真田十勇士
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巻ノ百二十八 真田丸の戦その十一
「軍勢は皆逃れた、これでじゃ」
「はい、ここでの戦は終わり」
「左様ですな」
「我等も退くぞ」
殿軍である彼等もというのだ。
「よいな」
「はい、それでは」
「これよりです」
「我等も退きます」
「そうします」
「そうせよ、では後藤殿に木村殿も十勇士の貴殿等も」
戦っている相手全員に言うのだった。
「これまでとさせてもらう」
「そうはいかぬと言えばどうする」
後藤は槍を構えたまま服部を見据え彼に問うた。90
「その時は」
「それがしがお相手致し」
服部は後藤を見据え返して答えた。
「十二神将達は全て」
「逃がすか」
「そうさせて頂く」
「その意気見事、ではじゃ」
服部の家臣を守る意気を認めそして自分達も実は相手を追うだけの余力がないと判断してだ、後藤はこう返した。
「去られよ」
「そう言われるか」
「我等も一騎打ちで疲れた」
これが余力のなさだった。
「ではな」
「左様でござるか、では」
「この度はな」
「これで去らせて頂く」
「また戦の場で会おうぞ」
最後にこう言ってだ、後藤は服部と十二神将達を去らせた。その時にはもう幕府方の軍勢も皆退いていた。
後藤と木村、そして十勇士達もだ。これでだった。戦が終わったと見て大坂城ここでは真田丸に戻った。そうしてだった。
幸村にことの次第を話した、すると幸村は笑みを浮かべてこう言った。
「敵を散々に退けそのうえで誰も死ぬことはなかった」
「だからですな」
「これ以上のことはない」
「そう言われるのですな」
「うむ、満足すべきじゃ」
こう十勇士達に述べた。
「実にな、しかしな」
「これでじゃな」
後藤が幸村に応えた。
「戦の流れはこちらに傾いたが」
「はい、されどもです」
「それを茶々様が効かれるか」
「これで流れは変わりますが」
「茶々様がそう思われるか」
「実はこうして散々に打ち破ればです」
あえて真田丸に攻め寄せた敵達とだ。
「これで流れが変わり」
「そこからじゃな」
「勢いのまま茶々様に申し上げてです」
そうしてというのだ。
「そこから一気にと考えていましたが」
「どうもな」
「そうもいかぬやも知れませぬ」
それで茶々が頷かないというのだ。
「そう思えてきました」
「これだけの勝ちでもですか」
木村は幸村の言葉に怪訝な顔になり返した。
「茶々様は」
「うむ、そう思えてきた」
「これだけ勝てばと思うのですが」
「あの方は随分と強情な方じゃな」
「はい、それは」
木村が今いる者達の中で一番よく知っていることだった、伊達に幼い頃より秀頼つまり茶々の側にいる訳ではない。
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