつけろよな?何引っ張り出してたか知らないけどさ。」
オレがそう言うと明石さんは苦笑いしていた。
「えっと、まぁね。四年ぶりに出す物だから…………ね。」
明石さんはそう言うと、ガラクタの山に登っていった。そのままガラクタが置かれていたであろう棚の奥をゴソゴソと何かを探し始めた。
と言うか、四年ぶりに出す物ってなんだよ…………。
「よっこいしょっと!」
明石さんは掛け声と共に棚から木箱を引っ張り出してきた。かなり大きくて、重そうだ。
「どっせーい!」
明石さんはそう言うと、木箱をこっちに向けて投げてきた。
オレはその木箱を両手でキャッチした。いやホントデカイな。一メートル四方くらいだ。
オレはそれを床にそっと置いた。
「ナイスキャッチ!」
明石さんは棚からピョンっと跳び、木箱の横に着地した。
「一体何が入ってるんだよ?」
ここで明石さんがこれを投げてきたことに対して何も言わないオレもオレなのだろう。
「んー?大淀さんの艤装。」
間。
「は?」
確かに大淀さんは五年前までバリバリで戦ってたけど、今は提督の補佐に回るからって出撃しなくなってたのに、なんでまた。
「…………要するに、あの人の力が必要になるかもしれないってことよ。」
…………まぁ、それしかないよな。
「あー、だから提督のテンション低かったのか…………。」
あんまり大淀さんを戦わせるのよく思ってなさそうだったからな…………。
いや、オレとしてはあの大淀さんが戦線に戻ってくれるってだけでありがたいんだけどさ。
…………あ、本題忘れてた。
「そうだ明石さん!横須賀のあの球磨型の眼帯マント野郎!アイツなんだか分かるか!?」
オレは本来の目的を明石さんに聞いた。
「んー?あぁ、横須賀の木曾のこと?さっき整備させて貰ったけど、いい艤装だったねー。」
どうやら明石さんも興味津々だったらしい。
「やっぱり木曾なのか…………でも、なんかオレや千尋と違うよな?」
オレが尋ねると、明石さんは首を縦に振った。
「多分だけど…………ありゃあ『改二』だね。」
『改二』。
一定以上の練度に達した艦娘がすることができる更なる改造。一度改二になればその戦闘力は倍近くになるらしい。
うちの鎮守府じゃ大井に北上、時雨とあと夕立が改二になってた。
…………つまり。
「『木曾』には改二が実装されてたってことか…………。」
完全に額に青筋を立ててる実感があった。
「提督に一発ぶちかましてくるか…………。」
つまりだ、横須賀の木曾が改二になってたってことは、オレなんか余裕でできる筈だ。
その辺の理由も聞かなきゃならんよなぁ…………。
「まぁまぁ。もうすぐ演習終わるし、『横須賀の木曾』に話を聞いてみたら?」
…………ほう。それもアリだな。
―数分後―
「いやー、流石呉は強いなー。」
「でもさ!前よりは戦えるようになってるから、前進してるよ!」
「おう!今回はなかなか苦しめられたぜ!」
ん、どうやら終わったらしい。
「お疲れ様ー!艤装外すから後ろ向いてねー!」
明石さんは皆にそう言いながら工具箱を取り出していた。
「よ、お疲れさん。」
オレはその後ろから皆に声を掛けた。
会話が止んだ。
「…………もしかして、『魔神木曾』?」
「あの『魔神木曾』…………?」
「『魔神』だ…………!」
「『魔神木曾』だ!!」
…………おぉう?意外な反応。
「そりゃあ、あの『魔神木曾』を目の前にしたらこの反応は当たり前でしょ…………。」
…………明石さんが何やら言ったけどスルーさせてもらおう。
「あのっ!」
すると、一人の艦娘が声を上げた。
そいつは、右目に眼帯をしてマントを羽織り、球磨型の制服を着た軽巡洋艦…………木曾が、なにやらモジモジしながら話し掛けてきた。
「あの…………もしお時間があれば、お話しさせてもらっても宜しいでしょうか?」
横須賀の木曾は、物凄くいい娘だった。
後書き
読んでくれてありがとうございます。さて、予想より話が長引いており、番外編はもう少しだけ続きます。てへ。
それでは、また次回。
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