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楽園の御業を使う者

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CAST24

 
前書き
最初から好きならNTRじゃないよね? 

 
千葉道場

「修兄、さっさと摩利さんに告れよ」

「は?」

「だからぁ、さっさと付き合っちゃいなYO!」

「何を言ってるんだ?」

「誤魔化すなよ。最近二人っきりで居る事が多いだろうが」

「…………そうか…そう見えるか…」

「何か言ったか?」

「いや、白夜、その話はまた今度だ」

「覚悟決めとけよ~」

そう言って、修練を終えた弟は何処かへ消えてしまった。

「なるほど…摩利と俺はそう見えるのか…
摩利の恋が実るのはまだまだ先だな…」

そうして、いつぞやの摩利との会話を思い出す。









数日前、摩利に相談があると言われて、カフェへ向かった。

「シュウ…私は変態なのだろうか」

「いきなりどうしたんだい?」

「うむ…なんというか…白夜君の事を考えると、こう、胸がキューっとなるんだ」

「う、うん?」

それは、悔しさなのではないだろうか?

「この前真由美に聞いたら恋なのではと言われてな…」

「悔しい…とかではなく?」

「うむ…初めはそうだったのだが…。
なんというか、エリカちゃんへの悔しいという気持ちとは違うし、その…悪い感情ではないのだ」

ふぅ…

「強さへの憧れ…とも違うのかい?」

「う、うむ…。
その…私は少年趣味の変態なのではないかと思ってな…」

はぁ…まったく…我が弟は…

「そうだな…まぁ、いいんじゃないか?
誰を好きになろうと、個人の自由だろう」

「私を責めないのか?」

「どうして責めるんだ?
まぁ、だけど一つ言うなら…」


白夜を狙う女は多いよ?

side out












「よっすエリカ」

「あら、来てたのね」

「うん。あと修兄にハッパかけてきた」

「はぁ?」

「さっさと摩利さんに告れってね」

するとエリカが頭を押さえた。

「ん?どうしたエリカ」

「何でもないわよ…」



「俺はもう帰るけど」

「そう、じゃぁさっさと帰りなさい。
あと」

なんだろうか?

「アンタは女心を学びなさい」




離れの庭で母さんと話していた水波を連れて、道場を後にする。

「なぁ、水波。エリカに女心を学べって言われたんだけど、女心ってわかるものなの?」

「殿方には難しいでしょうね…」

「そうなのか?」

「はい、私は白夜様の事を完全に理解しておりませんし、出来るとも思っておりません。
それと同じではないでしょうか?」

「ふーん…そうなのか…」

「というのは建前ですね」

「は?」

「白夜様がこれ以上女心を理解したら、天然ジゴロどころかどうしようもないジゴロになってしまいます」

「まて!俺が天然ジゴロだと!?
俺がいったい何をしたと言うんだ!」

「御自分の胸に聞いてみては?」

……………………

「覚えがないんだが」

「だから貴方は天然ジゴロなんですよ」

くそう…

「白夜君?」

ん?

振り返った先には、修兄の想い人である…

「摩利さん?」

「いま帰りか?」

「ええ、今から帰りますが」

「そ、そうか…」

「何か御用でも?」

「あー…その…なんだ…お茶でもどうだ?」

なるほど…修兄に関する恋愛相談か…

「はい、喜んで」

ふふ…修兄の青春がようやく始まるって訳か…






道場の近くのカフェに三人で入る。

途中水波にどつかれたが訳がわからない。

「それで、摩利さん」

「な、なんだ!?」

「こんな所に俺を連れ込んでどうする気なんですかねぇ?」

「にゃ!?にゃにを言って!?」

おー、やっぱ面白いなこの人。

七草真由美の気持ちがちょっとわかるわ…

「冗談ですよ冗談。話って修兄の事でしょう?」

「へ?」

「白夜様!少し摩利様を御借りします!」

摩利さんが呆けた顔をしたかと思えば、水波が急に立ち上がった。

「ちょ、ちょ、水波君?」

そのまま摩利さんを連れて御手洗いの方へ行った。

「んー…直球はダメだったのかなぁ?」

side out




「な、なんだね水波ちゃん」

「摩利様、一つ言っておきます。
白夜様は貴方と修次様が両思いだと勘違いしております」

「なに?」

「貴方が修次様に相談している所を見られていたのでしょう」

「う…」

「ですが、これは逆にチャンスでもあります。
修次様に関する相談を装って堂々と白夜様と話す事ができます」

「そ、そうかその手があったか…」






side in

少しして摩利さんと水波が戻って来た。

「白夜様、デリカシーを持ってください」

「あー…ごめんね、摩利さん」

「い、いや、構わないぞ。私から誘ったんだから、あまり気にしないでくれ」

二人が座り、ウェイターが注文を取りに来た。

「えっと、俺はビッグパフェで。
二人はどうする?」

「私は抹茶ラテとワッフルを」

「私はストロベリーパフェを頼む」

畏まりましたー、と言ってウェイターが厨房に消えていった。

「今時めずらしいな…店員が注文を取りにくるなんて…
摩利さんの行き付けですか?」

「そんな所だ。昔はこれが普通だったらしい。
今は飲食店用オートメーションが主流だがな」

この100年後の世界は、こういった所が機械化され、人の温もりが乏しく思う時がある。

大規模寒冷化とそれによって起こった第三次世界大戦と減少した人口。

その影響と言ってもいい。

そして、厨房に行った店員がとんぼ返りで注文の品を持ってきた。

接客だけを人がしているのだろう。

まぁ、それでも全自動よりマシだ。

「所で摩利さん。摩利さんって修兄の何処に惚れたんです?」

「え?あ、えっと…えっと…」

摩利さんは困ったようにいい淀む。

「白夜様、人を好きになるのに理由は不要です。
白夜様には女心なんてわかりそうもありませんね」

「わかったら苦労しねーよ」

それがわかるなら、あの時、夏の別れ際の…

あぁ…今は考えまい。

「あ、じゃぁとりあえず修兄の好きな物とか教えときますね」

「それは助かる」

「修兄ってアクティブに見えて結構インドア派です。
たぶん運動は剣術で十分、むしろそれ以外は剣術に影響が出るって思うような人です」

「実直なんだな」

「はい。格好いいよなぁ…修兄…」

背も高い、顔もイケメン。

それに加えて…

「こんな綺麗な人に好かれてるなんて…
修兄爆発しねぇかなぁ…」

「き、き、きれ、綺麗!?」

見れば摩利さんが真っ赤になってた。

「貴女ねぇ…俺に綺麗って言われて照れてたら修兄に告られたときに気絶するよ?」

「は、はは!そ、そ、そうだな、こ、こんな所で照れている場合ではにゃいな」

噛んだ。噛んだぞこの人。

どんだけ照れ屋なんだよ。

「先はながいな…」

「貴方が言いますか」

「なんか言ったか水波?」

「いえいえ空耳では?」

慇懃無礼ですらなく無礼だなおい。

「と、所で君はどうなんだ?」

「俺?」

「うん。君だ。君はどんな事が趣味なんだ?」

趣味ねぇ…そうさなぁ…

「寝ること。あとはCADとプラモデルを弄る事」

「へ、へぇ…CAD弄れるのか?」

「弄れるっていうか…門下生のCAD弄ってるの俺ですよ。
今度摩利さんのも調整しましょうか?」

「ふぇ!?」

あれぇ…?

「あー…俺が弄るのって嫌ですか?」

「あ、あぁ、いやではないよ。
ただおどろいてね…」

「そうですか。言ってくれればいつでもやりますから」

「こ、こんど頼むよ」

「わかりました」

あぁ、話がそれてしまった。

「他には…修兄は以外とファストフードとか好きですね。
高カロリーですから」

「そうか…こんど誘ってみる事にしよう」

お、デートの計画があるのか…?

「白夜君の好みはどうなんだ?」

「俺の好みですか?どうして俺の好みを?」

「あ、いや、えっとな…そ、そう、未来の弟の好みもしっておきたいだろう?」

「いや、だろう?っていわれても…
まぁ、俺は基本的に甘い物がすきです」

「なるほど」

摩利さんが俺が注文したパフェをチラッと見る。

「ふむ…学校はどうなんだ?」

「ノープロブレムとはいきませんが、ある程度は楽しくやってます」

「白夜様は私がマネージャーとなってから、すでに37回の襲撃を受けております。
そのうち13回は登下校時でした」

「なに?」

「まー、全部はね除けましたけどね。
俺を殺したくば、せめてハイパワーライフル装備の大隊は必要ですかね。
仮に師団規模でも余裕で潰せますが…」

「白夜様」

おっと、口が滑ったな…

「ふふ、そうか。なら安心だな」

と摩利さんが笑う。

あー、冗談だと取られたっぽいな。

好都合だけど。










いろいろと話して、お開きとなった。

会計は俺が払い、店を出る。

「今日は楽しかった。ありがとう。白夜君」

「いえ、俺も貴女のように綺麗な人とご一緒できてよかったです」

ごすっ! と水波にどつかれた。

「摩利様、私の主が失礼しました」

「おうこら水波。何しやがる」

「いえ、何も」

こういう時は何言っても無駄か…

「では、私はこれで。また会おう白夜君」

また会おう…か。

『また会いましょうね。私の王子様』

「摩利さん」

「ん?」

「別れ際の唇へのキスってどんな意味があるんですか?」

「は?」

「白夜様?」

「別れ際の女性からの唇へのキスって」

「いや、聞こえてる。
え?された事があるのか?」

「はい。去年の夏に。その人とも何回か会ってるんですけど、どう接したらいいかよくわからなくて…」

「なん…だと…」

摩利さんが驚いたような顔をしていた。

「摩利様。ここで失礼させて頂きます」

「あ、あぁ…うん。わかったよ水波ちゃん…」

え?どゆこと?

「さぁ帰りますよこのクズ野郎」

「え?なんで俺罵倒されてんの?
恋愛相談されたんだからこっちもさせてよ」

「いいから帰りますよ!」



帰ってから、二日くらい水波が口を聞いてくれなかった。

その間、深雪さんとかエリカからは俺が悪者扱いだった。

達也は深雪さんの睨みで黙ったしまい、味方がいなかった。

どうしようもないのでハゲ忍者に相談したら爆笑される始末。

「解せぬ」
 
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