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真田十勇士

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巻ノ百二十八 真田丸の戦その十二

「そこがどうもです」
「困ったところじゃな」
「そしてですか」
「この度もな」
「その強情さで、ですか」
「そう思えてきた」
「しかしです」
 木村はその整った顔を怪訝なものにさせて幸村に言った。
「ここで、ですな」
「うむ、外に出て戦わねばな」
「戦はこのままですな」
「囲まれたままでじゃ」
 幸村は木村に暗い顔で話した。
「やがて大砲を持って来られてな」
「茶々様は雷がお嫌いでして」
「大砲の雷の様な音で日々昼も夜も攻められるのじゃ」
「そうなってしまえば」
「幾らこの大坂城が誰にも攻め落とせぬものでもな」
 それでもというのだ。
「木村殿もおわかりであろう」
「我等が敗れますな」
「戦うのは城や軍勢を攻めるだけではない」
「人もまたそうであり」
「その心もじゃ」
「攻めるもので」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「そうなる」
「では」
「そうですか、では大砲はですな」
「使わせてはなら、だからな」
「大砲が来る前に」
「何とかうって出たい、そいしたいが」
 幸村は木村に暗い、それでいて真剣な顔のままで話した。
「これで茶々様が説得出来るか」
「それが問題ですな」
「しかもじゃ」
「気になるのは有楽殿じゃ」
 ここで後藤が木村に話した。
「あの方じゃ」
「有楽殿はどうも」
「我等も気付いております」
「あの方はです」
「どうやら」
 十勇士達がここで後藤に話した。
「我等は草木や石の声も聞こえます」
「城のそうした声を聞きますると」
「あの方はどうも」
「城の外の幕府と」
「そうじゃな、あの方は実はじゃ」
 後藤はさらに話した。
「幕府とじゃ」
「つながっていますな」
「そして幕府にこちらの情報を流し」
「そして茶々様にもですな」
「幕府の都合のいいことをですな」
「有楽殿のお考えとしてじゃ」
 そう装ってというのだ。
「お話されておる」
「ですな、それではです」
「有楽殿はですな」
「何とかせねばならぬ」
「大坂にとって獅子身中の虫ですな」
「噂は本当でござったか」
 木村はここまで聞いてだ、怒りを隠せぬ顔と声で述べた。
「あの方が幕府と通じていたとは」
「はい、間違いありませぬ」
「実際にです」
「先程申し上げた通り城の中の草木や石の声を聞きますると」
「そう言っておりまする」
「有楽殿のことは」
「お主達は真田殿の家臣、しかも義兄弟じゃ」
 幸村がそこまで認めたというのだ。 
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